61──生きて再開
本日3本投稿予定です。
「あ、あれ?」
ユートピアタウンが見えた。
そこまでは良かった。
しかし──
「んん?! んんん?」
「どうしたの? イルス」
「いや、どうしたもこうしたも······」
ユートピアタウン。それは人と妖精達が共存する楽園。涙はあっても不幸は無い。
しかし。今やそこは、謎の怪物アンノーンによって蹂躙され、似つかわしくもない物々しいバリケードと見張り櫓の戦士達によって守られ、戦うための城塞になっている───はずだった。
だが──
「バリケードが······無い?」
「えっ? わっ」
思わずスピードを上げて近づく。
近づいてみると、よりハッキリと町の様子が見れた。
町を囲っていたバリケードは影も形も無く、見張り櫓も存在せず、当然、武器を持った防衛隊の戦士達も居ない。
それどころか、バリケードが並んでいた辺りにはいくつもの屋台が立ち並んでいて、大勢の住民がワラワラと練り歩いているじゃないか。
頑強に作られていた城門も無く、今ではパラファン本来のお洒落なアーチが架かっている。
「························」
これはどういう事だ?
これはおかしい。いや、逆だ。これこそ俺の知る本来のユートピアタウンだ。それは間違いない。
だが、今この世界はあのシリウスとか言う奴のせいで滅茶苦茶になってしまっているんだから、あの不自然な狂った世界こそ正しいんだ。
こんな······正しい姿はおかしい。
「いや······おかしくねえよな。これで良いんだよな。そうなんだが······」
「イルス、どうしたの? ブツブツ言って······」
混乱してきた。目が覚めてから何もかもがおかしい。分からない。
まるで、俺一人を除いて世界の全てがガラリと入れ替わってしまったような······。
······待てよ?
それなら説明がつく。
この世界はパラファン本来の世界だ。そして、俺がシリウスと戦った世界は“狂ったパラファンの世界”だった。
そして、俺は今、何故か本来の正しいパラファンの世界に居る。狂った世界ではなく、こここそ、俺がゲームでプレイしていた世界。
つまり、俺だけがあの狂った世界を知っていて、他の全ての住民は知る由も無い。
もしかして、あの狂った世界全てが悪夢で、ただの幻想だったという可能性も──
「いや······あの痛み、この記憶······幻想や夢じゃ片付けられないな······」
「イ、イルス?」
駄目だ。仮説が浮かんでも全てを合理的に説明できない。一体何が──
『あっ! あれ! イルスのUFOだ!』
「うん?」
甲高い声がしたので下を覗いてみると、地上から何人もの住民達がこっちを見上げていた。
「あっ、あいつら」
「イルスが来た!」
「きっとまた悪さしに来たんだ!」
「この間もあたしのキャンディ取ったんだもん!」
その住民の中で声を上げる三人。
アバ、ユサ、キャト。モブガキ三人衆。
「イルス! 何しに来たんだー!」
「悪い事はいけないんだからね!」
「そーよ! そーよ!」
「············」
「まったく! 本当に生意気なガキんちょ達ね! イルスっ、いつもみたくあたしらの恐ろしさを教えてやりましょ······て、イルス?」
「ん? あ、ああ、そうだな」
モブの子供達も普通だ。俺を見て泣き叫んだりしない。正に俺の知るようなリアクション。
「ねえっ、イルスってば! しっかりしてよ!」
「え? ああ、うん」
「もうっ! 今日のあんたは全部上の空ね! そんなんじゃカーリー達にまたやられる──あっ! 噂をすれば本当に来た!」
「えっ?」
ザワッと民衆が騒ぎだした。
「あっ! カーリーちゃんだ!」
「レンとメルも居るぞ!」
「俺らの天使が来てくれたぞー!」
「いけーっ! イルスなんかやっつけろー!」
みんなの声援が送られるその先。
そこには、空を駆ける三つの影。
その見覚えのある三人がすぐ目の前まで近づいてきて止まった。
「──あ──」
「到着!」
「みなさん、お待たせしました」
「愛と正義の味方、参上!」
自信満々に現れた三人。
それは間違いなく、あの時目の前で倒れていったヒロイン三人衆──
「って。またあんたかイルス!」
怒ったように睨んでくるカーリー。
「騒ぎがある所、イルス在り。ですね」
呆れたようにため息を吐くレン。
「イルス。また何かしたの?」
困ったように上目遣いを向けるメル。
見間違いでも幻覚でもない。
殺されたはずのカーリー、レン、メルの三人が元気な姿で俺の目の前に居る。
「イルス、キエラ! まだ何もしてないなら大人しく帰りな! 悪さはあたいらが許さないよ!」
「ふん! 相変わらず生意気! この脳筋火だるま! あっかんべーだっ!」
「なっ?! この~! 髪の毛チリチリにしてやる!」
「どうどう、落ち着いて下さいカーリー。見た所、二人ともまだ何もしてないみたいです。今なら話し合いでどうにか──」
「今まで一回でも話し合いで退いた事なんてある?!」
「レンちゃんの言う通りだよ。カーリーちゃん、みんな仲良くいこーよ。ね、キエラちゃん」
「ふ、ふん! 馴れ馴れししいわね!」
「ともかく! あたいだって好き好んで喧嘩なんかしないさ。引くなら今の内だよ?」
「ムカつくっ! ねえ! イルス! あんな事言われてあんたも悔しくないの?! ほらっ、何時もみたいにさっさと──って······え? イ、イルス? あ、あんたどうしたの?!」
「え?」
キエラがギョッとしている。そして、カーリー達も俺の顔を見て驚愕の表情を浮かべた。
「ど、どうしたのよ!? なんであんた泣いてんの?!」
「え? あ······」
また、泣いてたのか。俺って意外に泣き虫だったんだな。
「イ、イルスが涙?」
「カ、カーリーちゃん······ちょっと言い方キツすぎたんじゃない?」
「えっ?! あたいのせい?!」
「う、ううんっ! そう言う訳じゃないけど」
「イルスが泣く······そんな所、辛子パウダーを全身に浴びた時とワサビジュースを飲んだ時しか見た覚えがありませんね······」
「いや、そこなの?! レン!」
三人が妙に慌てふためく。仲良さそうだ。身体も何ともないみたいだ。
「······良かった。お前らもみんな無事で······」
「はあっ?」
「え?」
「えっ?」
そうだ。三人に聞かなくては。あの後どうやってみんな助かったのか、ローナは生きてるのか──
──グイッ──
「きょ、今日はこれくらいで勘弁してやるわ! 覚えておきなさいよ!」
「あっ、キエラ?」
三人に話を聞こうと思ったところで、キエラが俺から操縦桿を奪い、UFOは転身して急速力で離脱を始めてしまった。
お疲れ様です。次話に続きます。




