表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/258

57──目が覚めて······

調整や確認のため、一週間ほど空けて、来週の土曜くらいから投稿を再開します。よろしくお願いいたします。

 


 ··································································





 俺は何も出来ない人間だ。



 振り返ってみれば、ずっとそうだった。




 何かを好きになって、それを続けてみようと頑張ってみても、すぐに飽きてしまう。

 というよりは、本当に好きだったのか自分で懐疑的になってしまうんだ。


 何より······上手くいかないんだ。何もかも。



 だから何も長続きせず、その結果何も得れなくて、人生を歩んでいく中でふと振り返ってみると、そこには何も無いんだ。


 俺の想い出と呼ぶにも虚しい記憶達。その中には情熱的な物は何も無い。



 一体なんのために生まれて、何がしたくて生きてるのか。



 分からなくて。悲しくて。それなのにどうにかしようとは思えなくて。


 ずっと燻ったまま、生きてきた。





 そんな時。出会ったんだ。



 パラダイス・ファンタジアに。



 お世辞にも、良ゲーとは言えなかった。ましてや神ゲーなどでもない。



 だけど、どこか心惹かれた。



 クソゲーとか何とか言われてたし、俺もまあ概ねそんな評価はした。



 だけど好きだったんだ。



 なんでかは分からない。



 ただ、そこに居る人達が、キャラ達が、みんな一生懸命なのが羨ましかった。



 もちろん、作り物の世界にそんな感情抱く方がおかしいとは思う。作り話の中のキャラに感情移入したり、作り物の世界を好きになるなんて子供じみてる。



 それでも。


 俺にとっては救いだったんだ。



 ゲームの良いところは、現実の自分ではない“誰か”になれるところだ。


 それは理想であったり、別人であったり。ゲームの中の自分は、現実の自分とは違う。


 でも、少なくとも俺の意志でその人物は動いている。主人公になれる。そして、頑張れる。



 クソゲー? 上等だ。俺にとっては神ゲーさ。クソと神の違いなんて自分が決める事だ。俺はこのゲームが──この世界が好きだった。だから苦しくても命を賭けられた。守りたかった。









 だけど··················





 俺には何も出来なかった。




 何も。出来なかった。誰も守れなかった。




 やっぱり俺は主人公にはなれないらしい。







 ······················································





 なんだ?





 何かが······来る。




 こんな何も無い暗闇なのに。


 何か美しい物が来てる。



 ?



 風だ。



 青い風?





 なんだ?






 世界が············遠く過ぎ去って··················














「───ス──」



 ······。



「──ルス──」



 ············。



「──イルス!」



 ······?




「ねえっ! イルスってば!!」



 !!!!!





 ──ガバッ──



「っはあ!!」



 世界が変わった。暗闇の無が消えた。

 見知らぬ天井、すすけた壁、汚い床。

 どこか知らない部屋の中の光景だ。


 いや、見覚えがある。



「はあっ、はあっ、こ、ここは?」


「な~に~? もしかして悪夢でも見てたの?

ぷぷぷっ、いつも馬鹿なのに臆病ね」


「え?」



 あれ。この声は······。



 ゆっくり自分の首を動かした。ここは俺の部屋だ。いや、イルスのあの部屋だ。



 そして、俺の視界には────



「もう、男なんだからビビってないで早く起きてよ。あたし、お腹減っちゃった」

「────キエラ?」

「うん?」


 コロッと不思議そうに首を傾げる少女──それは間違いなくキエラだ。


「どうしたの?」

「キエ······ラ?」

「な、なに? あんましマジマジと見ないでよ、あんたに見つめられると不安になるわ」



 キエラは──確かにあの時──みんな、あいつに──でも、この声、この子は──



「キエラ······だよな?」

「はあ? もう、寝ぼけてんの? まーた昨日夜更かししたんでしょ。あんた一人ポーカーやりすぎなのよ。ほら、今日はまた町に食糧獲りに行くんだから、早く起きて──って、イルス、聞いてる?」

「············」

「ちょ、ちょっと?! な、なに泣いてんの?!」


 泣いてる? ああ、俺、泣いてんのか。


 そんな事はどうでもいい。



「キエラっ······」

「えっ?」


 ──ガバッ──


「!?!!?!! ちょっ──」

「キエラああああ!! 良かった!! 良かった!! 無事だったんだな!! 本当にっ······良かったあああ!! キエラああああ!!」

「イ、イルス?!」




 俺はキエラの胸の中で泣き叫んだ。力一杯に抱き締めて泣いた。


 なんでキエラが居るんだろう。


 なんでこの部屋に居るんだろう。


 俺、なんで生きてるんだろう。


 もう感情がごちゃごちゃだ。



 でも、もう少しだけこのままで··················


お疲れ様です。次話に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ