43──希望とは············
前回と違って中央広場にもたくさんのテントが設置されており、それらが難民キャンプだと言う事は、そこに入っている疲れはてた人々の顔を見ればすぐに分かった。
対して、その人達に手厚い支援をしているユートピアタウンの住民達は、やはりどこか希望を抱いているような感じがした。
「?」
俺の気のせいだろうか。
そうやってキャンプを眺めていた時だ。
「あっ!レグルスー!」
誰かの大きな声がした。
声に振り向いてみると、そこには元気そうに走ってくるカーリーの姿が。
良かった。あの戦闘後会ってなかったから心配だったが、無事に復帰したようだ。
「よ、久しぶり、カーリー」
「それはこっちのセリフよ! あんた、どこに居たの? ここんとこ全然見ないから心配したよ?」
「い、いや~。ちょっと野暮用で外出ててさ」
「はあっ?! 外?!」
驚きの表情をすぐにカーッと怒りに変える。
「そんなの危ないじゃないっ! どんな用があったかは知らないけど、こんな状況下なんだから一人で出ちゃ駄目よ!」
「わ、分かった。次からは気をつけるよ」
なんだかんだ言って世話焼きなんだな。
と、カーリーにたしなめられてる所へ──
「あっ! レグルスさんっ!」
「レグルスさん?」
という聞き慣れた二つの声もした。
案の定、メルとレンの二人がこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。
「はいよっ! お待たせ! あたいの得意料理、根性たっぷりドライカレーさ!」
「うまそー!」
難民キャンプの片隅。ボランティア用の休憩スペースで、カーリーの手料理を4人で囲む。
カーリー、レン、メル。まさかのメインヒロイン三人とのランチタイムとは。長生きしてみるもんだな。
「あむっ············?! う、うめえ!」
「ほんとっ?」
「ああ、マジうめえ!」
「うんっ、美味し~! カーリーちゃんは流石だねっ!」
「ええ。カーリー、腕を上げましたね」
「へへっ、フライパンと火を活かした料理ならあたいに任せな。ガツンっと来る物なら何だって作ってあげるよ」
得意そうに胸を張るカーリー。おお、大きい。
いや、器の話ね。人間としての。いや、ホント。
「うーん、やっぱお腹減った時はカーリーちゃんの料理に限るね」
「お、メルもなかなか食いしん坊だな」
「うん! 育ち盛りだもんっ」
「ふふふ。あまり調子にのってこの前みたいに動けなくならないで下さいね」
「レンちゃん! そういう事は男の人の前ではしーっ!」
「ははは」
なんだろう。
なんか随分雰囲気が良くなったような気がする。
いや、別にこの三人が仲悪かったとか、そう言う訳じゃないんだけど。
なんて言うのか、みんな少し元気を取り戻したような? そんな気がするんだよな。
あんな激戦で、三人ともこっぴどくやられたろうに、元気そうで良かった。
「うめえ。カーリー、お代わりいいか?」
「レグルスはやっぱ男の子だね。もちろん、多めに作ってあるからね」
「あたしもーっ」
「はいよっ!」
昼食を大満足の内に終え、三人と雑談しながら、さりげなく現状を探る事にした。
「少しずつだけど家とか直し始めてるみたいだな。前より家の修復が進んでるような気がする」
「避難されてきた方々も手伝って下さるので、復興スピードが早いんです。それに、実は材木などの資材を誰かが用意して下さってるようで」
どうやら俺の材料は役に立っているようだ。良かった、良かった。
「だからさ、助けてくれる人が居るんだから、くよくよしてちゃいけないって皆が気合い入れ直した訳よ。みんな根性出してるよ」
「そうか。みんな強いな」
「うんっ。あたしも優しくて強いこの町の人達の事、尊敬するなあ。でも、そんなあたし達に勇気をくれた名前も知らないその人にはもっと感謝してるの」
「どんな人だろうな」
「それが分かんないの。気がついたら資材が置いてあるから。多分、夜に運んで来てるんじゃないかな。でも、絶対良い人だよ!」
「ええ。いつかお会いしてちゃんとお礼を言いたいですね」
「だね。あたいらもアンノーンと戦わなくちゃいけないけど、一息ついたら探しに行きたいね。ふふ、どんな人かねえ」
その後もたわいない話を交わし、三人の前向きな姿勢に心底感心した。
俺なんて。嫌な事があったらすぐに塞ぎ込むタイプの人間だからな。
そのせいでつまらない人生になった男だ。
この子達は架空の人物かもしれないけど、素直に羨ましいな。
「じゃ、レグルス。また寄ってよね。次はチャーハン作るからさ!」
「そいつは楽しみだな」
「ぜひ、また来て下さいね」
「レグルスさん、またねー!」
三人と別れて、ユートピアツリーへと足を向けた。
「············みんな偉いな」
俺の人生の半分ほどにしか到達していないのに、あれだけ強い心を持っていられるんだ。
俺みたいなのが彼女達を欺いて手助けするのなんておかしいのかもしれないな。
「······はは、なんで落ち込んでるんだろうな。俺」
考えすぎかもしれないが······彼女達は俺じゃない誰かを望んでるような気がするんだ。
それこそリゲルのような素晴らしい人間が、陰ながら助けてくれている事を望んでいるんじゃないだろうか。
俺みたいな、何の取り柄もない男なんかじゃなくて。
「流石に卑屈すぎるかな······」
でも、あの希望に輝いた目には俺は映ってなかった。もっと別の誰かが居たような気がする。
彼女達だけじゃない。町の住民も。
みんな、俺ではなく、リゲルが帰ってくる事を待ってるんじゃないかな。
「······イルス?」
「ん?」
誰かに呼ばれてはたと足を止めた。
そして、ハッとした。
今の俺はレグルスなんだった。それなのにイルスと呼ばれて止まってしまった。
誰かは知らないが、俺の正体を見破った人物がすぐ後ろに居る。
「イルス、だね」
「い、いや、人違いです──」
言い訳を考えながら振り向くと、そこに立っていたのはローナだった。
お疲れ様です。次話に続きます。




