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54──戦いの先に······

本日3本投稿予定です。

 


 ローナのシェルターを解除して、キエラの持っていた回復薬オーリペアで手当てする。


「う······ううん······」

「あっ、ローナ! 気がついたのね!」

「キエ······ラ······」

「大丈夫か?」

「イルス······」


 ぼやけた瞳をパチパチと瞬かせ、ローナがゆっくりと起き上がる。


「私は······カミラに······カミラは?」

「······カミラは倒した。心配ない。体は大丈夫か?」

「うん。体力も魔力も少ないけどなんとか」


 そう言って立ち上がるローナだったが、ヨロヨロと足元がおぼつかない。

 キエラがすぐに寄り添って支える。


「ローナ、大丈夫?」

「ありがとう、キエラ」

「あたしだって分かるの?」

「うん」



 すぐ近くに大きな一本木があったので、その木陰でローナを休ませる事にした。


「ありがとう。助かった」

「礼を言うのは俺さ。ありがとな、助けてくれて。それに、ごめんな。戻るのが遅くなって」


 ローナはふるふると首を横に振って、そっと幹に寄りかかった。


「カミラの力が変だった。あんな邪悪な力は感じた事ない。私の中の力とも違う。もっと歪んでいて、もっと恐ろしかった」

「······だな」



崩壊の力(アンニアル)』。


 それが全ての元凶だ。


 それのせいでこの世界は滅茶苦茶になった。


 そして、誰かがその力をカミラ達三人に授けたんだ。そのせいで皆おかしくなった。


 誰かは分からない。

 でも誰か居る。


 不気味な悪意を持った何者かがこの世界のどこかに。そして、今も俺らを見てる。





『おーーいー!!』



「うん?」


 どこからともなく、誰かの呼ぶ声がした。


 木陰から出て空を見上げてみると、鈍色の雲空の下を三人の人影が飛んでいた。



「あっ! 居た! レグルスさんだ! おーいっ!」


「メル?」


 カーリーにレンも居る。三ヒロインが揃ってやってきた。



 三人が降り立ち、駆け寄ってくる。

 みんなボロボロで、綺麗な制服も泥だらけ血だらけ、破れかけだ。


「まさかレグルスさんが居るなんて」

「レグルス、あんた大丈夫なの?!」

「凄い出血ですが······」

「あ。あ、ああ、大丈夫だ」


 そう言えば俺も満身創痍だったんだ。

 一応、俺もオーリペアを使ったから応急処置は済んでるが、かなりのダメージだったんだ。


 急に疲労感が来てしまった。


「う······」


 途端に眩暈を覚え、その場に跪いてしまう。

 三人がすぐに寄り添ってくれた。


「レグルスさん、しっかり!」

「お、俺は大丈夫だ。それより、三人ともどうしてここへ?」

「こっちの方で凄い化け物が暴れてるって町の人達から聞いたんだよ」

「それで、誰かが戦ってるみたいだって聞いたから見に来たんです」

「そうか······」


 三人ともひどい有り様だ。あれだけの大群とそれぞれ戦って来たんだ。無傷と言う訳にもいかないのは当然だろう。


「そうだ、アンノーンは?」


 町にも侵入してたあいつらはどうなったんだ?


 俺が尋ねると、カーリーがニッと歯を見せて笑った。


「大丈夫! あたいらがみんなやっつけたさ!」

「マジで? あんな大群だったのに?」

「ふっ! あたい達は最強さ! まあ、流石にちょこっと疲れたけどね」

「ちょこっとどころではなく、皆ボロボロです」


 レンが苦笑する。確かに、皆ボロボロだ。俺だけじゃなくて、この三人ももう戦闘不能だろう。


「あれ? レグルスさん。木陰に誰か居るみたいだけど······あっ! お姉ちゃん?!」


 カーリーから事情を聞いてる途中にメルがローナに気づいて走り出した。


「お姉ちゃーん!」


 そして、座り込む姉の胸の中へと飛び込んだ。


「はは、メルはお姉ちゃん子だな」

「ローナも居たんだね」

「レグルスさん。ローナさんとお知り合いだったんですか?」

「ん? ああ、まあな」


 メルはボロボロのローナの姿に気づいて泣きそうな顔をしていた。


「お姉ちゃん! どうしたのこの怪我?! も、もしかして、さっきの怪物に?!」

「大丈夫。それよりメル。あなたの怪我の方が心配。大丈夫なの?」

「あたしは大丈夫だよ! 本当に大丈夫なの?

お姉ちゃん、本当に?」

「大丈夫よ」


 不安を拭えないメルに、キエラが優しく声をかけた。


「あ、貴女は確か、キーラさん?」

「ええ。ローナなら平気よ。さっき手当てもしたし、しばらく休めば大丈夫だから」

「良かった~。あっ、もしかしてキーラさんがお姉ちゃんの手当てを?」

「あたしとイ······レグルスでね」

「そうだったんだ。あの、キーラさん、レグルスさんっ! 本当にありがとうございました!」


 キエラに向かってペコペコ、俺の方に振り向いてペコペコするメルの小動物的な一生懸命さに思わず和んだ。


「どういたしまして」





 みんな大分やられたけど。無事だ。無事じゃないかもしれないけど、生きてる。


 だが、脅威が完全に去った訳じゃない。根本的な事が何一つ解決していない。


 今ある最大の手掛かり。『崩壊の力』をカミラ達に授けた謎の人物。恐らく、元凶。


 そいつを見つければ──




「······なあ、カーリー、レン」

「ん?」

「なんでしょう?」




 もうこんな世界はたくさんだ。


 これ以上、誰かが傷ついたり、誰かが泣いたり、誰かが死ぬのなんて見たくない。



 だってここはパラダイス(ヘンテコだけど)・ファンタジア(みんな幸せな世界)なんだ。こんな殺伐とした殺しあいがあっていい訳ないんだ。




 この負の連鎖を止めてやる。その為には今残っている皆との協力が必要だ。



 だから──






「······二人とも。落ち着いて聞いて欲しい事がある」

「? どうしたんだい、改まって」

「?」

「実は······俺は───」



 ──ヒュオッ──



 ──ザンッ──



 ····································



「······え························?」




 目の前に──



 レンの驚愕の表情があった。


 その周りを、赤いルビーの粒のような血が舞っていた。



 レンの白い制服がたちまちの内に赤く染まっていく。



 その腹部を、漆黒の剣が貫いていた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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