16──不気味な力
「キエラ! 例のアレ出来るよな!?」
「任せてっ!」
UFOを操縦しながら、周囲の自然物をクラフトで集めていく。
クラフト能力の最もチートなところは、材料になる素材なら全て引き寄せられるところだ。
つまり早い話、自動サーチ、自動センサー、自動キャプチャーの力だ。
素材を一旦集めるだけという事も出来る。
「キエラ、木刀を作ってくれ!」
「オッケー!」
そして、キエラの能力。
それは、あらゆる物の形を変形させる『ディフォーム』。
「イメチェンの時間よ!」
キエラの声と共に倒木がぐにゃぐにゃと変形し、1本の巨大な木刀へと姿を変える。
それをウルトラハンドで掴む。
「よし! キエラ、盾も頼む!」
迫り来る攻撃を避けながら、キエラの作業を待つ。
イルスとキエラは単に気が合うだけではなく、その能力の相性も良い。
物体を集めて引っ付けたり組み合わせたりする事の出来るイルスの能力。だが、それはあくまで既存の素材を繋ぎ合わせるだけだ。
そうなると、作り上げた物はどうしても不恰好になってしまうのだ。
そこで登場するのがキエラの能力だ。
キエラの能力は変形。物の形を変える事が出来る。
あくまで形を変えるだけだから性質の変化は出来ない。
だが、ただの岩を板状にしたり、逆に木などを丸い塊などにしたりする事が出来る。
つまり、このキエラの能力で変形させた物体を俺の能力で組み立てる事によって、より効率よく強力な武器を作れるのだ。
「イルス! 木の盾が出来た!」
「よし!」
もう1本のウルトラハンドを出して装備する。
剣と盾を装備したUFOの出来上がりだ。
「キエラっ、しっかり掴まってろよ! 荒れるぜ!」
「分かった!」
操縦桿だけではなく、左右につけたレバーなども動かさなきゃいけない。
「いくぞ、シュユ!」
速度を上げてシュユに向かって突っ込む。
「若造どもめ」
また無数の矢が飛んでくる。
──カッ、カンッ、カッ──
盾に次々と突き刺さる矢。
「······これも容赦ねえな」
殺傷能力が高すぎる。
敵とは言え、シュユの技もやはりコミカルで殺傷力はそれほど高くはなかった。
だが、これは命中したらただでは済まない。
「シュユ! お前も狂ってやがるな!」
「何を言っておる? 妾は狂ってなどおらん」
ふわりとシュユが浮かび上がる。
その全身に不吉な影が揺らめく。
「狂っておるのはお主よ、イルス。リゲルを殺したと言うのに何故姿をくらました? そのまま妾達の元に来れば良かったものを」
「どういう意味だ!」
大剣木刀を振る。それは空を切った。
「解せぬ奴よのう。お主はあの方に見込まれてリゲルを手にかけたのではなかったのか?」
「?!」
一体なんの話をしている?
「シュユ! お前は一体何を知ってる?! あの方ってのは一体なんなんだ?!」
「やはり狂っとるのう。話が通じん。まあ良いわ。死にゆく者に道理など要らんでの」
蝶のように優雅に攻撃を躱すシュユ。俺の木刀が大きく空ぶったところで、大きく後退した。
その全身を影が包み、その影の中からさっき俺らを襲った無数の折り鶴が現れる。
「果てるがよい! 小童ども!
❬妖術❭『終鶴』!」
「っ?! これはっ!」
折り鶴の群れが空を覆わんばかりに飛翔した。そして、それは一つに集合すると巨大な一体の黒い鳥になった。
鶴には見えない。カラスか、もっと禍々しい漆黒の巨鳥。
「この技は······」
「ホホホッ! どうじゃ? これが妾の新たな力よ。今までの妖術など児戯に等しかった。これこそ、真に“術”と呼べる技じゃ!」
確かに『仕舞鶴』という技はあった。だが、あれはこんな禍々しい物じゃなかった。
折り鶴の大群が、巨大な一羽の鶴になって翼を使って攻撃する優雅な技だったはず。
こんな禍々しくて不気味な技じゃなかった。
「ホッホッホッ! 死ね! 小童ども!」
黒い巨鳥が甲高く鳴いて襲いかかってくる。
こっちに向かって開けられた口は、UFOを丸飲みできる程に大きかった。
「ちっ!! こんな技知らねえぞ!」
アクセルペダルを強く踏み込み、一気に急降下する。重苦しい影が頭上をすり抜けた。
「イルス! また来る!」
「おう! キエラ、何か使えそうな物作っておいてくれ!」
「わ、分かったわ!」
バズーカを出して巨鳥にぶっ放す。
──ズガンッ──
岩をそのまま弾丸にした大砲だが、命中しても効果はなかった。
「くそ! 威力が足りない!」
「イルス! これ使って!」
「お! ナイス!」
キエラが作った特性岩石弾を装填する。岩で出来た弾だ。ちゃんと砲弾の形をしていて、空気抵抗を抑える形状だ。
「これならどうだ!」
再度発射。特性弾はさっきとは比較にならない速さで飛んでいった。
──ズガアアンッ──
手応えありだ。
「ぬおっ?!」
後方に浮遊しているシュユが声を上げてよろめく。
彼女の戦闘スタイルは式神を駆使して戦う妖術。そのためには自分の力を式神に憑依させなければならない。言わば、操ってる折り鶴達はシュユの分身のような物だ。
直撃程ではないが、式神にダメージを入れればシュユにもダメージがいく。
「おのれっ! 小癪な!」
「キエラっ、もっと作ってくれ!」
「おっけー!」
「させるかっ! 墜ちよ!」
巨鳥から何百という矢が飛び出す。
盾を前面に掲げて防ぐ。が、豪雨のように降り注ぐ矢の勢いにヒビが入りだす。
「くっ! 長くは持たないか······!」
ボスキャラでもここまで火力は高くなかったはずだ。こんな力押しの戦術でもなかった。
「やっぱおかしいぜ! お前っ!」
盾が砕ける。
その瞬間に煙幕を放つ。
「ホッ! 読めておるわ! 上じゃろう!」
シュユの勝ち誇った声が上がる。
「消えろ童ども! ❬妖術❭『禍鳥風血』!」
次の瞬間、空気中を震わせる風の唸り声が響きわたり、刃の如き黒耀の翼が空を切った。
「ホッホッホッ! 真っ二つじゃな小童ども!」
「──残念、外れだ」
「なにっ?!」
シュユの読みは上。俺がそっちに逃げると見たのだろう。
だが、俺が逃げたのは後ろ。後方だ。
シュユが『上に避ける』と読むのをこっちが読んだのだ。
俺の姿は煙幕で隠されている。
だが、シュユの操る巨鳥は見事に空振った攻撃の動作で、翼が丸見えだ。
つまり、位置が分かる。
「シュユ! 目を覚ませ!」
キエラの作ってくれたパーツで組み上げた巨大ボウガンに装填した矢じりを向ける。
矢とは生ぬるい。もはや槍だ。
「いっけえ!」
引き金を引く。
弦がビイィンッと緊張を解放し、弾かれて飛び出た矢は真っ直ぐに飛んだ。
──ドッ!!──
「ぐあああっ?!」
巨鳥に矢の突き刺さる音と、シュユの悲鳴とも咆哮ともとれる声が、煙の向こうから響きわたった。
放った矢から手に伝わる手応え。当たった。
「やったか?!」
「あっ、煙が晴れるよイルス!」
一陣の風が吹き、煙幕のベールは薄らいで消えていった。
煙が去って現れたのは、巨鳥がバラバラに分散し、元の折り鶴達が縮れて地面へ落ちていく場面だった。
「よしっ!」
勝った。
あとは、様子のおかしいシュユを問い詰めるだけだ──
──ゾクッ──
「?! なんだ?!」
「な、なに? 今の······」
『オノレ、ヨクモヤッテクレタノウ』
「?!」
言葉に出来ない不吉で不気味な気配と声に、全身の毛が総立ちになった瞬間。
「!!! キエラっ!掴まれ!」
「──えっ、?! きゃあああ!?」
禍々しい闇が伸びてきて、UFOに付いていたウルトラハンドを引きちぎった······。
お疲れ様です。次話に続きます。




