38──惨状と戦場
本日3本投稿予定です(もしかしたら4本になるかもしれません)。
「と言う事で、ラッキータウンに向かいたいと思う」
「ラッキータウンに?」
朝。
食堂での飯を終えた俺とキエラは、今後の進展に関する会議を行っている。
今現在、この世界は混沌とした情勢の中にある。
それはユートピアタウンの現状を見れば明らかだし、ペールの証言を信じるなら、いくつもの町や集落が滅ぼされていると見ていい。
アンノーンどもの目的は不明だし、少しづつ存在が見えてきた“黒幕”の事についても謎だが、奴らが凶悪で敵対的なのは間違いない。
となれば、俺らのアジトにも脅威が迫っていると見ていい。
今の内に何らかの対策を講じておかなければ、取り返しのつかない事になりかねん。
問題なのは何をすべきかだ。
なにせ、正体不明の敵だ。どこから来てどのように攻めてくるかも分からん。分からない事だらけでこっちがどう動くべきかも見当がつかない。
かと言って手をこまねいてる訳にもいかない。
そこで、俺が思いついたのが──
「ラッキータウンに行く」
その提案にキエラが首を傾げた。
「どうしてラッキータウンに?」
「ペールの話を信じるなら、ハッピータウンは既に滅んでるし、ピースタウンも滅亡した。となれば、残っているのはユートピアタウンとラッキータウンだけだ。ユートピアタウンは一番大きな町だし、カーリー達が居るから当分は大丈夫だとは思う。まあ、ペールみたいな強敵が来なければの話だけどな」
だが、並みのアンノーンではカーリー達には歯が立たないようだし、防衛力は高いと見なしていい。
問題なのはラッキータウンだ。
ハッピータウンもピースタウンも、カーリー達のような強キャラが居ないのが陥落の原因だと見ていい。
厳密には、居たには居たんだが、その強キャラと言うのがよりによってシュユとペールだったのだ。ハッピータウンにシュユで、ピースタウンにはペールが住んでいた。
ともかく、ラッキータウンにも強キャラは一人しか居ない。長くは持たないだろう。
それに、これまでの流れだと或いはラッキータウンのあいつも······。
「俺が町でカーリーから聞いた話ではラッキータウンも相当ヤバいらしい。放っておけばハッピータウンやピースタウンの二の舞になる。みすみす見殺しには出来ん。まず偵察して、解決策を模索する。ラッキータウンが陥落したら次はユートピアタウンがやられるだろうからな。その前にラッキータウンとのパイプを繋げて両方の町の力を合わせるんだ」
「············」
「ん? どうしたキエラ」
「ううん。なんて言うか······イルス変わったね。他人の事考えたり、そんな難しい事考えるなんて」
「そ、そうか?」
しまった。つい素で話していたが、俺はどうしようもない馬鹿な野郎なんだ。
「あ、あ、えっと! ギャ~ハッハッハッ! 俺様はクソカッケエからな~! ラッキータウンで女のパンツ見まくってくるぜ~!」
「取って付けたような変わりようね······」
まあ、ともかくだ。
「早速行くか。キエラ、お前は?」
「もちろん一緒に」
「ああ、行こう」
留守番はまたダスト達に任せる事にした。
「そんじゃお前ら、あんまし食い物食いすぎんなよ~!」
「ほどほどに大人しくしてなさいよね~!」
『ホホホウヒョ~ヒョー!!』
ダスト達の声援に送られUFOを西へ向けて飛ばす。
広大な森林や平原がどこまでも続き、遠くには緩やかな稜線の山脈や、雄大な河が見える。
青空に浮かぶ白い雲が気ままに旅していき、穏やかなそよ風が頬を撫でていく。
「気持ちいいわね」
「だな」
こんな美しい世界なのに、何かが狂ってしまって、今もどこかで誰かが泣いている。
この空の、同じ空の下で。
「もうすぐラッキータウンね」
景色をボーッと眺めていたところで、キエラが言った。
前方に町らしき影が見えてきた。
「お、本当だ。思ったより早く着いたな」
「イルスのUFO速いもんね」
「ああ、この問題が片付いたら一緒にゆっくり旅行にでも行きたいな」
「え? あたしと一緒に?」
「ああ。あ、嫌か?」
「う、ううんっ。そうだね。なら、早く問題を解決しないとね」
「そうだな」
少し頬を赤らめるキエラ。
ちょっとデリカシーのない唐突な言い方だったか。一緒に旅行だなんてナンパみたいだったかなあ。
「見えてきた············あ」
「あれって······」
ラッキータウンに近づいて、その町の様子がよく見えるようになった。
ただ──
「分かってはいたが······」
やはり、予想通りと言うのか。
凄惨な光景が俺らを待っていた。
「っ! キエラ、あんまり下を見るな」
「え? あ······」
かつては、ユートピアタウンのようにお洒落な入り口であったろう大門。
そこは、今では瓦礫の山と化し、かつての繁栄と平和は見る影もない。
そんな瓦礫のあちこちに、倒れた人間が見える。
もう、動く事は永遠にない。
ましてや、元の姿を保った者すらほとんどない。
腕だけになった亡骸が、何かを求めるように、ラッキータウンの象徴であるクローバーの旗を握りしめていた。
言葉に言い表せない死臭がここまで届いた。
妖精やマスコットは消えて失くなるが、人間はその死を何時までも野ざらしにしなければならないのは、あまりにも酷い。
「これじゃあ生き残りは······」
「······ひどい」
町上空からはさらに悲惨な光景が見えた。
民家も、公共施設も、軒並み破壊されていた。
その家の壁などにベットリと血が黒ずんでいる。
死体が落ちてない場所を探す方が難しいくらいに、いくつもの“最期”が残されていた。
中でも。
若い女性が、小さな骸を抱いたまま事切れ、その胸の中の幼い手が、ぬいぐるみから手を離していない姿が目に焼き付いた。
「女子供まで皆殺しか······」
「避難出来た人も居るとは思うけど······」
なんでこんな事するんだ?
こんな事して何の得があるんだ?
ここは平和な世界なんだぞ。
誰が、何のためにこんな事するんだ。
「············」
「イルス······」
そんな風に、言い様のないグチャグチャな感情が沸いてきた時。
──ズガアアアアアアッン!!──
「!!!」
「今のは?!」
そう離れてない所から爆発音がした。
──グイッ──
「あっ、イルス!」
気がついた時には、その音のした方へ機体を向け、全速力で飛んでいた。
お疲れ様です。次話に続きます。




