93──ハッピータウンへ
「シュユの偵察部隊が? 早馬じゃなくて本隊が戻ったのか?」
ひょーひょー騒ぐダスト達を踏み分けるようにして食堂から出る。
廊下に、ぐったりしてへばっているダスト達が居た。回りで野次馬ダスト達がざわついてる。
──まさか──
嫌な予感がした。以前戦ったシュユはダスト達を直接その手にかけている。
まさか、もう既にシュユは手遅れで、俺からの使者を血祭りに──
「おいっ、お前ら大丈夫かっ──」
「グオ~ッ······ガピ~······」
「グゴゴォ······ゴオォ······」
「ビュ~······ヒュ~······」
「············」
でけえイビキをかいて寝ていた。
「······ん? こいつら、酒くせぇ······」
イビキの音と共にせりあがって来る酒の臭い。あれだ。酔いつぶれたオヤジの香りだ。
「こいつら何やってんだ······」
「ワキワキ~」
「ん?」
一体のアヒルもどきが紙切れをペラペラと俺に差し出してきた。
「これは、俺が渡したマップ?」
「テイサツ、カラダ、ツイテタ」
偵察隊に渡してあるマップだ。印等はついてない。返事用の裏側を見てみる。
『酒代としてツマミは貰っといたぞ。ごちそうさん。また送ってくるのを待っとるでのう。なんなら一緒に飲むかえ? もちろん、酒もツマミもお前さん持ちでな』
「············って! これ返事書いてねえっ!」
仕方ない。
足下で酔いつぶれてるダスト達から詳しく話を聞くしかないな。
「はぁ。おい、野次馬達。悪いんだが、この酔っぱらいどもを食堂まで運んでくれ。水でもぶっかけて酔いを醒ませる」
『ヒョヒャー』
ボッコンボッコン運ばれてくダスト達と共に食堂へと戻った。
待っていたキエラとペールが目を丸くする。
「どうしたの? そいつら」
「ど、どこか具合悪いんスか?」
「よくは分からんが、まあ二日酔いだな」
「は、はあ? 二日酔い~?」
ダスト達に、コップに水を汲ませて持ってこさせる。
「たくっ。ほら、起きろ!」
──ビチャッ──
「ヒョエッ?!」
「ヒャピィ!」
「ヒュエ~ッ!」
ぐーすかぴーな酔っ払いどもの面に水をぶっかけていくと、どいつもビックリしたように飛び上がった。
「ほら、起きろ!」
まだ寝てる奴らにも水を叩きつけて、順番に目を醒ませていく。
『ヒュグェ~······』
「まだアルコールが抜けてないな。キエラ、ペール。ちょっと手伝ってくれ」
「しゃーないわねえ」
「了解っス」
まだ寝ぼけた様子の部隊に水を飲ませていく。
ややして、水を無理やりガブ飲みさせたかいもあり、二日酔いダスト達はなんとかまともに話せる状態には戻った。
「よーし。これで話せるようになったな。さ、偵察隊よ、何があったのか話してくれ」
「ンブバァ······」
偵察ダスト達はカタコトで少しずつ事の成り行きを話し始めた。
拙い言葉の連続なのでなかなか理解するのに苦労したが、大体の経緯が分かった。
「オレラ、シュユ、ハヤクミツケタ」
聞くところによると、意外にもシュユはかなり早くに見つけられたらしく、なんと出発した翌日には発見したらしい。
ならば、何故早く連絡しなかったのか。
「シュユ、ハナシ、キカナイ」
勧誘だという話をてんで真に受けず、俺からの手紙を見てもクツクツと笑うだけで何を考えているか分からなかったと言う。
「オレラ、ネバッタ。ヘンジ、モトメタ」
ともかく、イエスかノーかの返事だけでも欲しかった偵察部隊は諦めずに何日かシュユの元へ通い、返信だけでもしてくれと頼んだのだが──
「ハナシ、ソラス。サケ、モラッタ」
話をはぐらかせて良いようにあしらった挙げ句、『それより呑まないか?』という具合に煙に巻かれてしまったらしい。
「シュユ、ヨッタ。オレラ、ヨッタ」
すっかり皆して酔っ払い、どんちゃん騒ぎして酔いつぶれた辺りで、気がついたらここに戻っていたそう。
「まさに狐に摘ままれるような話、か」
俺は、トロッコにくっついてたと言うお札を裏返したりして眺めた。多分、これをくっつけてトロッコを式神化してここまで送り届けてくれたんだろうが、結局肝心な返事が貰えてない。
『ヒュ~······』
申し訳なさそうに項垂れるダスト達。
それをキエラとペールが慰める。
「まあまあ、あんたらもやるだけやったって事っしょ? おつ~」
「アネゴ、ヤサシイ!」
「そうっスよ。頑張ったならドンマイっス。ジュースでも飲むっスか?」
「アッ、ペール! シンイリ! パシリ! ヤキソバパンモッテコイ!」
「恩知らずで笑えるっス!」
「こーら。この子はあたしとおんなじ幹部よ? 口のききかたには気をつけな」
「!! ペールアネキ、オレラ、テシタ!」
うん。二人が慰めているのに俺が難しい顔してちゃいかんよな。
「よし。ともかく、事情は分かった。お前らも接待飲み会ご苦労。報酬の菓子をやろう。持ってくるから待ってろ」
『ヒョヒョヒョーッ!!」
冷蔵庫で冷やしたゼリーを持ってきてやると、脇目も振らずに貪りだした。
すっかり元気になって食い散らかすダストを見守りながら、キエラが話しかけてくる。
「ねえ、どうすんの?」
「う~ん。そうだな······やっぱり直接勧誘に行くしかないな。ペールの時やカミラの時みたく、誠心誠意ていねいに頼めばわかってくれるだろう」
「捏造過ぎて笑えるっス!」
とりあえず、これで午後の予定は決まった。
「キエラ、シュユに会いに行くことにする。すぐに出発したいんだが良いか?」
「オッケー。場所は分かるの?」
「聞いてみるか。おい、偵察隊、このマップにシュユの居場所をマークしろ」
「モケモゲー」
まだ昼までには時間もある。今から行けば昼飯には帰って来れるだろう。
「それじゃあ行くか。ペール、留守を任せる」
「分かったっス。気をつけて」
「ペール、ダスト達とカミラの事お願いね」
「あ、あんまし自信は無いけど、了解っス」
早速庭先に赴き、キエラと共にUFOへ乗り込む。
「ダスト達、俺とキエラ以外がここの留守を預かるが、ちゃんとペールとカミラの指示に従えよ」
『ビョッ!』
よし。それでは
「行くか」
「うん」
キエラが元気よく宣言する。
「ハッピータウンに出発!」
お疲れ様です。次話に続きます。




