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94──お稲荷さま

 


 ハッピータウンは俺らのアジトから見てもユートピアタウンと変わらないくらい近い。



「ハッピータウンは気候は秋に近かったよな。それに、東洋というか和風をモチーフにした町だったはずだ」

「とーよー? わふう? 何それ?」



 ハッピータウンは確か最初に滅亡した町だったな。あの時は知る由もなかったが。



「お、早くも見えてきたな。おお、紅葉だ」


 町に近づくほど、森の色が紅や黄に染め上げられていき、真っ青な空の下に雅な秋の世を広げた。


「ここ良い所だなー。ゲームん時はそんなに背景とかも出てこなかったけど、こうやって生で見ると観光名所みたいだ」

「なんの話?」



 ゆっくり観光でもしたいくらいだが、いつ魔の手がシュユに伸びるかも分からん。

 早めに探さなくては。



「えっと。マップのマークからすると······あの小山の麓辺りか」


 遠くにハッピータウンのシンボルの五重の塔を眺めながら、マークの元へ飛ぶ。


 麓は閑散とした農家の集落みたいになっており、山へ続く廃れた山道が見受けられた。



「この辺りだな。よし、降りるぞ」

「りょっ」


 山道入り口近くにキエラと共に降りて、UFOを藪の中に隠しておく。


 落ち葉踏み分け、くすむ階段踏みしめて、静かでわびしい山中を登ってく。



「おお、ここ落ち着くな。やっぱ俺も日本人なのかね。こういう所に赴きを感じていとおかし」

「??? あんた何言ってんの?」

「気にするな。ここで一句。紅葉山(もみじやま)~、ギャルと並んでゆく道の~、女狐探す秋ぞ深まり~」

「きゃははははっ! 何それ~? なんかよく分かんないけど変なの~っ!」



 と、まあ。大変楽しい道中ではあった。


 最初だけは。



「ぜぇ、ぜぇ、ぜえ、ぜえっ、ぜえ······」

「イルス大丈夫?」

「こ、この登山道キツくないか?」

「そりゃ、あんなに跳ね回って大声出してればね」


 調子に乗って歌いまくって踊りながら登ってたら早くもガス欠になった。うん、俺バカだな。


「だけど、ほら見て。マップによるとこの辺りじゃない?」

「ふぅ、ふぅっ、ほ、ほんとだ」


 だが、そんなに登らない場所に目的地もあったんで、なんとかなったようだ。


 山道に突如現れた石階段を登っていくと、色のくすんで苔の生えた鳥居が現れた。


「ここか。いかにも妖怪が出そうな雰囲気だな」

「行こっ」

「おう」



 雰囲気ある石段を上り、鳥居を潜ると狭い境内が現れ、そこに小さな神社が鎮座していた。ずいぶんと古びて、ほったらかしなのか廃れている。


「神社か?」

「あっ、イルス見て」


 キエラがしゃがんで何か拾った。


「ほら、これ」

「これは酒ビン?」


 なるほど。どうやらここが宴会していた場所で間違いなさそうだ。


「あいつはダスト達の遠征食糧を全部がめたからな。遠くには行ってないはずだ」

「そうねぇ。おーいっ、シュユ~。出てきておいで~! シュユ~、イルスとキエラが来たわよ~!」


 キエラの声は、しんっとした雑木林の中に虚しく響いていったが、返事は無い。


「居ないみたい」

「うーん。どこかに移動したか?」


 あの気まぐれの事だ。十分考えられる。

 だが、ダスト達と呑みまくってたという話だし、あいつも今頃二日酔いで苦しんでるんじゃないか?


「とりあえず探してみよう。どこかに居るかもしれん。キエラ、俺はあっちの本殿を探してみる。お前はあっちの物置小屋らしき所見てくれ」

「オッケー」


 二手に別れて辺りを捜索する事にした。


 境内には本殿と、物置小屋、それに小さな祠があるだけで、隠れられそうな場所は限られている。


 落ち葉が溢れかえっている賽銭箱の裏に回り、本殿の戸に指をかける。


「さて、神様本体のおわす家か。失礼つかまつりまーす」


 閉ざされた扉を開ける。意外にもすんなり開いた。



 中は意外にもちゃんとしていて、畳もフカフカになっておらず、定期的に風や日が取り入れられているのを窺わせた。


「ふむ。誰か住んでるな?」


 畳だからか、自然と靴を脱いで上がっていた。室内は六畳かそこらの広さで薄暗く、特にこれと言った物はない。せいぜい、座布団や布団が隅に畳まれて置いてあるくらい。


「居ないな······」


『イルスーーっ』


「ん?」


 キエラの呼ぶ声がしたので部屋を後にして、彼女の方へと行ってみた。


「どうした、居たか?」

「ううん。でも見て。これ」

「あっ!」


 キエラが調べていた物置小屋らしき中に、大量の缶詰め等の食糧が隠されるように置いてあった。


「これは偵察部隊に渡しておいた食糧だな」

「ていう事は······」


 俺とキエラはもう一度境内を見回した。しっとりした山の空気と、赤づく枯れ葉があるだけだ。


「······いや、確かに居る。ここのどこかに」

「あっちの一番大きな建物には居たの?」

「居なかった。だが、生活の跡はあった。キエラ、今度はお前が本殿を調べてくれ。俺は辺りを見る」

「うん」


 再び手分けしてシュユを探す。


 俺は鳥居から入ってすぐ右にある祠を見てみた。俺の頭よりも少し高いだけの屋根の祠。誰かが隠れられるようには見えない。


「まったく。どこ居るんだあの化けギツネは」


 祠には大きめのお稲荷様が奉られていた。供え物の湯飲みには水のようなのが満ちてる。


「一応、裏側も見ておくか」


 かくれんぼじゃあるまいし、後ろに居るとは思えないが念のため。


 ──コロン──


「ん?」


 祠の裏に回ろうとしたら、何か音がした。


 音のした方を見てみると、供えられていた湯飲みが倒れていた。


「おっとと」


 俺も日本人なのかな。なんとなく具合が悪くなり、ついつい直してやった。


「よし」


 せっかくだし神頼みでもするか。

 手を合わせる。


「シュユが見つかりますよーに」


『ホッホッホッホッ。感心、感心』


「え?」


 あれ? 今声が······。


『その願い叶えてやるぞ』


 ──ボワアンッ──


「うおおっ?!」


 その声が辺りに響いた次の瞬間。

 稲荷様が白い煙になったかと思うと、そこから飛び出すように──


「ホッホッホッホッ!! 良い反応をするではないか。のう、イルス」


 探し人、いや、探し狐のシュユが現れた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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