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59──日常?

 

 うーむ。



 あまりに突拍子もない夢のような展開に浮かれていたのに、なんかモヤッとするぞ。


 なんて言うのか、俺とキエラの間にすごい温度差がある。

 俺は恥ずかしいくらい泣いたのにキエラは頭に? を浮かべてとぼけてる感じだ。せっかく生きて再び会えたのに何事も無かったかのような感じだ。まあ、確かに何も無かったかのように傷痕一つ残ってすらないんだが。


 それよりも、他のみんなが無事だったかどうかくらいは教えてくれてもいいのに······。



 あんな事の後だ。キエラも疲れてんのかもしれないな。俺も言われた通り寝て落ち着くか。



 ·····················。



「············~~っ。駄目だあっ!!」


 気になって眠れん。何かしてないといられない。


 服を着替え、部屋を出る。


「よし、まずは食堂で腹ごしらえ──」


『ヒョヒョヒョー!!』


「ん? おわっ!?」


 廊下を歩いていると、そこら辺の物陰から珍妙なモンスター達が飛び出して足下に纏わりついてきた。


「って。なんだダスト達か」

「ウビョビョー!」

「ジーッジーッ!」

「ワキワキワキー!」


 ボコボコと跳ね回るダスト達にいくらかホッとした。


「またお前らに生きて会えるなんてな。お前らも留守番ご苦労さん」

「ヒョ?」

「ミョ?」

「パグァ?」


 何故か一様に静まりかえるダスト達。さっきのキエラみたいに不思議そうに俺を見ている。


「ん? なんか見慣れない奴も居るみたいだが······気のせいか? それとも、留守にしてる間に新しく入ったのか?」


 何体かは何となく見覚えあるんだが、何体かは逆に、『居たっけ?』となる奴だった。


 まあ、いいか。



 ダスト達を引き連れて食堂へ入る。


 すると──



「ンビャーッ!」

「リオディオー!!」

「ブンババァッ!」

「ポペプアッ!」

「ヒョーッ!」


 食堂はカオスな事になっていた。


 大勢のダスト達がボコンボコン暴れ回って食い物を奪いあっているのだ。


 テーブルの上でウィンナー綱引きを始め、椅子の下ではパン取り合戦を繰り広げ、ソファの上ではクッキーフリスビー大会を開催してる。


 奇声と食べカスがそこらを飛び交い、床や壁がたちまち汚れていく。後で片付けんのが大変そうだ。



「んん?」


 それにしても······あれ? 多くないか?


 さっき廊下で遭遇してついてきたダストが10体程、そのまま残ったのが同じくらい。

 そしてこの食堂に居るのが──


「······10、15、20、24、25、26······30······36······40······41、45······50?」


 ざっと見ただけでも50近くは居る。さっき別れた奴らと今引き連れた奴を合わせれば70を越える。

 おかしい、確かダストは半分以上がシュユに殺られたから40体かそんくらいしか残ってなかったはずだ。


 俺が留守にしてる間に増えたのか?


「あれ? イルス?」

「ん?」


 そんな事を考えて突っ立っていると、台所の方からキエラが出てきた。


「起きて大丈夫なの?」

「あ、ああ。別にどこも具合悪くないしな」

「そう? あ、何か作る? 今ちょうど有り合わせの物で作ろうと思ってたのよ」

「えっ? そ、そうか。なら一緒に作るか」

「えっ?!」


 驚いたように目を丸くするキエラ。


「イ、イルスが料理? あんた料理なんて出来ないでしょ? ていうかした事ないじゃん」

「何言ってんだ? いつも一緒に作ってたろ?」

「は、はあ?!」


 ますますびっくりしたように、声を上げるキエラ。


「はぁ。あんたまだ寝ぼけてるのね。ま、いいわ。少ししたら治るっしょ。付き合ってあげる」

「お、おう?」


 なんで呆れられてんだ? 俺。


 ともかく、何時ものように二人でキッチンへと入る。


「さ、何作ろっか。肉じゃがにしようかなって思ったんだけど」

「肉じゃが?」


 テーブルの上にはバターやワイン、それにゼリーとかイクラとか乗ってる。


「なんでワインとバターが?」

「隠し味になるじゃん」

「ゼリーとイクラは?」

「コンニャクとグリンピースの代わりになりそうじゃない?」


 良かった。この飯マズ具合ならキエラ本人だろう。言動がおかしくて偽物説が浮上しかけていたがこれで安心だ。


「さてと、じゃあ早速──」

「ま、待った。材料選びは俺がやる」

「え? そう?」

「ああ、任せろ」


 まともな食材を選別する。


「じゃあ野菜切ろっか。イルス、包丁使えんの?」

「言ったろ? こう見えてもじゃが芋の皮をピーラー使わずに剥ける系男子だって」

「きゃはははっ、何それ~!」


 明るく、弾けるように笑うキエラ。


 前にも同じ事言ったのにこんなに笑ってくれるとは。それに、以前よりも元気に笑った。



 ありきたりだけど、落ち着く味の肉じゃがが完成し、二人で食べる。



 このありふれた時間が、今では掛け替えのない素晴らしい物だって実感するな。


「もぐもぐ······イルス、なんか大人しいわね?」

「ん? そうか?」

「うん。だっていつもなら『ヒャーッ! クソうめえぜ~! ウンコうめえ~!』とか、あ、ごめん。でも、そういう風に食事中でもうるさいじゃん。食べカス飛び散らかせるし」


 それは俺じゃなくてあの馬鹿(イルス)だ。まあ、間違ってはないが。

 だけど流石に飯食う時はイルスのマネなんかしなかったはずだけどなあ。て言うか全然イルスに成りきれてなかったし。


「いつもこんなんだったろ?」

「いや、そんな事はないでしょ······やっぱ具合悪いんじゃない?」

「そんな事ないが······」


 それにしても。今更ながら、キエラの雰囲気も随分違う気がする。

 なんて言うんだろう。これが本来というか、正しいというか。


 つまり、あれだ。


 静かで気弱な感じのキエラがそもそもおかしかったのであり、すぐ怒ってプンスカするキエラの方が俺の知るキエラなんだよな。

 イルスに暴力された事で本来の性格が抑えられていたのが、今は自由になった感じ。


「まあ、あんまし無理しないでよ? なんだかんだ言ってあんたが居ないと()()()()()()()歯が立たないんだから」

「は?」




 リゲル?


お疲れ様です。次話に続きます。

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