35──危険な賭け
これは賭けだ。
もし失敗すれば俺らは瞬殺。しかもペールは最強の力を手に入れて無双。
もはや誰も彼女を止められなくなるだろう。
だが、どちらにせよ。このままでも誰も勝てない可能性が高い。
今ここで倒すしかない。
「キエラっ、耳貸せ!」
「えっ、あっ、ちょっと!」
キエラを少し強引に引き寄せてしまった。
「いいか? 作戦を教えるからよく聞いてくれ!」
「わ、分かったからっ! 顔、近いよっ!」
「あ、すまん」
「ナァーニヲチチクリ合ッテンスカァッ!」
──ズドドドトドッ!!──
「くっ! ここは一旦、煙幕弾!」
──ボスッ、ボォンッ──
「ヌッ?! クソッ、小賢シイッス!」
──ズドドドッ!──
ペールの顔面に向かって放った煙幕の効果はてきめんだ。
闇雲に撃ちまくっても、広範囲攻撃だから全く攻撃に晒されないなんて事には出来んが、さっきよりは大分マシになった。
この内にキエラに作戦を話す。
「キエラ、時間が無いから手短に話す! いいか? 今から俺は切り札を作る。だからお前は──」
「アアッ、モウッ! 鬱陶シイッスネ! ハリケーン!」
天を揺るがす唸り声のような風の音と共に、漆黒の巨大竜巻が巻き上がり、煙幕はたちまちの内に晴れてしまった。
「オッ、見ーツケタッ! 死ネエエェッ!」
ペールの叫びと共にまた弾幕の豪雨が始まる。
「キエラ! しっかり頼むぞっ!」
「オッケー!」
飛び交う影の中を潜り抜けながら材料を集めていく。
「くっ! 肝心の砲身だけは鉄じゃないと無理か! 仕方ない」
UFOの材料に使われている鉄製やアルミ性の金属系の部品を少しづつ解除していき、代わりに木製の部品を当てはめていく。
これで被弾したら一巻の終わりだ。
「チッ! チョコマカト! コバエッスカ!」
ペールの苛立ちが強まる。
いいぞ、その方が作戦が成功する。
「イルス! 形整えたよ!」
「ナイス!これを嵌めればっ······」
──ガシャンッ──
完成だ。
「待たせたな、ペール!」
「ン?!」
ペールの目玉が一斉にギョロリとこちらを見上げた。
その目玉たちは、俺のUFOに取り付けられた巨大砲台を凝視していた。
「イツノ間ニ? ナンスカ、ソノデカブツハ?」
「こいつこそ俺の切り札、スーパーバーストキャノンだ。イルス最高傑作の超火力兵器さ」
「ナンデスト?」
いくぜ。
「覚悟しな!」
新たに追加したトリガーレバーを握り、自分の魔力を流し込む。
身体の芯を持ってかれる程の凄まじい負荷だ。
「メガバースト、ファイヤー!!」
──ゴオオオオオオッ!!──
「ナニ?! グエエエエエ?!」
巨大な火閃が1本の巨大な槍の如くペールを貫く。
「ガアアアアッ!!」
「くっ······」
これで片がつけば······。
だが──
「うっ?!」
唐突な眩暈が俺を襲った。視界がクラッとゆれて、足が膝から崩れ落ちそうになる。
やはり、とんでもない魔力消費量だ。
「イルス!!」
「キエラっ······今だ!」
「!! うんっ!」
「グオオオッ······ヨクモ、ヨクモヤッテクレタッスネ······今ノハ効キイタッス」
とぐろを巻いていたペールが首をもたげる。
「マサカ、ソンナ切リ札ガアッタトハ。イルス、本当ニ今日ハ一味違ウッスネ。ダケド──ソノ切リ札ヲ出シタノハ間違イッスヨ」
ペールの影がのたうつ。まるで、大蛇が二匹になったかのような錯覚すら覚える。
「ウチノ能力ヲ忘レタッスカ? ソノイカシタ兵器──貰ウッス!」
影が伸び、地面に写ったUFOに食いつく。
それはキャノンの影も丸ごと食いちぎっていった。
「くっ!」
「イルスっ!」
「アッハッハッハッハッ! アリガトウッス、イルス~! コイツハ良イプレゼントッス」
俺から奪った影を取り込むペール。
そして、その頭部に影が密集していき、たちまちキャノンと同じ形へと変わる。
「コレサエアレバ、ウチハ無敵ッス! イルスノ魔力デモアノ威力ナンスカラネ。ウチガ使ッタラ凄イ事ニナルッスヨ」
もはや勝ち誇ったペールは、それまでの攻撃はせずに、巨頭をゆっくりもたげて俺らと同じ高さに目線を持ってきた。
「サ。コレデ止メッス。最後ハ自分ノ技デ死ネルンッス。良カッタスネエ」
「くっ······ちくしょうっ······!」
「イルス······!」
キエラの手が俺の袖を強く握り締めた。
「アッハッハッハッ!! ソレジャア、サヨナラ!」
シャドウキャノンの発射口が真正面で止まる。
「消エロッ、パリピドモオオ!!」
凄まじい魔力の流れがキャノンへと集約するのを肌でも感じた。
「発射アアアッ!」
──カタカタッ······──
「ン? アレ?」
キャノンは発射されなかった。
そのはず。
発射出来る訳がない。
「ドウシタッス! エネルギーガ足リナイッスカ!?」
さらに強まる魔力反応。
「キエラ! しっかり掴まってろ!!」
もう限界だろう。
持てる最後の力を振り絞って機体をバックさせる。
少しでもいい、ここから離れなければ······!
「アッ?! 待ツッス! 逃ガサナイッス! クソッ、キャノン発射──」
──ガタガタガタガタッ──
──カッ──
「エッ?」
次の瞬間。
──ズドオオオオオオオオオオンンッッ!!──
「ぐわあああっ!?」
「きゃああああああっ!!」
目も眩むような大爆発が起こり、その衝撃波によって俺とキエラはUFOごと吹き飛ばされた。
お疲れ様です。次話に続きます。




