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65──リゲル

 

 誰──だ?



「イルス! また皆をいじめてるの? こんな事は今すぐ止めなさい!」


 空から舞い降りてきたその少女は、ビシっと俺に指差して見得を切った。


「さあ! 早く皆を解放しなさい! って、聞いてるの? イルスっ」

「························」



 誰だ? この子は?



 カーリー達と同じパラダイス学園の白い制服を着ているところを見ると、多分友達なんだろうが······こんなキャラは居なかった。



 ふんわりとした明るめのブラウンヘアーを腰辺りまでストレートに伸ばし、前髪に星のバレッタを着けている。


 パッチリした丸い目は優しげで可愛い印象を与え、瞳は星空のように煌めいていて、ふっくらした頬や和かさを帯びた輪郭など、全体的に人懐っこくて親切な雰囲気の顔をしている。


 誰にでも優しくて、誰からも愛されそうな、そんな風な印象を与える。



 これはまるで───



「リゲルっ! あたいらの仇を取って!」

「気をつけて下さい! 今日のイルスは少し手強いです!」

「リゲルー! がんばれー!」


「──へ?」


「うんっ! カーリー、レン、メルちゃん! 待っててね! 今助けるから!」


 その少女が構える。


「さあっ、イルス! 大人しく皆を自由にしなさい! じゃないと、私が相手になるよ!」

「ちょ、ちょちょちょちょちょっちょちょっ?! ちょっと待てっ!!」

「え? あ、うん」



 聞き間違いか? 今、カーリーがこの謎の少女の事を確かに”リゲル”って······。



 本人に確認だ。



 俺は思わずその少女──リゲルと呼ばれし謎の人物に近寄ってよく見てみた。


「ど、どうしたの? イルス?」

「んんん?!」


 た、確かに。


 よくよく見ると、雰囲気と言うか、髪の色だったり目の色だったり、顔の造形だったり、俺の知るリゲルに似てる気がする。


 そう、あれだ。性転換シリーズ。『リゲルを女体化させたらこうなりそう!』という感じの少女だ。



「············なあ、君は誰だ?」

「へ? え? 私は私······だけど?」

「いや、そうじゃなくて。君の名前は?」

「へ?」

「なんて名前だ?」


 少女がパチパチと目を瞬かせる。


「リゲル······だけど」

「··················」


 リゲル、だと?



「いやいやいやいやいやいやいやっ!!?」

「?!!」


 ──ガシッ──


 思わずガッチリとその両肩を掴んだ。あ、この骨格の軟らかさ、確かに女。


「わわっ?! イ、イルス?!」

「リゲルだって?! 冗談言うなー!! だってどう見たって女の子じゃねえか!!」

「え? え? 私、ずっと男の子だと思われてたの?」


 そんなバカな。確かに主人公は男だったはずだ。


「はっ!? もしかして、ただ女装してるだけで男の娘ってオチじゃっ──」


 ──バッ──


「────へ?」


 念のためにスカートを捲って調べてみたが、スパッツを履いてるとは言え、普通。隠しきれないモッコリが無い。


 という事は本当に女──



「······き························」

「ん?」


「きゃあああああああああっ!!!」


 ──ベッチィンッ!!──


「ふんごろぼぅごげええええ!!」


 リゲルなる少女の悲鳴と共に振り下ろされたビンタが視界に入った。その瞬間、首の根元から全部持ってかれるような衝撃が俺の身体を浮かした。


 世界がグルグルと七回転くらいして、地面に叩きつけられた。


 ──ドザアアッ──


「どぐぅあえっ!!」

「あっ!!? し、しまった、ついっ······」



 いってええ······。見た目に依らずのすげえ馬鹿力。やべえ、立てねえ。


「ぐ、ぐおおお······」

「だ、大丈夫?! イルスっ?」


 地面に這いつくばっていると、ふわっとした花の香りと共に少女──リゲルが抱えるようにして起こしてくれた。


「ご、ごめんね? びっくりしてつい力が入っちゃって」

「い、いや、お前のせいじゃない」


 今のはぶん殴られても100パー俺が悪い。


「いてて······あ、顎が······外れたか······」

「ほ、本当?! それは大変! じっとして」


 ──ガシッ──


「おっ?」


 リゲルのちょっと温めの手が俺の顔を掴んだ。


「えいっ!」


 ──ゴキンッ──


「ぬごああああっ?!!」


 またまた馬鹿力が加わり、顔関節がヤバい音を立てた。


 が、なんとなくスッキリした。


「あがが······な、治ったか······」

「ほっ。良かった~。大丈夫? イルス?」

「あ、ああ。サンキュー」


「ちょっと! リゲル!!」


 気になる顎をさすっていると、吊るされていたカーリーが文句を言うように叫んだ。


「なにやってんの! 早くイルスをやっつけて!」

「あ、そうだった」


 カーリーの野次で思いだしたのか、リゲルがムッと睨んでくる。


「さ! イルス! 皆を解放しなさい!」

「いや、もう好きにすればいいんじゃないか? ほら、俺UFOに乗ってないし、カーリー達はお前側に居るし」

「あ、ホントだ。いつの間に」


 ポンっと手を叩くリゲル。うんうん、と頷く。


「そっか。別にイルスをやっつけなくてもカーリー達を助ければいいんだね」

「そうそう」


「あっ! 口車に乗せられてる!? リゲル~!」

「え? 何が?」


 リゲルがキョトンとしている間に、俺はUFOに乗り込んで発進した。


 それに気づいてリゲルがあっ、と声を上げた。


「しまった! うっかり!」

「······リゲル······この子が······」



 正直、頭が混乱しきっていて上手く思考が回らないし、何をすれば良いかも分からん。


 とりあえず──



「今日はこれくらいにしとく。じゃあな」

「えっ? あっ、待ってイルス──」



 俺はそのまま転進し、その場から離脱した。


お疲れ様です。次話に続きます。

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