96──一計生じて
「て、訳なのよ」
「それ弄ばれてるではないか!」
昼飯時。
シュユに化かされた後、俺とキエラは一旦アジトへ戻る事にした。
アジトへ帰った頃には昼になっており、やっと起きてきたカミラと、昼飯のスパゲッティを用意してくれたペールも交えて先程ハッピータウンで起こった事を話したのだった。
「まったく、あの女狐めっ!」
プンプン怒ったようにスパゲッティをねじ込んで食うカミラ。
「クソっ! 我ですらこうして仲間になってやっているというのに、あいつと来たらふざけた態度取って! だから嫌いなんだっ!」
「しかし困ったっスねえ」
ペールも考えるように頷いた。
「それ、結局イエスなのかノーなのかよく分かんなくないっスか?」
「あたしが傍から聞いてた感じだと、仲間になっても良さそうな雰囲気ではあったんだけど······」
「そこなんだよな」
キエラが言わんとする事はよく分かる。去り際、一瞬だけシュユが寂しげな表情を確かに見せたのだ。
あの表情は何を語っていたのだろう。
「······あの、イルス。ちょっといいっスか?」
「ん? なんだ?」
「これはウチの勘というか、ウチ自身の体験からの話になっちゃうんスけど、シュユはたぶん仲間になりたいと思ってるっス」
「ほう?」
興味深い発言だ。
「どうしてそう言える?」
そう聞いてみると、ペールはモジモジした感じで話し始めた。
「あの、ウチも誘われた時は正直戸惑ったんス。こんなウチでも誰かが必要としてくれるという喜びと、でも本当にウチという人間が求められているのかなっていう不安があったんス。言われるままについてっても、用が済んだり、やっぱし要らないってなったらどうしようって。そういう不安があったんス」
「······」
初めて聞くペールの本音。
「だから、シュユもそんな感じなんじゃないかなって。イルスの提案に乗りたいけど、本当に自分は必要とされているのかっていう不安があるんじゃないかなって。上手くは言えないんスけど、ウチらって似た者同士なんスよ。リゲル達みたいに誰とでも仲良くなれる訳じゃない。だから······一人で居る」
「······なるほど」
そうか。そんな不安もあったのか。
思い返してみれば、確かにペールもカミラもふと見せた表情の中に寂しさがあった。そしてシュユにも。
彼女達に共通するものは何か? それは、孤独だという事に改めて気がついた。
ボスキャラだから。なんて言えばそれまでだが、四天王の面々は孤高だ。それぞれ性格などの要因で周囲に馴染めず、一人で生きてる。
「カミラ、お前もやっぱり寂しかったのか?」
「ぶふぅっ?!」
「ビョビャーッ?!」
飲んでいたブドウジュースを近くのダストに吐きかけるカミラ。
「な、なな、何を言うかっ?! 我は誇り高き夜の王だぞっ!? 寂しくなんかあるものか!」
「分かった、分かった、そう興奮するな」
ムキになるところを見ると、ペールの言っている事はカミラにも当てはまるのだろう。こいつの場合は割かし来たがってる気持ちは隠せずにいたが、二の返事で応じなかったのもそんな不安があったからなのかもしれない。
となれば、シュユももしかしたら······
「しかし、気に食わん!」
カミラがプイッとそっぽを向く。
「オールスター計画だと? 我一人居れば十分だと言うのに、ペールやローナ、しかもシュユまで仲間にしようなどとはな。なんで早く言わなかったんだ」
「いや、言うタイミング無かったつうか、まあ言おうが言うまいが変わらんだろう?」
「変わる! 今から序列を考えなければならないからなっ! 我が一番上っ、そんで次はペールにしといてやろう、そしてローナ、一番下はシュユだ!」
なんか勝手に決めて盛り上がるカミラ。
「我が最強で一番なら後はどうだっていいが、ペール、貴様はなかなか従順だ。二番手にしておいてやろう」
「こ、光栄っス」
「おいおい、勝手に決めんなよ。ま、序列なんてどうでもいいけどよ」
「良くない! シュユの下だけはやだっ! くそ~っ、我も化けたり出来たらあいつを負かして言いなりにしてやるのに~っ!」
「うん?」
なんか変な話が出たぞ?
「なんだって? 化かしたら言いなりに出来るとか言ったのか?」
「ん? なんだ、知らないのか?」
ウィンナーをフォークに刺しながら不機嫌そうにカミラが言う。
「あいつは化け狐だからな。化かし勝負には自信と誇りがあるのよ。だから、もし化かし合いで負けたら何でも言うこと聞いてやるって、昔酔っ払った時に豪語してたぞ」
「そうなのかっ······」
それはゲームをやっていた時ですら出てこなかった情報だ。実際、化けてるシュユをあぶり出すイベントはあったが、化かし合い勝負の事などは初耳だ。
「なるほど。化かし合いか。だが、それに勝てばシュユも否応なく俺らの仲間に······!」
「イルス、もしかして······」
「ああ。キエラ、もう一度行くぞ。カミラ、サンキューな」
「なに? サンキュー?」
キョトンとしてルビーを瞬かせる。
「貴様、もしかして化かし勝負に挑むのか?」
「ああ。勝てばシュユも仲間に加わるぞ」
「我はあんな奴居なくてもいいっ! でも、どうやって勝つのだ?」
「············少し考える。そうだ、ペール。話は変わるが、カミラの荷物を取りに一緒に行ってやってくれないか? 今の内に俺の影を取り込んでおけ」
「了解っス」
こうして、昼飯後はカミラとペールはUFOに乗って荷物を取りに行き、俺はキエラと再びハッピータウンへ赴く事にした。
庭先でペール達を見送った後、キエラが心配そうに尋ねてきた。
「イルス、何か策はあるの?」
「ああ。成り行き次第だが、上手く勝負に引き込みさえすれば多分、な。お前も頼むぞ」
「ライー」
とりあえず、飛行能力のある早馬ダストを一体連れて来ておいた。シュユに酔い潰された奴だ。こいつを連れていって、後の作戦に活躍してもらおう。
他にも必要な物は揃えておいた。
後は天が味方してくれるのを願うだけだ。
「よしキエラ。時間との勝負でもある。すぐに出発するぞ」
「オッケー! あんたも頑張んなよ?」
「ライーッ! オレ、メイヨ、バンカイ!」
用意は整った。いくぞ。
題して、『とらぬ狐の皮算用作戦』だ。
お疲れ様です。次話に続きます。




