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53──カミラの最期

 


「ガアアアアアッ! イルスゥー! ドコダアアッ!」



 さっきの衝撃でカミラも吹き飛び、機雷に当たったのだろう。身体のあちこちからどす黒い血を吹き出しており、目玉の幾つかが潰れ、出血していた。そのせいでか、カミラはまだ俺らの事を見つけられてないようだった。


 翼も片方がひどく破損していいる。キャノンでのダメージだろう。



 ここまでは互角······いや。俺もさっきの機雷でかなりの手傷を負った。元々カミラによって貧血気味にされたところへの出血は大きい。

 そう考えると、崩壊の力によって体力と魔力が尽きる事のないカミラの方が圧倒的に有利か。



「キエラ、この勝負長引かせる訳にはいかなくなったぞ」

「う、うん。でも、どうする? 今のキャノンであたし達の魔力は半分くらい減っちゃったし」

「············もう一つだけ切り札がある」

「え?」

「使いたくはなかったんだが、こうなるかもしれないと思って用意してあったんだ。シュユとペールを倒した後、ローナとカミラが敵になる事は想定していた。ローナは幸い敵対していなかったが、カミラは予想通り敵になっていた」




 カミラを倒す方法は四天王の中でも難しくはない。


 全四天王を強さの格付けすると、僅差ではあるものの、ローナが最強だと言える。その理由は弱点らしい弱点が無いからだ。


 一方のカミラは、戦闘力だけならローナにも負けないほどなのだが、弱点が多いのだ。吸血鬼という設定だから、太陽の光に弱く、ニンニクが苦手で、その他魔除けのアイテム全般に弱い。


 もちろん、銀にも。



 俺はスイッチの一つを押し、光輝く銀のインゴッドを出した。


 キエラが驚く。


「これは?」

「各地のインフラ整備やアンノーン討伐の合間に、ラッキータウンでたまたま見つけたんだ。これを矢の形にしてくれ」

「えっ!? そ、それって······」

「······他に方法がない」



 このままでは俺らが殺されるのは時間の問題だ。


 やるしかない。



「弱点の心臓は外すように撃つが、正直相当のダメージだろう。だが······やるしかない」

「······分かった」


 キエラがインゴッドに手をかざす。


 インゴッドはたちまち変形し、美しく輝く1本の矢へと生まれ変わった。



「······行くぞ」

「うん」




 機体を加速させ、カミラへ一気に接近する。



「!? ソコカアアアアアアアア!」


 気配を察知したカミラからの迎撃の赤雷が飛んでくる。それを躱す。躱して深く潜り込む。矢の射程まで。近くまで迫る。


「アアアアッモウッ!! 鬱陶シインダヨッ!」


 カミラが異形の触手を振りかざす。


 それを掻い潜り、がら空きになった懐へと滑り込んだ。


 ウルトラハンドを出して矢を握る。




「カミラっ············これで目を覚ませえええ!」


 ハンドを振りかぶる。矢を放つ。


 銀色の一閃は不思議なくらいに輝いて、影立ち込める霧の中を飛び、真っ直ぐにカミラの腹部へと刺さった。


「──ガッ???」


 ピタリとカミラの動きが止まる。


 嵐がいきなり止んだかのように、間近を飛び交っていた攻撃もフッと消え、静かな影だけが漂っていた。


「··················グアアアアアアアアアッ!!?」


 その一瞬の静寂を切り裂いてカミラが絶叫する。崩壊の力の黒い影が狂ったように渦巻き、カミラの暴れる巨体が突風を巻き起こす。


「くっ! キエラ、しっかり掴まれ!」

「もう慣れっこよ!」


 再び暴風によって吹き飛ばされる俺達。


「アアアアアアアアッ! ウッ、アアアアッ!! ガアアアアアッ! アグアアアッ!!」


 空を震わせるカミラの叫びを聞いていると、こっちの胸まで引き裂かれそうになる。


 カミラから少し離れた所で機体制御し、苦し気に身をよじる彼女を見守る。



「カミラ······」


「グオオオオォッ············ヨ、ヨクモ、ヨクモ、イルスッ! ユ、許サナイッ······!」



 腹部から大量の血と、魔力のこもった影を放出させながらカミラが憎悪の情を漲らせてこちらへ近づいてくる。



「コ、殺ス! オ前ラ二人トモ、殺スッ······」


 ボタボタと血を垂れ流すカミラ。それらの血は大地に吸われて二度と彼女の元へ戻ろうとはしなかった。


「止めろカミラ。もう勝負はついた。降参してくれ。急所は外したから手当てすれば間に合うはずだ」

「ナンダト?! フ、フザケルナッ! オ前二ナンカ命令サレタクナイ!」


 カミラの目玉が狂ったようにグルグルと焦点を回転させる。


「私ハ強インダ! 私ハ凄イノ! オ、オ前ラナンカニ負ケル訳ッ······!」

「カミラ······」

「コ、コウナッタラ、私ノ血ノ力ヲ解放シテオ前ラヲッ!!」

「!!? 止めろ! その身体でそんな事したらお前はっ······!!」

「ウルサーイッ!!」


 影が色濃く立ち込め、カミラへと吸収されていく。


 あのおぞましい力がカミラの肉体に注がれていくのを本能的に感じた。


「殺ス! 殺ス! ミンナ、ミンナ大嫌イダッ!! ドウシテ私ノ言ウ事ヲ聞イテクレナイノッ?! ドウシテ私ト一緒ニ居テクレナイノ?!」

「お前······」


 カミラの感情の()()が外れている。


「ミンナ、ミンナ嫌イダアアアアッ!!」

「っ!? やめろっ、カミっ──」


 ──バリバリバリバリッ!!──



「!!!?」



 カミラの悲痛な叫び。


 それと同時に、彼女の全身を紅の稲光が駈けていき、巨体が空中で引き裂かれた。



「カミっ······」

「カミラあぁ!!」


「············ゴポッ··················」



 肉片が、血飛沫が、無情に大地へと落ちていく。


 大地を低く唸らせて、巨体が肉塊として積もる。


「カミラ!!」


 その血肉の塊へ操縦桿をいっぱいに倒す。


 UFOを地面にぶつけるように着地し、急いで飛び出して、カミラの()()()()()()へ駆け寄った。



「カミラっ! カミラ! おいっ!」



 むせ返るような甘い血の香りに嘔吐感が生じる。辺り一面血の海と化しており、その真ん中に孤島が浮かぶようにカミラの頭部があるのだ。



 血溜まりを跳ねさせ、駆け寄る。



「カミラ! しっかりしろ!」


 そんな事言って何になる?


 分かってる。分かってるさ。

 どう見たって············もう手遅れだ。


 恐らく············開いた傷口に暴走した自身の力が逆流して自爆してしまったのだろう。


 崩壊の力によって凄まじい威力になったカミラの技だ。全身がズタズタのはずだ。



 ──シュウ、シュウ、シュウ······──


「っ······これは······」


 カミラの肉片や血が黒い灰のようになってボロボロになっていく。


 シュユとペールが死んだ時と同じだ。


 体の崩壊が始まっている。



「ヤ······ヤダァ······」


 飛び出掛けた目玉がブルブルと震える。


「痛イ······痛イヨウ······死ヌ、ノ? 私······」

「カミラ······」

「ウ······ウゥ······ソン、ナ······」


 血の涙が溢れ返った。


「ヤダッ······ヤダヤダヤダアッ! ソンナノ嫌ァ! 私、私ハ、ヤダァ! 死ニタクナイ! 死ニタクナンカナイヨォ!!」


 もう止めてくれ。


 神様が居るのなら、頼むからこれ以上······こんな悲しみをこの世界に落とさないでくれ。


「ヤダ······怖イヨ······ヤダァ······ヤ······ダ············」



 ──サラサラサラ······──



 涙一滴すら残らず。


 カミラは跡形も無く消えた。










『ふん! 仕方ないから今日は我が一緒に食事をしてやろう。光栄に思え』

『ええい、止めろ! 外には出たくない! 日焼けするだろう! 何? 日焼け止めクリーム? ほう、そんな物があるのか。どれ······」

『全く! 貴様は我の眷属なのだから呼んだらさっさと来い! じゃないと······心配になるでしょ······ばか·····』

『帰るの? やだぁー! 今日は私と一緒に居てよ! だって······一人で眠るのは寂しいもん······』










「······なんでだろうな」



 なんで毎回、死ぬ度に思い出すのかな。楽しかった思い出を。



 なんでこんなに苦しまなきゃいけないんだろう。



「イルス······」

「······ローナの手当てをしてやろう」



 心配そうに付き添うキエラを連れてUFOに乗り込む。



 空は曇り空のままだった。



お疲れ様です。次話に続きます。

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