64──現れたのはヒーロー?
「メル! 許せよ!」
もう一つのウルトラハンドを取り出してメルを叩く。
「あうっ!」
小さな体が落下していき、屋台の屋根に突っ込んで砂煙を上げた。
「メ、メルっ!」
「安心しろレン。手加減はしてる」
とは言え、やっぱりこの三人に攻撃するのは非常にやりにくい。
「ぬがあーっ!!」
──ポップコーンッ!──
「うおっ?!」
メルを撃墜したところで、ポップコーン屋台が爆発し、大量のポップコーンが四散した。
その中心にはメラメラと燃えるカーリーの姿が。
「イルス~! よくもやったなーっ!!」
顔を真っ赤にしたカーリーが、焔の玉と化して飛んでくる。
「今日はキツ~いお仕置きよ! 覚悟しな!」
「魅力的な誘いだが、今はお断りだな!」
「食らいな! ファイヤービート!」
──トトトトトッ──
小さなロケ花のような火の弾丸が広範囲に渡って拡散発射される。
レンを盾にしたら火傷するかもしれなかったので、急速発進して避ける。
「うおっ?! こっちには人質が居るんだぞ!」
「えっ?!」
頭に血が上って居たのだろう。囚われのレンに気づいてなかったようだ。
「あっ! レン?!」
「うぅ、私には構わず、カーリー! やっちゃって下さい!」
「で、でもっ······」
「隙ありだー!!」
無防備に空中停止するカーリーにウルトラハンドを伸ばす。
「!? こんな物!」
──バキィッ──
それを蹴って破壊するカーリー。おお、太もも。
「流石だな! なら、これでどうだ!」
岩バズーカ発射。
「女は根性! こんな岩ー!」
なんと素手でぶん殴って岩を破壊した。流石脳ミソ筋肉ゴリラ。
「泥団子マシンガン!」
間髪入れず、立て続けに攻撃を浴びせる。カーリーはそれもパワーでねじ伏せていった。
その度に、カーリーを纏う炎が大きくなる。
「うりゃああ!! どうよっ! あたいの炎は燃えるほど強くなるのさ!」
「ふっ······」
「な、何がおかしいのよ!」
「かかったな」
「何?」
「食らいな!」
──ドンッ!──
バズーカを発射。
「無駄だって言って──」
──バキィッン──
「な?!」
カーリーの目の前で粉々に砕け散る氷塊。
今俺が撃ったのは岩バズーカではない。
さっきレンが放ってきた氷を回収して弾にしたアイスボムだ。
「しまっ!?」
カーリーの炎により、砕け散った氷が溶けて水になる。
当然、それによりカーリーが多少の水を浴びる。
「うぐっう?!」
それほど多量ではないとは言え、弱点の水は効いたようで、カーリーがクラッとその場でよろける。
「貰った!」
接近し、ホースを出して残っていた水をカーリーにぶっかけた。
──ジャーッ──
「うわっぷぅっ!?」
──シュウ~······──
焼け石に水をかけたような音と共に、カーリーの炎が消え、クラクラッと目を回す。
「う、う······ち、力が~······」
「ほい、ゲット」
落ちそうになるカーリーを捕まえ、レンと一緒にツタのロープで縛り上げる。
そして、地面でのびていたメルも同じく拘束し、三人仲良く一纏めにくっつけて木の枝に引っ掛けて吊し上げた。
「くそ~っ······悔しいーー!!」
「あ、カーリーっ、暴れないで下さい!縄が食い込んで······んっ······!」
「ううう~! イルスの意地悪! 鬼!」
木に吊るされて恨みの言葉を上げる三人。
俺はUFOから降りてそんな三人を眺めていた。
この角度なら幸せの光景が拝めるかと思いきや、全員スパッツを装着している。まあ、スカートで空飛ぶのが日常なら、そら対策するわな。
「いや、だがこれはこれで······それに絶対領域が拡張されてるようなこの感覚もなかなか······」
「この変態っ! まじまじ見るなー!!」
「だ、だからカーリー暴れないで下さい!」
「もうっ! そんなんだから女の子に嫌われるんだよ! イルス!」
騒ぐ三ヒロイン達。その姿を見ていると何故かホッとしてくる。
最初に三人を倒した時は、皆打ちひしがれたような感じだったからな。
これが本来の光景なんだ。いや~、太もも最高。おお、縄が食い込んで強調部分が······。
しかも三人密着なんて贅沢な百合の花束だ。
「おい、あんまし暴れんな。縄の痕がつくぞ」
「だったら外せー!!」
「外したら殴らないでくれるか?」
「殴るに決まってんでしょっ!!」
「じゃあ却下だ。しばらくそこで陰干しだ」
暴れるカーリーの横ではレンとメルが身をよじっている。
「カーリー、落ち着いて下さいっ、貴方が暴れるとこっちの縄が······んっ······」
「ひゃ、ひゃんっ! カーリーちゃん、動かないでー!!」
おお。おおおおー。おおおおおおっー!?
カーリー。グッジョブ。
「おいっ、こら! イルス! あんた目つきがいやらしすぎるよ!!」
「ほんとですっ······あっ······何時もよりいかがわしい視線を感じますっ······」
「エッチ!! もうっ、イルスのバカー!!」
ちょっと待て。あのイルスよりも俺の方がスケベだって言うのか? マジかよ。それは人としてのプライドが······。
「まあいいか。それより、悪いがお前らには餌になって貰うぞ。それが終わったら解放してやるから大人しくしててくれ」
「はあ?! 餌っ? なんの餌よ!!」
「そりゃあ······」
······そうだ。一番最初に会った時は、この名前が禁句だったんだな。
今なら······言えるか?
「············そりゃあ───リゲルを誘き寄せるための餌よ」
俺は三人の反応を伺った。
また、あの絶望の表情になったらどうしよう。
その瞬間が長く感じられた。
三人の顔は驚いたようになった──かと思ったら、次にはパッと明るくなった。
「あっ!! 来た!!」
「来てくれましたか!」
「こっちー! 助けてー!」
三人が俺の後ろの方へ向けて声を上げた。
この反応からして、俺の心配は杞憂だったという事が分かる。
三人が希望に満ちた目で見るその方向にはおそらく──
俺は振り向いた。
振り向いた瞬間、一人の人物が空から舞い降りてきて、俺の目の前に立った。
そう、それはまさしく主人公の──
「······ん?」
「イルス!!」
颯爽と降りたって対峙するその人物。
それはリゲル──ではなかった。
そこに現れたのは、見知らぬ少女であった。
お疲れ様です。次話に続きます。




