27──荒廃していく世界
「壊滅ってどういう意味だ?」
思わぬ回答に俺も耳を疑ったが、カーリーは苦い顔になって首を横に振った。
「そのまんまよ。ラッキータウンもピースタウンも、あんたの······ハッピータウンの時と同じようにアンノーンの攻撃を受けてる」
「············」
ハッピータウンも?
いや、仇って言ってた。
それに今までのレンやメルの反応からしても······もしや、ハッピータウンは既に──
「どちらの町も壊滅は時間の問題。あたいらはこのユートピアタウンを防衛しながら避難民を受け入れてる。だから、あちこちに難民キャンプがあるって訳」
「そう、だったのか」
パラダイスファンタジアの世界はいわば名前の通り楽園だ。
永久楽土、千年王国、ゆる~い平和。
故に、どこかが滅んだりする事なんてない。滅亡や衰退とは無縁の世界なのだ。
だが、そんな世界観は崩壊しているようだ。
「レグルス。安心して」
少し呆然としていた俺の意識は、カーリーによって引き戻された。見ると、彼女は真剣な眼差しを俺に向けていた。
「ここはあたいらの町。皆の町ユートピアさ。だから、あんたも他の人達もみんなあたいらが守るから。もう、誰も············」
ギュッと唇を噛んで俯くカーリー。
彼女のその悔しそうな顔にはいくつもの言葉が秘められているようだった。
だけど、やっぱりカーリーのこの怒りに秘められているのは──俺に対しての······
「あっ。やだ、あたいったら! ごめん、なんかいきなり熱くなってたね。頭冷やさなきゃ」
「いや。熱い心は大事だ」
「そ、そう? それは、うん。あんがと」
照れて頬をポリポリ掻くカーリー。その仕草に懐かしいものを覚える。
「はは、あんたって何だか不思議な感じがするよ」
「そうか?」
「うん。上手くは言えないんだけど······あんたとは初めて会った気がしないんだよね。あたいの女のカンがそう言ってる」
「そ、そそうか?」
そう言やあカンが冴えてる設定もあったな。俺がイルスだと言う事もバレやしないだろうか。
「そうだ。あたいは今から難民キャンプに見回りに行くんだけど、あんたも来る?」
「え?」
「ハッピータウンには当分戻れないだろうし、ここで生活するなら見ておいた方が良いでしょ? 町にはいくつか拠点があるけど、合う合わないはあると思うし。ちょうどこの近くのキャンプはハッピータウンからの避難民が多いからね。どう?」
どうするか?
出来ればもっと情報が欲しいところだし、カーリーの提案通りにしたいが、キエラと別行動してるしな。もうそろそろ落ち合う時間になる。
「それなら、俺には連れが居るんだけど、そいつと中央広場で待ち合わせしてるんだ。合流してからでも良いか?」
「連れ? もしかして一緒に逃げてきた人?」
「まあ、そんなとこだな」
キエラには口裏を合わせてもらわなきゃな。
「分かったよ。あたいはここで手伝いしながら待ってるからその連れの人と来な。あ、あんまし遅いと行っちゃうから寄り道はしないでね」
「分かった。じゃあ、一旦中央広場に戻るぜ」
「オッケー。また後でね」
俺はカーリーと一旦別れて、キエラとの待ち合わせに向かう事にした。
「············」
向かう途中、歩きながら情報の整理をしてみた。
まず、このユートピアタウンは先の隕石爆発の傷が癒えてなく、住民が協力して復興に当たっている。
さらには、町の外にはアンノーンと言う外敵が存在する。
アンノーンなる謎の敵勢力はこのユートピアタウンだけではなく、周囲の町全てを攻撃している。
そして、どの町も暮らしていくのが難しくなり、住民はこのユートピアタウンへ避難してきている。
おそらく、ハッピータウンは既に壊滅した。
今現在、この町はいくつかの難民キャンプを設置して、避難してきた他の町の住民に食事や生活空間を提供している。
こんなとこか。
少しずつだが、この世界の情勢が見えてきた。
そこで、浮上してきた大きな謎がある。
アンノーンだ。
正に未知の存在。謎の勢力。
こいつらはこの世界を滅茶苦茶に破壊している。
何が目的でそんな事をするのかは分からないが、敵であるのは間違いない。
それに、どうやら強大な敵のようだ。
確かに、パラダイスファンタジアには軍隊と言う物は存在せず、武装勢力と言った物も無いため、外敵への戦力は乏しい。
だが、そうであっても町を同時に複数襲って、おまけにこの短期間で滅ぼしてしまうというのは並の連中ではない。
このまま放っておいたら、このユートピアタウンも壊滅する事になるだろう。
「············俺はどうするべきなんだ?」
いや、ひでえ話ではあるんだが、俺は一応悪役だしなあ。
皆の平和を守るため戦うぞ! とはならんよな。おかしいよな。いや、おかしくはないのか? 倫理的には。
だけど義理が無いっつうか······。
『皆で助け合わないと。ですね』
『うんっ! また沢山作るね!』
『あんたも他の人達もみんなあたいらが守るから』
いや! めっちゃ義理あんじゃん!
やべえ、自分が悪役になってるからって倫理観まで捨てかけていたかもしんねえ。危ない。
だが、現実問題として俺はイルスな訳だし、あの三人はもちろんの事、この町の住人全てから嫌われてるだろうし。
一緒に戦うと言うのは難しいんじゃないだろうか。
「どうすっかなあ······」
そんな風に自身の進退を考えてる時だった。
──カンッカンッカンッカンッ!──
「ん?」
突然、鐘を叩く音が町のあちこちから、けたたましく鳴り響いた。
お疲れ様です。次話に続きます。




