63──決闘、三ヒロイン戦
今は真昼なのだろう。太陽が真上から照りつける。いくら年間通してほとんど春の気候のユートピア地方でも、少し暑い。
「············見えてきた」
ユートピアタウンだ。さっきの今でトンボ返りだが、どうしても確かめなくちゃいけない。
俺の仮説通りに、ここが過去なら──しかも隕石爆発よりも更に過去なら。
あいつが居るはずだ。
あいつが居ればここは過去だと見なしていいだろう。
そして、探すよりももっと確実に見つけて会える方法がある。
多少不本意ではあるが······仕方ない。
一旦森の中に入り、あれやこれを集めて必要になるであろう武器を作成していく。
だが、形が不揃いで性能はあまり期待出来ない。キエラを連れてくるべきだったな。
準備が整い、いよいよ出陣だ。
森から飛び立ち、高度を上げながら町を目指す。すぐに、さっきと同じ屋台の群れが見えてきた。
よし。やるか。
ペダルを踏み込み、操縦桿を一杯に倒して急降下する。身体に負荷がかかり、地上の景色が急速に膨れ上がる。
20メートルかそこらに迫った所で辺りに居る住民達が気づいて、俺を見てあっと声を上げた。
「あっ! イルス!」
「なっ! 戻って来たのか!?」
「もう戻って来たのか?!」
ざわざわ騒ぐ人間や妖精、マスコット達。
よし。なるべくソフトに······。
「······ふぅー。おいっ聞け! ユートピアタウンの奴ら! ここにある食い物は全部俺様イルスが貰う! 逆らったら痛い目を見るぞ!!」
大声でそう宣告すると、途端に辺りが騒がしくなった。
「また悪い事する気だな!」
「くそー! どうして皆みたいに出来ないんだ!」
「この野蛮人! チンピラっ!」
「いーっだっ! この馬鹿ー!」
「いつも負けるくせにーっ!」
「単細胞! 良いとこ無し!」
「万年彼女無しっ!」
──カチン──
「うるせえーっ!!」
「うわああっ! 逆ギレしたぞー!」
この野郎ども。黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。特に最後が許せん。
それにしても。イルス、嫌われすぎだろ。
ともかく、誘き寄せ兼人払いをしなきゃな。
「仕方ねえ。食らえっ! ロッテンバレット!」
細身に改良して連射能力を高めたバズーカで腐った果物を乱射する。
──ボボボボボボボボッ──
「うわっ?!」
「きゃああああ?!」
「わあーっ!!」
──ベチャベチャベチャベチャッ──
腐った果物の流星群が降り注ぎ、野次馬達を次々に果汁果肉まみれにしていく。
「うええっ?! くっせえー!?」
「やーんっ! ベトベトッー!」
「うえっぷ!! 口に入った!!」
「あ~! お気に入りの服がー!?」
逃げ惑い、阿鼻叫喚の住民達。
いいぞ。もっと騒げ。早く助けを呼べ。
よし。俺からも誘致しよう。
「オラオラアッ! どうした?! カーリー達ー! 早く来いよー! リベンジしに来たぞー!」
腐った果物以外にも、砂利などをぶちまけたりして嫌がらせをする。
果たせるかな。人払いが済んだ辺りで三ヒロインがすっ飛んで来た。
「イルスー!! あんたやっぱり最低ね!」
「今日は大人しく帰ったと思ったのに。これはお仕置きが必要ですね!」
「もうっ! どうしてこんな事するの?!」
駆けつけた三人は少し離れた所に停まった。
怒った三人が戦闘態勢に入る。
三人、か。
仕方ない。
ここは原作の時みたく三人を倒せば俺の狙い通りになるだろう。
「来たか。悪いが少しの間付き合って貰うぞ」
「あんたの誘いなんてお断り!」
「反省しなさい、イルス!」
「いくよ!」
三人が散会してかかってくる。
正面からカーリーが突っ込んでくる。
「食らいな! ヒートアッパー!」
炎を纏った拳を下から突き上げるようにして振りかぶってくるのを躱す。
「やっぱ脳筋だな」
「何だと──」
──シュババババッ──
「わっぷ?!」
収納していたホースから水を出してカーリーに浴びせる。さっき川から汲んでおいた水だ。
「うぐぐ、しまった······」
油断していたのだろう。弱点である水を浴びたカーリーの動きが一気に鈍くなる。
「悪いなカーリー。食らえ!」
ウルトラハンドを出して少し加減して殴る。
「わあっ!?」
カーリーが吹っ飛んで屋台のポップコーンの中へと派手に突っ込む。
「あっ! カーリーちゃんっ?!」
「メルっ! 油断しないで下さい!」
レンがすかさずフォローするように俺の左翼に回り込んでくる。
「食らいなさい! スノウブラインド!」
ヒョーッと雪風が吹き、視界が一時的に白くなる。
「さっみい~!!」
たまらず上昇して逃げると、それを読んでいたらしいレンが接近していた。
「アイス・ロック!」
「おっと!」
拳大の氷のブロックが飛んでくるのをウルトラハンドで叩き落とす。
「やりますね······! なら、アイスショット!」
今度は霰のような小さい氷の粒が発射される。
「くっ!」
ウルトラハンドでガードする。
そのハンドの向こう側からレンの声が聞こえた。
「貰った! アイシックルナックル!」
「ふっ! 読んでたぜ!」
「えっ──」
俺は流し込んでいた魔力を全て止めた。
その瞬間、機体はふっと力を失くして落下を始めた。
「なっ?!」
頭上を、ひんやりした空気と、驚きの表情を浮かべて拳を空回りさせるレンが通りすぎた。
「からの~!」
魔力供給再開、動力源復活。UFOがガクンッと空中でつっかかり、浮かぶ。
機体を急回転させ、下部から砲身を出す。
「悪いな、レン!」
試作ガトリング砲から、ゴルフボール程の泥団子弾を連射する。
──バババババババッ──
「なっ!? きゃあっ!?」
弾が次々とレンに当たり、あっという間に泥だらけになる。
物理耐久低めのレンが空中でよろめく。
「隙あり~!」
すかさず、ウルトラハンドを伸ばしてレンを捕まえる。
「あぐっ?! し、しまった!」
「レンちゃんっ?! こらー! イルス! レンちゃんを離せー!」
側面に回り込んでいたメルから風の弾が発射される。ほぼ透明な弾丸は黙視するのが難しいが、威力は弱めだ。
ここは避けずに──
「そーいっ!」
「うっ?!」
捕まえていたレンを、メルの方にかざして盾にする。多分、直線で弾丸が来てるはずだ。
「あっ!?」
メルが驚きの声を上げると同時にウルトラハンドと機体にガクッと衝撃がかかった。
「ううっ!」
レンの髪が逆立つ。メルの攻撃を食らったようだ。
「レ、レンちゃん! ご、ごめんね?!」
あたふたと取り乱すメル。
この隙は逃さん。
「隙あり!」
岩バズーカをメルに向かって発射する。
「わわわっ?!」
慌てて避けるメルに向かってアクセル全開で肉薄する。
すっかり虚を突かれたメルは、的確な判断も出来ずに俺の接近に驚くばかりだ。
「わ、わあああ?!」
お疲れ様です。次話に続きます。




