表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/258

13──最初の朝

 

 最初の朝になった。



「ふぁ~······」



 寝て起きたらあるいは現実に戻ってるかとも思ったが······そうはならんらしい。

 どうやら今はここ(パラファンの世界)が俺にとっての現実らしいな。

 とにかく、起きるか。


 さて、何をすべきは分からんがまずは──


 ──グゥゥ~──


 朝飯だな。





 俺はアジトの中心でもある食堂へと向かった。このアジトで一番広い部屋でもあり、ここでは食事、作戦会議、雑談、ドッジボール大会が開ける。

 イルスはよくそこでダスト達やキエラと共に大騒ぎしてたりした。



「まあ、今は······」



 ──シーン······──


 ガランとしていて誰も居ないが。


「あ、おはよう、イルス」


 いや、一人居た。唯一の同居人のキエラが。

 俺より先に起きていたようだ。いくらかリラックスしたような様子にひとまず安心した。


「よ。昨日はよく眠れたか?」

「うん。やっぱ自分のベッドが一番」


 そう言ってはにかむキエラの手にはフライパンが握られていた。


「ん? フライパン?」

「うん。何か作ろうかと思って」

「え? キエラが飯を?」

「うん。在り合わせの物になっちゃうけど」


 女の子の手料理を朝飯にだと?! それって無料でいいんすか?! 課金しないと貰えない有料コンテンツなんじゃないんすか?


 いや。だが待てよ?


 キエラの飯って確か······。


「ちなみにメニューは何だ?」

「えっと、ウィンナーとイチゴジャムがあったからジャム煮込みポトフと、じゃが芋とレタスがあったからそれをマヨネーズで揚げたジャガレタフライネーズと、ピーマンの納豆詰め焼きに、ケチャップ和えきゅうりの──」



 そうだった。


 キエラは壊滅的な飯マズ娘なんだった。

 ゲームプレイ時に何回か飯マズイベントがあり、レギュラーキャラの集団食中毒とイルスファミリー壊滅という実績を残していたな。

 そしてタチの悪い事に本人は料理が趣味なんだ。

 家庭的な趣味のギャルというギャップは大変よろしいんだが、腕がなぁ。


 かと言って、張り切ってるようだし、止めろとは言いにくいぜ······。


 ならば──



「イルスも缶詰めばっかりだったでしょ? 今日はまともな物食べさせてあげる」

「あ! ま、待ってくれキエラ」

「うん? なに?」

「えっとー、あっ、俺も作るぜ! 一緒に朝飯作ろうぜ!」

「え? イルスが? あんた料理なんて出来たっけ?」


 お前も出来てねえよ!

 というツッコミが咽頭にまで飛び出したが、なんとか飲み込む。


「ほら、たまには男の料理なんてのも良いだろ? 簡単な物だったら俺にも出来るし!」

「そう? じゃあ、一緒にやろっか」

「よしっ!」


 これで地獄は回避出来たな。



 二人でキッチンに立つ。


 キエラはパジャマにエプロンをしている。


「すごくイイぜ······」

「え? 何が?」

「いや、何でもない。始めるか」


 パジャマエプロンのギャルと二人きりで飯を作るだと? 炊きたて飯並みに熱々な新婚生活みたいじゃねえか。



「あ、イルス、包丁気をつけてね」

「大丈夫だ。こう見えてもじゃが芋の皮をピーラー使わずに剥ける系男子だ」

「きゃはっ、何それ」


 小さく笑うキエラ。ここに来てから、誰かが笑ったのなんて初めて見た。


 こんな至近距離で見る推しの笑顔はたまらんよなあ。



「じゃあ、皮剥きは任せるわ」

「おう」

「えっとー、まずは納豆をピーマンに詰めて······」

「?! ストーップ!」

「わっ! どうしたの?」

「ピーマンはさ、じゃが芋と合わせてポトフにしないか?」

「そう? なら、そうしよっか」

「ほっ······」

「それじゃあ、こっちのイチゴジャムはレタスと混ぜよっか。甘くて美味しくなるわよきっと」

「い、いや、イチゴジャムはもっと違うのに使おうぜっ!」

「そう? ならトマトケチャップと混ぜてレベルアップしようかしら? 同じ甘いソースで同じ赤だから美味しさ2倍ね」

「い、いや、そうじゃなくてなっ?!」




 片時も目を離せないクッキングタイムはなんとかまともなメニューになった。


 ウィンナーとじゃが芋をふんだんに使ったポトフに、ジャムサンドと、レタスときゅうりを挟んだ簡単なサラダサンド。ポテトフライにケチャップを添えて。


 在り合わせの物で作ったにしてはまあまあな出来だろう。



「もぐもぐ、うーん、少し油っぽさが足らないが旨いじゃんか」

「うーん。もっとこう、オリジナリティ溢れる味付けにしたかったけど美味しいわね」



 まあ、ぼちぼちな朝飯にはなった。




 飯も終わったので、キエラと食休みをしながらもっと色々な話を聞く事にした。



「なるほど。じゃあ、キエラはダスト達に食べ物とか運んでたんだな」

「うん。ほら、あいつらってどこ行っても上手くいかないでしょ。だから町とかにも行けないからさ。それに、今はイルスの仲間ってだけで周りからは嫌われて······あっ! ご、ごめん······」

「気にすんな。だが、そうか。ダスト達は今こうしてる間もどこかで腹空かせてるのか」

「うん············あの、イルス」

「ん?」

「ダスト達をさ、呼び戻していい?」

「? いいも何も呼び戻すつもりだが?」

「本当っ?!」


 キエラが勢いよく立ち上がる。まるで子供みたいにキラキラした目を輝かせていた。


「じゃあ、またイルスファミリー復活?」

「おう、そうだな。やっぱこのアジトはごちゃごちゃして賑やかじゃねえとな」

「~~っ」



 この世界に俺が居る理由は分からんが、何かをしなきゃいけない。そんな気がする。



「よし。キエラ! ダスト達の所へ案内してくれ。それで、道中にもっとここ最近の事を色々教えてくれ」

「おっけー! それじゃ、いこいこっ!」

「おっとっ」



 キエラに手を引かれて出撃だ。


お疲れ様です。次話に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ