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52──死闘

 

「墜チロオ! コノ雑魚ドモガアアアッ!!」


 ──ズダンッ! ズダンッ! ズダダンッ!──


 紅の稲妻が何度も機体を掠める。その度に肌がヒリヒリと麻痺し、機体が細かく震える。


 一発でも当たったらひとたまりもない。

 背中がベットリとした汗に濡れる。


「くっ! あんだけ撃てばすぐ貧血になるはずだが、それまでがキツイぜ!」

「どうするの?! イルス!」

「場合によりけりだが、まずは貧血を待つ!

そして動きが鈍ったところで一気に決める!」


 今現在、俺の武装はウルトラハンド三つと、攻撃特化ウルトラハンド一つ、岩バズーカ六つと切り札のマジックキャノン。キャノンはペール戦で使用した物より小型で火力も低いが、体力を温存して発射出来るように改造してある。


 そして、()()()()()()()


 これらを駆使して攻める。

 幸い、カミラの戦闘スタイルは力によるゴリ押し。土巨人のようなトリッキーな奇襲さえ警戒していれば問題無いだろう。


 問題は、貧血になるまでは防戦一方を与儀なくされると言う事。



「今はあいつが力尽きるのを待つ! それまでは逃げに徹するぞ!」

「オッケー! 楯とか作っておく?!」

「ああ、頼む!」


 怒鳴り会うように慌ただしく作戦を練り、カミラの追撃を避け続ける。


「オノレエエェ! チョコマカトオオッ!」


 毛が逆立つ程の魔力の集約する気配がよぎった。


「逃がさんぞ! 『クライム・クロイツ』!」



 周囲の影が凄まじい速さで流動し、それが急激な変化を始める。


「なんだ?!」


 濃い影が辺りにいくつも浮遊し、その内の一つが目の前に近づいた。


 機体が当たるか当たらないかの距離。

 そう認識した次の瞬間。


 ──バリンッ!──


「うわっ?!」

「きゃあっ?!」


 ガラスが割れるような音と共に、影が膨張して十字に広がる。


 それはナイフのように鋭く、機体の一部が切断された。



「なんだこりゃあ?!」


 そして、他の影も浮遊して漂いながら、俺らが近づくと破裂し、十字の刃を四方に突き出した。


「くっ!! 刃物の空中機雷って訳か!」


 これは躱しにくい。爆発じゃない分、範囲は小さいが、殺傷能力のあるリーチが長い。運が悪ければ一撃で首を飛ばされるか串刺しにされるかだ。


「死ネエエエエッ!」


 さらには後ろから猛追してくるカミラの攻撃。とてもじゃないが逃げきれない。



 仕方がない。正面から戦おう。


「やるしかねえ!」


 機体を反転させ、今度はこっちからカミラに突進する。


 例の機雷はカミラの周囲には浮遊していない。近付けばあいつの攻撃の射程圏内だが自由には動ける。


「ナニッ?!」

「食らえ! ガトリングショット!」


 ──ズドドドドドドドッ!!──


「グアッ!?」


 両翼を折り重ねてガードを固くするカミラ。

 自分で自分の視界を塞いでいる。

 この隙は逃がさん。


「いくぞっ! メタルナックルハーンド!


 特別鉄製ウルトラハンドを振りかぶり、全速力でカミラの懐に飛び込む。


「愛の鉄拳制裁!」


 機体のスピードを乗せた重い一撃を、がら空きの胴体に叩き込む。


 ──ドオッ!──


「グゲエエッ?!」


 カエルが潰されたような呻き声を上げてカミラの巨体が大きく揺らぐ。


 もう一撃!


「ボディブロー!」


 ──ズドッ──


「グガアッ!!」


 大きく息を吐き出し、目玉だらけの頭部をたまらず下げるカミラ。


「許せよ! ヘビーアッパー!!」


 ──バコォンッ──


 顎と思われる部位に駄目出しの一発。かなりの手応えだ。


「グ、ガアァッ!?」


 バサッと突風を起こしながらカミラが一気に距離を開ける。


「まだまだ! 食らえ! ガトリングショット!」


 今持っているありったけの弾を発射する。

 先程の攻防で警戒してだろう。今度はガードせずに直撃に甘んじている。


「グッ······!! アアアッ! モウ、ヤダアアッ!」


 カミラが空に向かって吠える。

 獰猛な殺気が周囲を引き裂くようにして、赤い稲妻が瞬く。

 まるで、黒い荒野に血の地割れが走るかのように、この世の物とは思えない光景が衝撃となって俺らを襲った。


「うおっ!!」

「うっ······!」


「ヨクモヨクモヨクモヨクモオオオ! イルスッ! オ前ナンカ······オ前ナンカ──」


「っ······!?」


 骨の髄まで震わせるような怒り。



「オ前ナンカ嫌イダアアアアアアーッ!!」



 ──バリバリバリバリバリッ!!──


「ぐわあああっ?!」

「きゃあああああああっ!!」



 カミラの怒りの叫びと共に放たれる血の雷撃は全方向を無差別に攻撃した。



 ──ズガアッ!──


「がっ······!?」

「はぐっ······!」


 全身を凄まじい衝撃が襲った。


 被弾したのか?



 飛びかける意識をなんとか保ちながら、反射的に急バックしてその場から離脱する。



 巨大な翼が正面ではためくのが視界に入った。



「モウ許サナイッ! イルスナンカ、イルスナンカ······死ンジャエエエーッ!!!」

「くっ!!」


 攻撃発動の直前に思考が元に戻った。


 カミラに強力な力が集約されているのを感じる。あれだけ自分の血を消費しているのにも関わらず、まだこんな力を······。


「んっ?!」


 いや、違う!



 よく見ると、細かい血の滴が周辺からカミラに向かって集まっている。


「まさかっ!? 一度使った血を回収してる?」

「ソノ通リダッ! 私ノ力ハ尽キナイ! 私ハ無敵ダッ! ダカラ、オ前ナンカ死ネエエエ!!」

「くそっ!回避っ······」


 駄目だ。間に合わない。


 どんな技を撃つ気かは知らないが、これまでの技の威力からして防御も無理だろう。


 ならば、こちらも大火力で迎え撃つ。



「キエラ! お前も魔力貸してくれ!」

「!! 分かった!」


 キエラと共にトリガーレバーを握る。

 マジックキャノンの砲身が機体中央部から飛び出す。



「死ネエエエ!! 『デス・クリムゾン』!!」



 世界が一瞬、暗転して無音になる。


 そして次の瞬間に巨大な緋色の大剣が出現し、唸りを上げてこちらへ飛んできた。


 カミラ本体よりも巨大なその剣に俺も照準を合わせる。



「行くぞキエラ!」

「っ!!」


 俺達は二人で引き金を引いた。



 ──ズドオオオンッ!!──



 耳をつんざく程の爆音と共にキャノンが発射される。


 キエラと二人分の魔力を注ぎ込んだキャノンだ。威力は想像以上だ。



 目前に迫っていた死の一撃に閃光が衝突し、激しい爆発と衝撃波が巻き起こった。



「ワアアアアアアッ!??」

「ぐわああああああっ?!」

「きゃああああっ!!?」


 世界がグルグルと回る。機体が水平を保ってない。爆破で宙を舞っているんだ。


「くっ! キエラ! 振り落とされるなよ!」


 レバー、ペダル、操縦桿をフルに操作し、機体の制御に全神経を集中させる。



 激しい揺れも、体が放り出されそうな遠心力も、徐々に収まっていく。



「よしっ、なんとかなったか!」

「う、うぅ、目が回る······」


 後は位置確認をしてカミラを目視出来れば──


「!!」



 カミラを探したその時。



 目の前に、影の機雷が浮いているのが見えた。



「しまっ──」



 ──バリンッ!──



「がっ?!!」

「イ、イルスっ!!」


 鮮血が目の前で踊り、操縦桿やレバーを赤く汚した。



「ぐっ······があああぁっ!」

「イルスっ! しっかり! イルス!」


 キエラが俺の肩を掴んで引っ張り、代わりに操縦桿を握って動かした。


 UFOが後退する。

 今居た場所に、発動した十字刃機雷が浮いており、その一端が真っ赤な血で染まっていた。


「ぐっ、くそっ!」


 肩が焼けるように熱い。どうやらあの刃に貫かれたらしい。


 キエラがハンカチを出して傷口を圧迫する。


「イルス! 大丈夫!?」

「大丈夫ではないが、休んではいられそうにない······!」



「アアアアアッ! イルゥスゥウウーッ!!」



 薄れゆく爆煙の向こうで、蠢くカミラの姿が見える。



 まだ勝負は着いていない。


お疲れ様です。次話に続きます。

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