57──目が覚めて······
調整や確認のため、一週間ほど空けて、来週の土曜くらいから投稿を再開します。よろしくお願いいたします。
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俺は何も出来ない人間だ。
振り返ってみれば、ずっとそうだった。
何かを好きになって、それを続けてみようと頑張ってみても、すぐに飽きてしまう。
というよりは、本当に好きだったのか自分で懐疑的になってしまうんだ。
何より······上手くいかないんだ。何もかも。
だから何も長続きせず、その結果何も得れなくて、人生を歩んでいく中でふと振り返ってみると、そこには何も無いんだ。
俺の想い出と呼ぶにも虚しい記憶達。その中には情熱的な物は何も無い。
一体なんのために生まれて、何がしたくて生きてるのか。
分からなくて。悲しくて。それなのにどうにかしようとは思えなくて。
ずっと燻ったまま、生きてきた。
そんな時。出会ったんだ。
パラダイス・ファンタジアに。
お世辞にも、良ゲーとは言えなかった。ましてや神ゲーなどでもない。
だけど、どこか心惹かれた。
クソゲーとか何とか言われてたし、俺もまあ概ねそんな評価はした。
だけど好きだったんだ。
なんでかは分からない。
ただ、そこに居る人達が、キャラ達が、みんな一生懸命なのが羨ましかった。
もちろん、作り物の世界にそんな感情抱く方がおかしいとは思う。作り話の中のキャラに感情移入したり、作り物の世界を好きになるなんて子供じみてる。
それでも。
俺にとっては救いだったんだ。
ゲームの良いところは、現実の自分ではない“誰か”になれるところだ。
それは理想であったり、別人であったり。ゲームの中の自分は、現実の自分とは違う。
でも、少なくとも俺の意志でその人物は動いている。主人公になれる。そして、頑張れる。
クソゲー? 上等だ。俺にとっては神ゲーさ。クソと神の違いなんて自分が決める事だ。俺はこのゲームが──この世界が好きだった。だから苦しくても命を賭けられた。守りたかった。
だけど··················
俺には何も出来なかった。
何も。出来なかった。誰も守れなかった。
やっぱり俺は主人公にはなれないらしい。
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なんだ?
何かが······来る。
こんな何も無い暗闇なのに。
何か美しい物が来てる。
?
風だ。
青い風?
なんだ?
世界が············遠く過ぎ去って··················
「───ス──」
······。
「──ルス──」
············。
「──イルス!」
······?
「ねえっ! イルスってば!!」
!!!!!
──ガバッ──
「っはあ!!」
世界が変わった。暗闇の無が消えた。
見知らぬ天井、すすけた壁、汚い床。
どこか知らない部屋の中の光景だ。
いや、見覚えがある。
「はあっ、はあっ、こ、ここは?」
「な~に~? もしかして悪夢でも見てたの?
ぷぷぷっ、いつも馬鹿なのに臆病ね」
「え?」
あれ。この声は······。
ゆっくり自分の首を動かした。ここは俺の部屋だ。いや、イルスのあの部屋だ。
そして、俺の視界には────
「もう、男なんだからビビってないで早く起きてよ。あたし、お腹減っちゃった」
「────キエラ?」
「うん?」
コロッと不思議そうに首を傾げる少女──それは間違いなくキエラだ。
「どうしたの?」
「キエ······ラ?」
「な、なに? あんましマジマジと見ないでよ、あんたに見つめられると不安になるわ」
キエラは──確かにあの時──みんな、あいつに──でも、この声、この子は──
「キエラ······だよな?」
「はあ? もう、寝ぼけてんの? まーた昨日夜更かししたんでしょ。あんた一人ポーカーやりすぎなのよ。ほら、今日はまた町に食糧獲りに行くんだから、早く起きて──って、イルス、聞いてる?」
「············」
「ちょ、ちょっと?! な、なに泣いてんの?!」
泣いてる? ああ、俺、泣いてんのか。
そんな事はどうでもいい。
「キエラっ······」
「えっ?」
──ガバッ──
「!?!!?!! ちょっ──」
「キエラああああ!! 良かった!! 良かった!! 無事だったんだな!! 本当にっ······良かったあああ!! キエラああああ!!」
「イ、イルス?!」
俺はキエラの胸の中で泣き叫んだ。力一杯に抱き締めて泣いた。
なんでキエラが居るんだろう。
なんでこの部屋に居るんだろう。
俺、なんで生きてるんだろう。
もう感情がごちゃごちゃだ。
でも、もう少しだけこのままで··················
お疲れ様です。次話に続きます。




