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24──推しとのイベント

本日6本投稿予定です。

 

 メル・ロンナ。



 先ほどのレンと同じく、俺が倒したメインヒロイン三人衆の一人。


 そして、俺の推しの一人でもある。



「あっ! ビン割れてなかった! 良かった~」


 困っていた顔をパッと明るく花咲かせるその表情豊かな姿は、俺の記憶の彼女そのままだ。




 メルの種族は純粋な人間ではない。妖精とのハーフだ。


 妖精は人間と比べて、成長しても体があまり大きくならず、力もあまり無いが魔力は豊富だ。


 メルは魔法の成績が非常に優秀だし、その他の教科も成績が良いので、飛び級でパラダイス学園に入学している。



 とても優しくて愛に満ちた子で、感情豊かで表情もコロコロと弾むように変わる。

 イルス()に対しても寛大で、敵ではあっても敵対はしなかった。


 よくメルが慰めてくれるイベントもあった。


 そう。例えば──




『くそ~! ちくしょよ~。バレンタインなのに俺にはチョコが()~。チョコッとでもいいから食いて~。辛いぜぇ·········』

『あ、イルス! 居たいた!』

『あん? んだよメル。もう俺はボコされたんだぜ~? なんか用かよ』

『はいっ、これ!』

『?!! こ、こりゃあ、チョコじゃねえかー!』

『沢山作ったんだ! イルスにもあげるね!』

『い、良いのか?!』

『うん! 美味しく召し上がれっ』

『く~! ガキんちょ~! サンキュ~!』

『泣いて食べなくてもいいのに~』

『うめえ! うめえ! おい、メル』

『なあに?』

『俺にチョコくれたって事は俺の事好きなんだよな? そうだよな?』

『うーん。意地悪しないなら、嫌いじゃないよ』

『ヒャッハーッ! ならパンツ見せろー!!』

『ガスタパーンチ!!』

『グゲエ?! 欲しいのはパンチじゃなくてパンチラだ~!!』




 まあ。何と言うか。



 あんなイルス(馬鹿)の事を嫌いにはならないって時点で聖人なのは間違いない。



 とにかく可愛い奴なんだ。見た目は言うまでもないが、その性格は愛くるしい天使のようなんだ。




「あ、人参折れちゃった······ごめんね、折れてもちゃんと美味しく食べるからね」



 そんな愛され妹聖人妖精ミックスのメルが、地面に転がる食品をいそいそと袋に詰め直している。


 当然、それを黙って見てる訳にはいかないよな。



「あっ! トマト潰れちゃってる! どうしよう······これじゃあサラダには出来ないし······」

「ミートソースにすると美味いと思うぞ」

「え?」


 そう声を掛けてみると、メルの(つぶら)な瞳が俺を見上げた。目がもっと丸くなる。


「あれ? 貴方は?」

「手伝うよ。この袋に入れれば良いのか?」

「あ、うん」



 ふふ。


 母ちゃんの買い物付き合って身につけた袋詰めスキルを活かす時がきたな。



「随分多いな。これを詰めるのは苦労したろ」

「うん。あの、貴方は?」


 おっと。クールに決めすぎたせいでメルが戸惑ってるな。名乗っておこう。


「俺はレグルス。今日この町に来た」

「あ、そうなんだ。お兄さん外から来たんだ」

「ああ、ついさっきレン──って言う人に会って食糧を分けてもらったばかりさ」

「レンちゃんに? そっかー。外から来たって事は······お兄さんももしかして避難民?」

「ん? 避難民?」

「うん。だって──あっ! いっけない! あたし、名前言ってなかった!」


 あたふたと姿勢を整え、その場で正座して頭を下げるメル。


「あたし、メルって言います。メル・ロンナです」

「メルって言うのか。よろしく。良い名前だな」

「えっ? 本当?」


 キラキラと目を輝かせるメル。


「えへへ。そんな風に褒められたの初めて。ありがとね、お兄さん! とっても嬉しい!」

「いえいえ」


 うーん。


 やっぱ可愛いなあ。



 ぴょこぴょこと子犬のように肩を揺らすメル。


「お兄さんの名前も凄く可愛いよっ」

「はは、可愛いのかー」

「あっ、違った! カッコいいよっ」


 はにかむ姿もグッド。



 ああ。


 あんな事(完封して縛り上げて、おまけに知らなかったとは言え曇らせライン越え発言した事)した罪悪感が半端ないって!



「? どうかしたの? レグルスさん。悲しそうな顔してるけど」

「いや。ただ、なんか君には元気でいて欲しいなって思ったんだ」

「? よくは分かんないけど、ありがとね。レグルスさんも疲れてるでしょ? この町で元気になってね!」

「ああ」



 ふう。


 推しエネルギーは十分摂取出来た。やはりメルは良い。癒しと言うか、こんな妹居たら完璧だったな。



 妹············そういや、メルは──



「わあっ、ありがとレグルスさん。ほら、落ちちゃった食べ物が綺麗に纏まって袋に詰められたよ!」

「ん? ああ、そうだな」


 考え事をしながら詰めていたら、回収作業はもう終わっていた。


「凄いね! やっぱり大人はこういうの簡単に出来るんだねー。あたしなんか、こういうの苦手で。不恰好な袋になっちゃってたから、それでさっきみたいに落としちゃったの」

「そうか。なら、今度は大丈夫だな」

「うん! レグルスさんのおかげだよ。あ、そうだ、早く運ばないと」


 こんもりと大きくなった袋を再び持ち上げようとする小さな体に、思わずストップをかけた。


「いやいや、俺が運ぶよ」

「え? ううん、いいよ。だってこの袋重いもん」

「なら、なおさら俺がやるよ」

「でも······」

「困ってる時に助け合う。それがこの町の信条だろ?」

「あ······うん! そうだったね。レグルスさん、来たばかりなのに凄い! もうこの町の事分かってるね」


 嬉しそうに笑うメル。


「でも、それなら何かお礼しなくちゃ。あ、そうだっ。この荷物をあっちの西通りに運ぶんだけど、そこの炊き出しで美味しいパンケーキを焼くね!」

「おお、なら張り切らなくちゃな」




 俺の荷物はベンチの日陰に置いとくか。



 少し余計な寄り道してはいるが──やっぱり推しキャラとのイベントを断る手はない。




「じゃあ、よろしくお願いします!レグルスさん」


お疲れ様です。次話に続きます。

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