69──未来を変えるために
食堂に集まったイルスファミリー全員を前にして、俺はとりあえず咳払い。
「オホン······えー、みんなに集まってもらったのは他でもない。今から話したいのはズバリ、俺達の組織はこのままでいいのか。と、言う事についてだ」
『ヒョヒョヒョ?』
ザワザワと一斉にざわめくダスト達。
「静かに。まあ、いきなり何言ってんだって感じだわな。だが、とりあえず話を聞いてくれ。まず、俺達ファミリーはかなりの規模の集団だ。お前らダストの飯の消費量は俺達人間に比べれば大した事ないが、数が数だからその総量は膨大なものになっている」
ダスト達は申し訳なさそうにシュンとなった。
「そのため、俺とキエラは何度もユートピアタウンや周辺の町を襲撃して食糧の強奪をしてきたが、その度に思うような戦果は上げられなかった」
まあ、俺ではなくイルスの戦果の事だが、ゲーム知識からも芳しくない事は知っている。
「何故か? その理由は明白だ。そう、リゲル達による妨害のためだ。我々ファミリーがちょっと我が儘を言って食い物を独占しようとするのを理不尽に妨害するためである。俺やキエラも奮闘しているが、善戦虚しく連敗だ」
「あたしを巻き込むなっつーの。まあ、その通りだけどさ······」
「そこでだ! 我がファミリーの戦力増強を図りたいと思う! そして、圧倒的な武力に物を言わせてリゲル達を倒し、自由を手に入れるのだ! 何か良いアイディアは無いか?」
「って、そこは丸投げなの?!」
ツッコむキエラ。ざわざわと相談しあうダスト達。
三人寄れば文殊の知恵という言葉がある。ならば、100体以上のダストが知恵を出し合えば30人以上の文殊だ。文殊だけでサッカーチーム三つくらい作れる。
まさに、チリも積もれば山となる、だ。
この戦力増強の口上はあくまで建前だ。もちろん、リゲル達を退いて食い物を奪えればそれはそれで好都合だが、真の目的は別にある。
そう。あのシリウスやアンノーンが現れる前に戦力を整えておき、あいつらが攻めて来た時に強烈なカウンターをお見舞いしてやるのだ。
そうすれば未來は変わるはずだ。誰も悲しまない本当のパラダイスファンタジアに······。
ダストの一人がボコボコと跳ねて意見具申の意を示した。
「メゴメゴメゴーッ!」
「ほい、そこのキノコもどき。意見をどうぞ」
「オヤブン、モットツヨクナル」
「それが出来れば苦労しない! 却下!」
「ワビサビー!!」
「ほい、そこのワサビもどき」
「アネゴ、ツヨクナル」
「あたしは裏方なのっ!!」
「だ、そうだ。却下だな。他には?」
「ゲゾゲゾーッ!」
「よし、イカもどき」
「アイテ、ヨワクスル」
「どうやって?」
「シラナイ」
「却下だ!!」
その後も様々な意見が出たが、どれもこれも意見というよりは願望。その具体的な達成方法などは誰一人として浮かばなかった。
「ちくしょう! これだけ集まりながら何の成果も出んとはっ······!」
「諦めたら?」
「いや! それだけは駄目だ!」
ここで戦力を蓄えなければ、到底あのシリウスやアンノーンの群れには勝てない。
「こうなったら俺の案でいくか。お前らダストを徹底的に鍛え上げて最強の兵団にする。毎朝10キロのマラソンをしてから、午後は筋トレ。腹筋100回、腕立て伏せ100回、スクワッド100回、夕方はCQCの訓練を行い、夜は戦術シュミレーション、週一の実戦演習を実施して──」
『ビャビャビャビャーーッ!!』
怒ったようにドコドコ飛び跳ねるダスト達。
「嫌だってさ」
「みたいだな」
結局。この思いつきは初期段階で暗礁に乗り上げてしまった。
「くそー。何か良い方法は無いか」
「まー、無理なんじゃない? そもそもあたしらん中でカーリー達とまともに戦えるのはあんただけだし。でも、リゲルは倒す事なんて不可能に近いじゃん」
「あいつそんなに強いのか」
「いつも負けてんじゃん。リゲルとまともに戦えるのなんて、シュユとかローナとかみたいな強い奴しか居ないし」
「············ちょっと待て。キエラ。今なんて言った?」
「え?」
「今何て言ったんだ?!」
──ガシッ──
「きゃっ!? な、なに? 怒ったの? ご、ごめんってば! 別に馬鹿にした訳じゃ······」
「違う! 今何て言ったのかもう一回!」
「え? えっと、いつも負けてんじゃん······」
「その後!」
「シュユとかローナじゃないと戦えない······」
「それだ······」
「え?」
「それだ! 素晴らしいアイディアだぞキエラ!」
これだ。これこそ最良の手だ!
俺は再びダスト達へ振り返った。
「えー、オホン! 聞け! 野郎ども! 今キエラが素晴らしいアイディアを出してくれた! 俺はそのアイディアを採用する!」
『ヒョー?』
「我々イルスファミリーは、これより『シュユ』、『ペール』、『カミラ』、『ローナ』の四人を仲間に加える事にした!」
『ビョエエエーー!??』
「はああーーっ!??!」
驚きの声を上げるダスト達とキエラ。
だが、これ以上の手は無いだろう。
まず、あの四人、つまり四天王はそれぞれがこの世界で最強クラスの猛者達だ。
そう、パラダイスファンタジアのボス四人を纏めて俺の仲間にしてしまうんだ。これ以上の戦力増強は無いだろう。
しかもそれだけじゃない。あの四人の内の三人は『崩壊の力』をシリウスから貰っておかしくなっちまったんだ。
そのタイミングや過程は分からんが、おそらく、今はまだ正気のはず。
とすれば、今ここであいつらをこっち側に引き込めば大戦力をそっくりそのまま奪ったも同然。孫子の兵法かなんかであった『敵から奪った物資は自分で用意した物資より遥かに価値が高い』的な考えと言えるだろう。
完璧すぎる作戦だ。
「ちょ、ちょっと待ってよイルス!」
「ん? なんだ?」
「そりゃあ、強さだけで言ったらあの四人ほど頼もしい存在は無いと思うわよ? でも、あんな変人達が大人しくあたしらん所へ来てくれると思う?」
「そんなに変人だったっけ?」
「そうでしょ! シュユは気まぐれで掴み所ないし、ペールは引き込もって会えないし、カミラは我が儘だし、ローナは何考えてるか分かんないし。とても仲間になるとは······」
「でも、そんな奴らが仲間になったら楽しそうじゃないか?」
「それは······うん、そう、かもね?」
決まりだ。
「よーしっ! そうと決まれば早速計画を進めるぞ! そうだな、計画名は······『オールスター計画』だ!」
「よく分かんないけど······うん! なんだかおもしろそうかもっ! あたしも賛成!」
『ヒョヒョヒョーッ!!』
イルスファミリー議会満場一致。
よし。これから忙しくなるぞ。
お疲れ様です。次話に続きます。




