79──二人目を迎えに
翌日。
朝日と共に朝靄の爽やかな香りを窓から大きく入れて1日のエネルギーを摂取する。
よし。これで今日も頑張るぞ。
歯を磨きながら今後について考える。
オールスター計画はこのまま進めるとして、他にもやるべき事はあるだろう。
それは戦力の増強。四天王の四人の力だけに頼る訳にもいくまい。他にも何か戦力を確保しておきたいところだ。
来る敵との戦いに備えて······。
「······まだ足りない」
当然、敵とはリゲル達の事じゃない。
シリウスだ。
あの謎の男。
どこから来て、何が目的で、今はどこで何をしているのか。そして何時動き出すのか。全てが不明の不気味な敵だ。
しかし。ただ一つ分かっている事がある。
それは、とてつもなく強大な力を持った相手だという事だ。
あの時。
忌々しい悪夢のような記憶。
あの時、あいつは不意打ちとは言えレン、カーリー、ローナ、メル、キエラ、俺を立て続けにあっさり屠った。
俺らも既に満身創痍だったというのもあるが、それでもあれだけの実力者をいとも容易く葬ってしまったのだ。しかも、全く本気を出している感じはしなかった。
ペール達三人を歪めた力も不気味だ。これに関してはオールスター計画を進めれば問題ないだろうが、奴にはアンノーンの大群もある。
そんな力を持った相手と戦わなければならないのだ。四人の力以外にも色々と用意しておく必要があるだろう。
何時ものように食堂へと入ると、料理を盛ったキエラとちょうど出くわした。
「あ、ちょうど今起こしに行こうかと思ってたのよ。ご飯出来てるわよ」
「サンキュー」
「あ、イルス。おはようっス」
「おはようさん」
キッチンから出てきたペールも席につき、三人で朝食を摂る。
食後。
「え? 戦力の増強?」
「そうだ。何か案はあるか?」
皿の片付けも終わり、いつもの食休みタイムに今朝考えていた事をキエラとペールの二人に話してみた。
もちろん、シリウスの事は伏せて。
「だって戦力増強のためにペール含めた四人を味方にする計画を進めてるんでしょ?」
「もちろんそれが最大の増強ではあるが、他にもやっておくべき事があるんじゃないかと思ってな。俺の考えではダスト達は数も多いしなんとか活かせないかと思ってな」
「いやー、あいつらに戦いなんて無理じゃない? ていうか、あたしだってぶっちゃけ強くないし」
「ふーむ」
まあ確かに。戦闘力で言ったらダストやキエラは裏方だ。前線に出るタイプじゃない。
「あのー」
そこに、ペールが遠慮がちに手を上げた。
「おお、何かアイディアあるか?」
「昨日イルスの能力コピーして思ったんスけど、イルスが何か乗り物作ってそれにダスト達が乗って戦うのはどうっスか?」
「······なるほど。それは確かに良いアイディアではある。だがな·····」
現実的ではない。
動力を必要とするスクラップビークル系は、俺の魔力の届く範囲でないと動かないのだ。
そして、ビークルを動かす魔力自体は搭乗者に依存するが、動力その物を維持するのは俺の魔力を消費しなければならない。
簡単に言えば、車を動かすガソリンは誰でもOKだが、バッテリーだけは俺じゃないといけないのだ。
ちなみに、これは公式ファンブックで読んだイルスの設定から得た知識だ。
「俺への負担がでかすぎるな。悪いアイディアではないんだが······」
「そうっスか。難しいっスね」
そんな風にあれこれ悩んでいた時だ。
──バターンッ──
「ゲゾゲゾーッ!」
「グマンマグァー」
何体かのダスト達が扉を跳ねのけるようにして開き、駆け込んで来た。
足元にボコボコ来るダスト達。
「どうした? お前ら」
「テイサツ、モドッタ!」
「イマ、テイサツカエッタ!」
「ココ、クル!」
「! そうか」
報告を受けてから待たずして、何体ものダスト達にヒョーヒョー囃し立てられながら、一体のダストが現れた。
「リオディオーッ!」
小さなドラゴンのような見た目のそいつは、俺が放った勧誘精鋭部隊の一人だ。
シュユ、カミラ、ローナを探しに行っている部隊には飛行能力を持ったダストが一体づつ組み込まれている。ターゲットを見つけたりした時に、すぐ俺へ報告出来るよう、単独で先に帰還させるためだ。
「おお、ご苦労だったな。お前はどこのチームの奴だ?」
「オレラ、ミツケタ、カミラ、カミラミツケタ!」
「そうか······!」
見てみると、そのダストの足には丸められた紙が紐でくくりつけられている。これも俺の指示だ。ターゲットからの解答と、居場所の地図を持って帰るように指示してあるのだ。
その紙を回収する。
「よし。よくやったな。疲れたろ? これでも食って休め。他の奴らも、こいつの事を労うんだぞ」
『ヒョーヒョー!』
その早馬ダストに俺の菓子をやると、ものすごい勢いで貪り始めた。他のダスト達がドコドコと踊って功績を讃える。
「カミラが見つかったのね」
「やったっスね。早速見てみましょうっス」
「よし」
紙を広げる。それは渡しておいたマップだった。ラッキータウン郊外の古城に丸印が付けられている。
そして裏には──カミラからの返事の文章が書かれていた。
『こんな下っ端を使いに寄越しておいて手を組もうだと? 思い上がるな。我に会いたければ貴様から来るがいい。よいな。我の居場所は分かるな? 分からなかったら町の奴らに聞け。3日以内に来い。それ以上は待たないからな。いいな? 絶対来るのだぞ? 私からは行かないんだからね! お前が来るんだからね!
ねえ、ほんとに来るの? 来るんだったら今日中に来てよ! じゃないと怒るからね! ねえ、ほんとに来るんだよね? 来なかったら血吸うからね! ねえっ、ほんとに来るの?!』
うーん。
なんとも言えない伝言だ。
「あいつ、体裁を保てなくなると文にも表れるタイプだったのか······」
「なんだか来て欲しそうな手紙ね······」
「すごく来て欲しそうっスね······」
まあカミラルートの経験からするとあいつはツンデレというか、なんと言うか。ほんとは誰かに構って欲しいんだけどプライドが高すぎて素直に言えないだけだからな。人恋しくて仕方ない子供って感じのチビ吸血鬼だ。
「だが、この感じからして答えはイエスだろうな。よし。ここは本人の希望通りこっちから迎えに行ってやるか」
放っといても勝手に来そうではあるが、これからの事もある。こっちから礼を尽くそう。
「早速今日中に迎えに行くか。ペール、せっかくだしついてこい」
「了解っス」
「あたしは?」
「キエラは留守を頼む。もしかしたら他の部隊からも連絡が帰ってくるかもしれないからな。俺の代わりにここの責任者になって指揮ってくれ」
「オッケー」
なんだかんだ言ってキエラがここの姉御だからな。ダスト達の面倒と管理を任せられるのは彼女だけだ。
「よし、じゃあ行ってくる」
「行ってくるっス」
「気をつけてね~」
それでは。
いざ、ラッキータウンへ。
お疲れ様です。次話に続きます。




