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23──助け合い

 


「そうですか。食糧が不足していて······」



 噴水の前のベンチ。そこに俺とレンの二人は並んで腰掛けている。


「マスコット達の保護までされているなんて、とても素晴らしいですね」

「いや~。そんな事ないよ」

「いえ。こんな状況だからこそ助け合いの精神が大切ですから。それを実際に実践しているのは尊敬します」


 レンの和かな微笑みで言われると、ついつい嬉しい気持ちになってしまう。


 この微笑み。優しい眼差し。生で見るともっと綺麗なんだなあ。





 俺はレンとの自己紹介を終えた後、ここに来た目的を果たすため、食糧の配布が無いかと尋ねてみた。もちろん、ダスト達のための食糧だというのは適当にぼかして事情を話した。


 レンの返答は、食糧自体はちゃんとあるという事であった。


 どうやら、食糧の無料配布は滞りなく行われているらしいが、生憎(あいにく)とそれを大々的にやるだけの人員の余裕が無いと言う。


 今現在、食糧や日用品の配布は町の何ヵ所かに分散してる拠点キャンプにて行われてるそうだ。あちこちで復興作業中なので、効率良く配給を行うために分散してるらしい。





「ちょうど近くに拠点キャンプが一つあるんです。よかったらご案内致します」

「え、いいのか?」

「はい、もちろんです。お力になれるなら光栄です。やっぱり、皆で助け合わないと。ですね」



 最後の方に一瞬だけフッと表情を曇らせたレン。


 その理由(わけ)は──やっぱり分かる。



「では、案内しますね」

「ありがとう。よろしく頼むよ」




 広場を出てすぐにある東京タワーもどき、正式名称は『ユートピアツリー』。


 東京タワーなのか、スカイツリーなのか、どっちだよ!! とか言うツッコミもあったな。



 ともかく、そのスカイタワーに入る。違った、ユートピアツリーに入る。


 中は区役所というよりは教会みたいな雰囲気で、石造りの壁や床は少しひんやりしている。結構広くて、かなりの人数が入れそうだ。



「中央区はここで配給しています。ここは町のシンボルでもあるのですが、同時に町の方針などを決定する区役所的な場所でもあるんですよ」

「なるほど」


 知ってるー。何度も来たぞ。ゲームで。



 レンの後をついていくと、大きな窓の下の明るい場所に簡易的なテントが張られ、沢山の住人が集まっていた。

 パンやおにぎりなどを食べたり、大きな袋を抱えている者など。どうやらここが配給場所らしい。



「あそこで貰えるんだな?」

「はい。私から窓口で事情を話しましょう」

「それは助かる。ぜひ頼む」



 レンが受付らしき机に座る老人に短く説明すると、老人が俺を見て悲しい顔をした。


「そうか。ハッピータウンから······ならば、この町で休んでいきなさい。しばらくは辛いだろうが、あんたはまだ若い。挫けちゃ駄目だよ」

「ど、どうも」



 また一つの謎が生まれてしまったな。ハッピータウンで何があったんだろう。



「大所帯なら大変だ。すぐに食糧を用意するから待っててくれ」



 老人は大量の食糧を袋一杯に詰めてくれた。


「さ、持ってきなさい」

「ありがとう。助かります」


 缶詰めやビン詰めに、ドライフルーツ系。それに生鮮食品も入ってる。これなら当分は持つだろう。


 ──ズシッ──


「重っ?!」


 持ち上げた瞬間、いや、持ち上げられないくらいにめちゃくそ重い袋。


「だ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫。これはありがたみの重さだ」

「は、はあ」


 クソ重え。だが、持って帰らねばならん。


 心配するレンが見守る中、なんとか背中に背負う事に成功した。



「ぐおぉ······腰が、腰が······」

「あ、あの。私がお持ちしましょうか?」

「いや、大丈夫だ······」


 イルス。


 お前ガリガリ過ぎだ!


 確かに量が多いから重いのは分かるが、男ならこんくらいで膝をプルプルすんな!


 ともかく、目的は達成した。



 二人でユートピアツリーから出る。



「では、私はまた別の区画を見て回らなければいけないので、ここで失礼します」

「そうか。大変だな。俺には何も出来ないが、頑張ってくれ。案内どうもありがとう」

「いえ。では、レグルスさん。また」


 レンは礼儀正しくお辞儀してから去って行った。



 遠ざかる後ろ姿は凛としていて、可憐だった。



 でも、どこか寂しそうにも見えた。



「······」


 実力で言えばレンも上級者。リゲル亡き今となっては町の防衛の要でもあるんだろう。


 この有り様では学業どころではないだろうが、それでも学生であるレンがこうやって復興の見廻りや手伝いをしなくちゃいけないのが現状だ。



「············あいつも大変だな」



 そんな風に思ってた時だ。



「よいしょ、よいしょ······あっ!」


 ──ドサッ、ボトボト、ゴロゴロ、ボコンッ──


「ん?」



 何やら後ろの方で誰かの驚く声と妙な音が聞こえた。



 振り向いてみると、道に食糧が大量にぶちまけられていた。ハムやリンゴが足下にまで転がってくる。


「? 一体············」


「うぅ~、いたたた。やっちゃった······」

「!!」


 この聞き覚えのある声は!




 思わず声のした方を見てみると、そこには大きな袋を前にして、あたあたと慌てて食糧品を回収しているメルの姿があった。


お疲れ様です。次話に続きます。

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