73──ピースタウンへ
「ぬわあああー!?」
まるで流れ星になったかのように、俺はUFOごと星の力で空を飛び続けた。
スピードと高度が徐々に落ちていくと、UFOは森の中に突っ込むようにして墜落した。
「どぅぐええ!」
衝撃と共にコックピットから放り出され、地面に尻餅をつく。尻の着地地点が悪く、木の根の上だったためにクソ痛かった。
「ぐぎぎぎぃ、け、ケツが割れる······」
痛みを堪えて、墜落したUFOに近寄ってみる。星が刺さったままだったが、チカチカ点滅して風鈴のような涼やかな音を一つ鳴らして消えた。
「いつつつ······とんでもねえ力だな······」
一撃で俺の愛機がコテンパンだ。
しかし、一撃で吹き飛んだり、当たった瞬間木っ端微塵にされたりせず、こっちが墜落するまで安全に航行してくれるあたり思いやりを感じる。
おかげでUFOは大破したものの、俺自身はほぼ無傷だ。
「おー。派手にやられたな」
とは言えUFOはボロボロだ。このままじゃ使えないし、もう修理も無理なので一度バラバラにしてから組み立て直す事にしよう。
「ほいよ、クラフト解除」
くたびれたように崩れて材料の山になるUFO。
その材料を使って再びクラフト能力でUFOを組み立てる。
いくらか不恰好になったが、新しいUFOが完成。
「いくつかのパーツはそこら辺の枝とかになっちまったな。またアジトで作り直しだなこりゃ」
まあ負けはしたが、本来の目的である食糧の強奪自体は上手くいったし、キエラとの待ち合わせ場所に行くとしよう。
「よっと」
──フィィィン──
ニューUFOは問題なく浮かび上がり、空へと舞い上がった。
しばらく何もない森の波を超えていく。やがて、待ち合わせ場所のハート池が見えてきた。名前のとおりハートの形をした池だが、規模から言うと湖に近くて結構大きい。
「えーっと。キエラはと。お、居た」
そのほとりで芝生の上に寝転ぶキエラを発見した。勝手に何か食ってる。
「おーい、キエラー」
その近くに行って着陸する。キエラは、キャンディをペロペロと舐めながら寄ってきた。
「お疲れイルス。勝ったの?」
「負けたよ普通に。あいつめっちゃつええわ」
「そっかー。ドンマイ。とりあえず、あんたも無事でなによりよ」
「よく言うぜ。俺がリゲルと死闘を繰り広げてる間にペロペロか?」
「きゃはっ、めんご、めんご。おかげで楽しいオヤツタイムが楽しめたわ」
「たく。まあいい、一旦アジトへ帰って食糧を搬入しようぜ」
「りょーかい」
キエラに貸しておいた簡易UFOもまだ使えそうだったので、二人で編隊を組んでしてアジトへと戻る。
庭先に着くと、何体かのダスト質が帰りを待っていたらしく、ボコボコと跳ねていた。
「おお、お前らちょうどいい。食糧を大量に奪ってきた。他の奴らも呼んで全部運び込め」
『ヒョヒョーッ!!』
興奮したダスト達が食い物をどんどん運んでいく。運びがてら勝手に食ったりしてるが、まあお駄賃って事で大目にみておく。
「さて。キエラ、俺らはこのまま本来の予定に戻るぞ」
「うん。勧誘よね」
「よし。動力源二つだと俺の負担が大きくなるから、こっちに移ってくれ」
「オッケーっ」
キエラが隣に乗り込み、いつものスタイルで出発だ。
「さ、じゃあ行くぞ」
スロットルを入れる。
「ピースタウンに」
アジトを出発してから約3時間。
ずーっと続いていた森の木々が、少しづつ変わり始めてきた。
「ふう、少し暑くなってきたな。という事はピースタウンに近づいているって事だな」
「そうね。あー、なんかジュースでも持ってくれば良かった~」
森の木の葉が大きくなっていく。陽射しが強くなっていく。
そして小さな山を越えた辺りで──
「おっ! 見えたぞ!」
「おおーっ!」
目の前に広がったのは真っ青な海。
小山を越えるとそこは常夏のビーチであった。
とでも言うべきか。
青い水平線の果てから、真っ白な入道雲が襲いかかってきそうな勢いで聳えている。
南エリア、ピース地方。ピースタウン。
ここは春から秋の時期は全部夏のような気候になる常夏のエリアだ。海と長いビーチがあるため、海水浴などのレジャーや観光の盛んな地であり、各地方から多くの人間や妖精が遊びにくる。
海岸部に港も有しており、漁業を主な生業にしている。そこを中心に広がる形で町が形成されているのだ。大きさはユートピアタウンに次いで第二位の町だ。
「やっぱ、う~みは広いな~、大きい~な~」
「きゃははっ、何その歌~、ウケるっ」
ジェネレーションギャップか。いや、異世界だから知らないだけか。
銀色に熱しられた太陽の下を通り、ビーチの方を覗いてみる。
砂浜の上にはパラソルや屋台があちこちに並び、海の家が竹の子みたいにポコポコ立っている。バーベキューでもしてるのだろう。食欲をそそる煙の臭いがここまで届く。
「すげー観光客の数だな。パリピばっかじゃん」
おお、だが水着の姉ちゃん達もたくさん居る。これは素晴らしい。
「なあ、キエラ。せっかくだから水着に着替えてくれないか。ほら、あそこの姉ちゃんみたいな紐のやつ──いてててっ! わかった、分かった、また今度な!」
「まったく。さっきから鼻の下伸ばして」
キエラの耳ねじりから解放され、本来の目的のためにビーチから離れる。
ピースタウンのシンボルである灯台のてっぺんに架けられた巨大な鐘を眺めながら通過し、そのまま海沿いの山へと向かう。
潮の香りが漂ってくる入り江だが、切り立った崖ばかりでビーチは無く、人も居ない静かな海だ。
「えーっと。確かこの辺りだったよな」
「ねえイルス。一つ質問なんだけど」
「ん? なんだ?」
「あんたなんであの子の住んでる所知ってんの? あたしだって知らなかったのに」
「そりゃあ、何回か部屋に行った事あるから······」
「えっ? あんたそんなに仲良かったの?」
あ、やべ。それはゲームしてた時の話だった。
「あ、いや。そんな気がするんだ~。俺、なんかお部屋デートしたよ~な~」
「ふーん。あんたが女の子と二人っきりね······」
キエラが白い目で見てくる。
「ふーん。そんな仲の子が居たんだ。ふーん、そう」
「な、なんだよ。どうかしたか?」
「べっつにー」
何故かご機嫌斜めになるキエラをなだめながら、目当ての場所を探す。
「えっと、この辺りに······あ、あった!」
海が見下ろせる崖の上にひっそりと立つ天文台の廃墟。そこが、『あいつ』の隠れ家だ。
「よし、着陸ー」
その建物の横にUFOを着陸させ、キエラと共に降りる。
海からの風が生暖った。
お疲れ様です。次話に続きます。




