14──三角山へ
アジトの庭先に出る。
「なあ、キエラ。ダスト達の居るその場所は遠いのか?」
「うん、そこそこ。でも、イルスが居るから大丈夫でしょ?」
「え? なんで?」
「え? だって、イルスはこういう時に乗り物作ってくれるじゃん」
「あっ、そうだったな」
「もしかして、その事まで忘れて?」
「いや、大丈夫だ。任せろ」
そうだった、そうだった。俺の作るガラクタUFOで2人乗りするのがお約束だったな。
「よし、ちょっと待ってな。クラフトっ!」
──ガタッゴトゴトッ、ゴトンッ──
庭に転がってる廃材の類いが集まり、あっという間に出来上がる。
「よし、行こうぜ」
「うん!」
二人で乗り込む。操縦は俺で、キエラはすぐ隣に居る。
柑橘系の香水が良い匂いだ······。
「イルス大丈夫? なんかボーッとしてるけど」
「あ、ああ。大丈夫だ。狭くないか?」
「平気」
くぅ~っ! 露出多めのギャルとこんな至近距離でUFOに乗ってるなんてカオスすぎる状況じゃねえか!
だが! なんて最高なんだ! ほんのりと体温すら感じるくらいにくっついてやがる!
イルスの野郎。チャラ男のくせに毎回こんな美味しい思いしてやがったのか。もっとボコしておくべきだったな。
「イルスの円盤デザイン変わったね?」
「え? そうか?」
「うん。なんか以前のよりもシンプルね」
「ああ、ほら、あれよ。SDGsってやつよ」
「なにそれ?」
しばらくはゆっくり飛ばして、キエラと会話する事にした。今現在の町やパラダイス学園の状態についてだ。
本当はもっと取り留めもない話をしたいんだが、今は状況が状況だからな。
「昨日、町に行ったらバリケードとか見張り台だらけだったんだが、あれは一体何なんだ?」
「あれは防御壁よ。カーリー達が主体になって、町を守るために色々やってるみたい」
「あいつらがか。なるほど。リゲルが居ない代わりをしようって事か」
ん? ちょっと待てよ?
「だけどよ、一体何から町を守るんだ? もしかして、あの物々しい備えは俺に対してか?」
「それもあるだろうけど、どれかって言うと『アンノーン』に対しての備えよ」
「アンノウン? 芋か?」
「芋?」
「あっ! UNKNOWNか! 正体不明、未知って事か?」
そんなの居たっけ?
「そう。そのアンノーンよ。いきなり現れたから名前もついてない」
「いきなり現れた?」
「だって、イルスあんただって······あ、そっか。記憶喪失だもんね。じゃあ、あたしが知ってる限りで教えるわね」
その未知の敵は、本当に突然現れたらしい。
「ちょうどあの日だわ。隕石が現れて、爆発した日。その日から現れたみたい」
町を中心にあらゆる場所に出現し、手当たり次第暴れだしたらしい。
「姿は、何て言うのかな。色々な形があるけど、昆虫に近いかも。黒い甲殻に覆われて、ツルハシみたいに尖った足を何本も持っていて。でも、一番特徴的なのは頭部ね。歪な形してて、何個も目玉がギョロギョロくっついててキモい」
「完全にバケモンだな」
ここがファンタジーな世界とは言え、そんな奇妙な生物は居なかったはずだが。
「それで、アンノーンは人や妖精とかの住人を見つけると襲いかかってくるの」
「なるほど。完全に敵か」
「あたしも襲われたし」
「マジかよ。大丈夫だったのか?」
「うん。一体一体は大した事ないし。だけど、数は多いから全滅させるのは無理」
「ふーむ。そんな奴らが居るのか」
おかしいな。ゲームしてた時にはどのルートに行こうとそんなバケモン達には出くわさなかったはずなんだが。
だが、これで少し状況が分かってきた。
ぼんやりとした輪郭だが、このパラファンの世界の異変の原因は爆発した隕石にあるようだ。
隕石の正体は分からないが、その出現をトリガーに歯車が狂ったのは間違いない。
隕石の爆発によりリゲルは死亡。そしてアンノーンの出現。この二つは決して無関係じゃない。
そして、今この世界はリゲルを失った状態でアンノーンどもと戦わなきゃいけないって事か。
「ん? もしかして、リゲル達が隕石の上で遭遇した化物達って······」
「うん、そいつら。後でカーリー達が報告して“校長先生”が名付けたそうよ」
「そうか。どんな奴らか気にはなるが、なるべく遭遇しない事を祈るぜ」
キエラのおかげで謎が少しづつ明らかになってきた。霧に覆われた視界の中に、うっすらと景色が見え始めた感じだ。
それを踏まえた上で·········俺はどうするべきか。
「うーん······」
「どうしたの? イルス」
「いや、どうしようかなって思ってさ。これからどう動こうかな」
「?」
まあいい。
とりあえず今はダスト達の回収が先決だな。
操縦桿を倒す。スピードが上がる。
木々の波を越え、山裾の縁を滑り、川の煌めきを受けながらUFOを飛ばす。
「あ、あの辺り! あそこの三角山の所!」
キエラが指差す方にはその名の通り三角形の山があった。正しくは三角錐の形の小さな山で、レアアイテムの宝庫だったのを覚えてる。
「ああ、なるほどね。あそこなら『マツキノコ』とか『エンギダケ』や『マイコタケ』とか食い物あるしな」
「うん。でも、大所帯だからすぐ食べ尽くしちゃったけどね」
「生態系は大丈夫かそれ」
しかしキノコや野草類だけじゃ持たないだろう。早くみんな連れて帰ってやんなきゃな。
三角山がすぐ目の前にまで迫った。
「よーし、降りるぞ。掴まってな」
「うん、ダスト達ー、迎えに来たよー!」
『おや、来客かのう』
「?!」
突然。
──ビョオオオオオッ──
「きゃあっ!!?」
「くっ!!」
突風が俺達を襲った。
お疲れ様です。次話に続きます。




