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76──歓迎会

 


 ペールも乗せて、やや狭くなった三人乗りUFO。


 縛ったままでは辛いだろうから、なるべく早く帰れるようにUFOのスピードはマックスにしてアジトへと向かう。



「んーっ?! んんっ!! んうん!?」

「ごめんねペール。急いでるから我慢して。イルス、このまんまじゃ可哀想よ。狭いし。猿ぐつわだけでも外してあげない?」

「そうだな。キエラ、口だけは自由にしてくれ」


 キエラがペールの口を自由にしてやる。


「ぷはあっー!!? ふはあっ! はあっ、はあっ、はあっ、ち、窒息するかと······!」

「おお、ペール。どうだ? 俺のUFO速いだろ」

「そんな事どうでもいいっス! それよりなんスか!! これ、ただの誘拐じゃないスか!?」

「人聞きの悪い事言うなよ。拒否した奴を無理矢理連れてきただけじゃんか」

「それを誘拐って言うんス!」

「そう怒るなよ。誘拐だろうがなんだろうが、そこまでしてもお前が欲しかったんだ」

「んなっ?! い、言い方が卑猥っス!」


 後ろでモゾモゾと暴れるペール。


「ウチだって一応女なんス! それを無理矢理拐うなんて変態だーっ!」

「なんだ、男はみんな変態なんだぞ? 今さら騒ぐ事でもないだろ。くくく、これから一緒に暮らすんだ。楽しみだぜえ」

「ひっ?! ウ、ウチは清楚な乙女なんス······」

「安心してペール。変な事されそうになったらあたしがイルスを半殺しにするから」

「うぅ、キ、キエラ。ウチはどうなるんスか?」

「大丈夫だって。さっき言った通り本当に仲間にしたいだけよ。乱暴な事はしないって」

「ほ、ほんとスか? でも、もう無理矢理に連れ去られてるような······」

「それは······まあ、ドンマイっしょ。気にしない、気にしない」




 話してる内にペールがいくらか落ち着いてくる。



「それで~あの~。結局イルスはなんでウチを仲間にしたいんスか?」

「俺らが強くなるためだ。イルスファミリーを世界最強にしたいんだよ」

「は、はあ。随分でかく出ましたね」

「んでもってリゲル達を倒す。俺らファミリーが全てを支配して好き放題するんだ」

「け、けっこう過激っスね?」

「まあな。そのためにお前の力が必要なんだ」

「うう。ウチは完全に巻き込まれた訳っスね······」

「いや、そうとも限らんぞ。お前もファミリーの一員になれば、俺らが天下を取ったあかつきにはお前の理想を叶えていいんだぞ」

「え? ほんとっスか?」


 ペールの目の奥が小さく光る。


「つまり、ウチの目標である陽キャ天下に終止符を打つのも可能って訳っスか?」

「おお、もちろんだ。タダで協力させようなんて訳じゃないさ。ちゃんとお前のやりたい事も俺らみんなが手伝う。つまり俺らはそれぞれの目標を達成するためにチームを組むんだ」

「な、なるほど? でも、そんな上手くいくでしょうかね······」




 話してる内にアジトが見えてきた。


 庭先にUFOを着陸させ、出迎えのダスト達に食堂へ集合するように言いつけておく。



「全員集めて待ってろ。俺らもすぐ行く」


『ヒョヒョヒョーッ』


「さあペール、着いたぞ。ここが今日からお前の家だ。キエラ、下ろすの手伝ってくれ。ほら、そっちの足持て」

「はいよ。ペール、ちょっと失礼するわよ」


 キエラと二人で芋虫状態のペールを抱えてUFOから運び出す。


「ひあっ!? ちょ、ちょっとイルス! どこ触ってんスか?! あっ!」

「おいおい、変な声出すなよ。興奮するだろ?」

「だ、だからっ! そこじゃなくて、もっと腕の方とか持てるじゃないスか!!」

「なに言ってんだ。そんな持ち方したら痛いだろ? だからこの安定した辺りをな······」

「んっ! やっ、そこはっ!?」

「イ~ル~ス~!!」

「わ、分かった。真面目に運ぶから、キエラ、その般若面を下げてくれ」



 キエラには後で蹴られそうだが、おいしい思いが出来た。自分へのご褒美だ。




 とりあえず、玄関ホールにペールを運び入れた。キエラに踏まれた足の痛みを堪えながらペールを縛っていたロープを外してやる。


「うぅ······しくしく······もう、お嫁にいけない······」

「なら俺が貰ってやる。毎晩お楽しみ──いってててえ!?」


 キエラのスーパー耳ねじりを食らったので、ふざけるのはほどほどにして真面目にやるか。



 まだメソメソといじけてるペールをキエラと二人で励ます。


「元気出せよペール。きっと良い事あるさ」

「どの口が言ってんスか! どの口が!!」

「ごめんねペール。イルスって馬鹿でエッチだからストレス溜まるよね。分かるわ」

「うう、ウチの操が心配っス······」

「まあ、何はともあれだ。こうして無事に我がアジトへ来てくれたんだ。歓迎するぞペール」

「無事でもないし、来たんじゃなくて連れ去られただけっス······」

「細かい事は気にすんな。ほら、あっちに食堂があるんだ。そこへ行こうぜ」


 渋々と言った感じで立つペール。俺が先に立って食堂へと案内する。



「食堂は飯を食う場所でもあるがそのままプレイルームとしても使える。毎日パーティーも開けるくらいだぞ」

「パリピは撲滅っス!」

「ああ、そうだったな。これは失敬。だが、きっと気に入ると思うぞ。さ、着いた」


 扉を開けて中へと入る。



『ヒョヒョヒョーッ!! ヒュ~ッ!!』


「うわあっ?!」


 中へ入った途端、集まったダスト達が歓声と跳びはね拍手をもって迎える。

 俺の言いつけ通り、ペールお迎えの準備をちゃんと済ませており、お菓子や食い物を派手に並べてる。


「な、なんスか!? なんの騒ぎっスか?!」

「何ってお前のための歓迎会で皆騒いでんだ」

「えっ?! ウ、ウチの歓迎会?」

「おう。ほれ、こっちこい。おーいっ! ダスト達~! 主役の登場だー! もてなせー!」


『ビョビョビョビョーッ!!』


 会場のボルテージは十分温まった。

 戸惑うように立ち尽くすペールの背を押す。


「よし、ペール。みんなに何か一言いってやれ」

「え、えええっ?! な、何かって何を?!」

「それを考えるんだ。なんでもいい。これからの意気込みとか自己紹介とか、そんな感じだ」

「そそ、そんな事言ったって! いくらなんでもムチャ振り過ぎないっスか?!」

「んな深刻に考えなくていい。大丈夫だ。好きなように振る舞え。お前は幹部なんだからな」



 簡易的に作ったお立ち台にペールを登らせる。そして俺はペールの死角となる後ろ側に立つ。


「あ、あう······あ······あぅ······」


 硬直して立ち尽くすペール。


「おーい。ちゃんと言葉を発しろ」

「は、はいっス!」


 ペールはモジモジと恥ずかしそうに俯いたまま、小さな声をボソボソと出した。


「あ、あの~······ペ、ペールっス。この度はイルスファミリーにお呼ばれしまして、こ、このような会場まで用意していただき、か、感謝してるっス······」


 ダスト達に見えるように、俺は大きく手を上げてハンドサインを出す。


 それに合わせてダスト達が歓声を上げる。


「ヒャーッ!!」

「ライライライッー!!」

「メゴメゴーッ!!」

「ビョエ~~ッ!!」

「ギャリビ~ッ!!」


 どっと盛り上がるダスト達に、ペールが小さくのけ反る。驚いているのだろう。


 ハンドサインをスッと下げる。ダスト達が静かになり、ペールの次の言葉を待つ。


「あ、あわわ······」

「ペール、うけてるぞ! ほら、もっと続けろ」

「は、はいっス!」


 コホンっと咳払いして、一歩前に出るペール。


「ウ、ウチの目標は、陽キャによる独善的な社会の支配を終わらせ、陰キャも堂々と自分らしく生きられる世の中にする事っス! ここで皆さんと力を合わせてその世を作りたいっス!!」


 ハンドサイン。


『ビョビョビョビャエエ~~!!!』


 ──ドコドコ、ボンボン、ボコンボコン──


 ダスト達が熱狂の渦を巻き起こし、奇声を上げて盛り上げる。


 よし。ここらで十分だろう。



「よーしっ、ペール! 素晴らしい自己紹介だったぞー! ダストどもー、最後はペールコールで迎えてやれー! よっ、ペール!ペール!」


『ペールッ! ペールッ! ペールッ!』



 食堂を揺らすペール合唱に当の本人ペールは耳たぶの先まで顔を真っ赤にして、顔を手で覆っていた。



 死ぬほど恥ずかしいのだろう。



 でも、指の間から周りをチラチラと見る目は喜びに揺れているように見えた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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