40──ローナ
「オラアア!」
鋼鉄ハンドナックルでアンノーンをぶん殴る。容赦なしのマジスイングだ。当然、ダメージは相当のはずだ。
アンノーンはギチギチと何かを擦るような音を立ててからボロボロと崩れて消えた。
「食らえ! 岩バズーカガトリング!」
──ズドドドドドドッ──
新兵器ガトリングの威力は絶大だ。
こちらに群がっていたアンノーン達は次々に押し潰され、全て土くれになって消滅した。
「よし」
ほんの数十体程度だったと言う事もあり、周囲のアンノーンは一掃出来た。
同じく、掃討作業を終えたローナがふわりと横に並んだ。
「イルス、強いね」
「ん? そうか?」
「前よりUFOとか武器の使い方上手い」
マジか。オリジナルよりこの能力使いこなせてるのか俺。
それは俺が凄いのかイルスが馬鹿なのか──なんか後者のような気がする。
「さて。あらかた片付けられたな。これでやっとゆっくり話が出来る。が、その前に。本当にまともで正気かどうか調べさせてもらうぞ」
改めてローナを観察してみる。
確かに本物だ。それに、あの訳の分からん崩壊の力とかいうクソ能力も纏ってないようだ。
正真正銘100パーセント、ローナだ。
歳はカーリー達より少し上くらいだが、妖精であるローナは幼く見える。
が、育つ所はなかなか育っている。薄紺の外套を羽織っているから分かりにくいが、なかなかのボディーをしているのを俺は知ってるぞ。
うーん。タイトスカート風のスリットから覗く足がなんとも色っぽい。
「あ、あの······」
「イルスっ、あんまし女の子の全身をジロジロ見ちゃダメっ! ローナが困ってるでしょ!」
「おっと、失敬。精査に熱が入り過ぎた」
「もう!」
とにかく。ローナは正常のようだ。少し話を聞いてみよう。
「ローナ。お前はなんでこんな所に居るんだ? お前がいるのは北の遺跡跡だろ?」
俺の知識では、ローナは北側の古代遺跡辺りを点々としている。小さな集落がいくつかあるから生活には困らないが、あえて文明から離れて町には寄り付かないのだ。
その理由はまた後ほど。
「それに、なんでお前がアンノーンと戦ってるんだ?」
「······私のお世話になってる集落もあの奇妙な怪物に襲われた」
「なに?」
ローナは静かに語りだした。
「ここ何日か。方々の集落が襲われる騒ぎが起きた。それで怪物達がどこから来るのか調べていたら、この町に着いた。つい数時間前の話」
「なるほど」
「町はもう既に壊滅してたけど、ごく僅かな住民が地下に隠れてる。その人達が逃げられるようにあの怪物を倒してた」
「そうだったのか」
生き残りが居たとは。この惨状では望み薄だと思っていたが。
「しかし、お前が人助けなんてなあ」
「? 変、かな」
「いや、そんな事はない。意外なだけだ」
「それを言うならイルスもだよね。私と一緒に戦ってくれた」
「ん? ああ、まあ、な」
確かに、俺がこうやって一緒に戦う方が意外っていうかおかしいか。
イルスとローナの関係は一口には語れない。
なぜなら、ローナがそもそも特殊な位置付けのキャラだからだ。
ローナは絶大な力を持った妖精として生まれたが、生まれた夜がたまたまブラッディムーン(この世界の不吉な夜。邪悪な魔力を含んだ月の光でマスコット達が凶暴化する)だった。
それにより、本来の強大な力とブラッディムーンの魔力が混ざってしまい、邪悪な心に支配される時があるのだ。
特に、正義の心が強いリゲルには極端に反応してしまい、力が暴走してしまい暴れる時がある。
そのせいで誰かが傷つく事を悲しんだローナは、故郷であるユートピアタウンを出て、なるべく他人と接点の無い場所を点々として生活しているのだ。
この設定は、パラファンの中では比較的重い設定であったため、ローナはファンの間でも『まともなバックボーンがある四天王』といった評価をされていた。
そんなローナの悲しい性質を、あろうことかイルスは利用してリゲルを倒そうとけしかけたりする事もあった。割りと真面目にクズなイルスが見れるのもローナルートの醍醐味だ。
しかし、イルスは馬鹿だからローナの邪悪な力なんて気にしないし、ローナもイルスのような奴と一緒に居ても力が暴走しないので、ある意味一番共生可能な組み合わせだったのだ。
だから俺らの関係は悪くない。むしろ四天王の中では一番『友達』に近い。
そんなローナの性格はと言うと、大人しくてクール。でも、冷たいとか素っ気ない訳ではなく、ただ寡黙なだけで、性根は優しくて愛に溢れている。
まあ、そこは妹に似てるんだ。
「しかし、この惨劇でも生き残った住人が居たのは幸運だ。もう出てきても大丈夫だろうし、伝えてやってくれ」
「わかった」
ローナがくるっと背を向ける。
かと思ったら、またくるりとこっちに振り向いた。
「ん?」
「············」
じ~っと俺を見るローナ。
「どした?」
「······隠れてる人達は少ないけど、みんな元気じゃない。ここから避難先のユートピアタウンにまで歩いてくのは無理。だから······」
「ああ、そうか」
俺の力が必要って訳か。
「俺だけの力じゃ無理だな。キエラ、手伝ってくれるか?」
「もちろん。イルスの役に立てるなら」
「て事だ。ローナ、少し用意するからその間にその住民達に移動の用意をさせてくれ」
「分かった」
スイーッと飛んでいくローナの背を見送り、俺もキエラと仕事にかかる事にした。
お疲れ様です。次話に続きます。




