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【コミカライズ決定】冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています  作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!


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『相談には、行ったんだよね?』  

『いや。お前の指輪が見えて、結婚の噂が本当だったんだって思って、咄嗟に逃げたあと戻れなくなって予約時間が過ぎて、キャンセルの連絡を入れた……』  

『もう一度予約して、相談しよう……自殺は絶対にだめだよ』  

 

 メッセージしだいで本当に人ひとりの命が失われるかもしれないと思うと、変な汗が出てしまう。返答を待つと、やがてメッセージは届いた。

 

『謝罪させてくれて、話を聞いてくれてありがとう。もう一度予約するよ。……結婚おめでとう』


 最終的に、彼は落ち着いて現実に向かい合うようだった。


『お祝いありがとう』 

『今までありがとう果絵(かえ)。さよなら。謝罪もできたし、今度こそ、もう連絡しないよ』

『あの、死んだりはしないでね……?』 

『うん』

 

 メッセージのやり取りが終わり、そっと独り言を吐く。


「……颯斗さんには本命の相手がいて、ビジネスライクな結婚なんだけどね」

 

 呟くと、背後から颯斗さんの声がした。


「やり取りは終わったのか」

「――颯斗さん」

  

 いつの間にか、颯斗さんが帰宅していた。内容が深刻すぎて、集中していて気づかなかった。


「果絵。今の相手は噂の元カレか?」

「いつから見てたんですか?」

「お祝いありがとう、のあたりから。言い寄られているのかと警戒したが、違うようでよかった。俺は今とても安堵してる」

 

 端正な顔は、安堵の表情を浮かべていた。

 まるで、心の底から愛されている妻みたい――そう思ったら、つらくなった。

 

「颯斗さん。言おうと思ってたんですけど、誤解しちゃうんです。そういうの」

 

 一緒にいると、胸が高鳴る。格好いいと思う。

 大切にしてくれる彼の隣は、居心地がいい。

 彼の妻でいられるのが誇らしくて、幸せに思う。

 

 ……だからこそ、その関係が偽物だと思うと、胸が痛む。


 ──私が、颯斗さんのことを好きだから。

 ……好きになってしまったから、やるせない。


「果絵。すまない……ちょっといいか?」


 私が唇を固く結んでいると、颯斗さんの真摯な瞳が私を覗き込んで、真剣に言う。


「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない……それが、契約書にも明記してある。俺は、君を愛している。君の側はビジネスでいいが、俺はビジネスではなく本気だ。……俺の本命は、君だ。俺たちの結婚は、俺の片想い婚なんだ」


 ――片想い婚?

 

「片想いの相手は……」

「果絵だよ」

「ええ?」

  

 自分にとって都合のいい、夢でも見ているのだろうか。

 呆然としていると、颯斗さんが私の左手に指を絡め、軽く持ち上げて指先にキスをする。


「……勘違いじゃなくて、ですか?」

「ああ、そうだ。見せたいものがあるんだ。来てくれ」

 

 颯斗さんは私の手を引き、自分の部屋に連れていく。

 なんだろう、と思いながら付いていくと、いくつもの折り鶴を見せてくれた。


 桃色、水色、黄色。

 明るい色彩の折り紙で折られた鶴は、懐かしい感じがした。

 

「――これ……」

  

 折り鶴の表面には、文字で「リハビリがんばれ!」とか「いつもがんばっててえらい!」とか書いてある。

 ……私の文字だ。


「私、これ……知ってる……」


 見た瞬間に、私は目を見開いた。


 それは、私の中にあった記憶を刺激して、蘇らせたのだ。


「『キャンディのお兄ちゃん』……?」






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