13──最初の朝
最初の朝になった。
「ふぁ~······」
寝て起きたらあるいは現実に戻ってるかとも思ったが······そうはならんらしい。
どうやら今はここが俺にとっての現実らしいな。
とにかく、起きるか。
さて、何をすべきは分からんがまずは──
──グゥゥ~──
朝飯だな。
俺はアジトの中心でもある食堂へと向かった。このアジトで一番広い部屋でもあり、ここでは食事、作戦会議、雑談、ドッジボール大会が開ける。
イルスはよくそこでダスト達やキエラと共に大騒ぎしてたりした。
「まあ、今は······」
──シーン······──
ガランとしていて誰も居ないが。
「あ、おはよう、イルス」
いや、一人居た。唯一の同居人のキエラが。
俺より先に起きていたようだ。いくらかリラックスしたような様子にひとまず安心した。
「よ。昨日はよく眠れたか?」
「うん。やっぱ自分のベッドが一番」
そう言ってはにかむキエラの手にはフライパンが握られていた。
「ん? フライパン?」
「うん。何か作ろうかと思って」
「え? キエラが飯を?」
「うん。在り合わせの物になっちゃうけど」
女の子の手料理を朝飯にだと?! それって無料でいいんすか?! 課金しないと貰えない有料コンテンツなんじゃないんすか?
いや。だが待てよ?
キエラの飯って確か······。
「ちなみにメニューは何だ?」
「えっと、ウィンナーとイチゴジャムがあったからジャム煮込みポトフと、じゃが芋とレタスがあったからそれをマヨネーズで揚げたジャガレタフライネーズと、ピーマンの納豆詰め焼きに、ケチャップ和えきゅうりの──」
そうだった。
キエラは壊滅的な飯マズ娘なんだった。
ゲームプレイ時に何回か飯マズイベントがあり、レギュラーキャラの集団食中毒とイルスファミリー壊滅という実績を残していたな。
そしてタチの悪い事に本人は料理が趣味なんだ。
家庭的な趣味のギャルというギャップは大変よろしいんだが、腕がなぁ。
かと言って、張り切ってるようだし、止めろとは言いにくいぜ······。
ならば──
「イルスも缶詰めばっかりだったでしょ? 今日はまともな物食べさせてあげる」
「あ! ま、待ってくれキエラ」
「うん? なに?」
「えっとー、あっ、俺も作るぜ! 一緒に朝飯作ろうぜ!」
「え? イルスが? あんた料理なんて出来たっけ?」
お前も出来てねえよ!
というツッコミが咽頭にまで飛び出したが、なんとか飲み込む。
「ほら、たまには男の料理なんてのも良いだろ? 簡単な物だったら俺にも出来るし!」
「そう? じゃあ、一緒にやろっか」
「よしっ!」
これで地獄は回避出来たな。
二人でキッチンに立つ。
キエラはパジャマにエプロンをしている。
「すごくイイぜ······」
「え? 何が?」
「いや、何でもない。始めるか」
パジャマエプロンのギャルと二人きりで飯を作るだと? 炊きたて飯並みに熱々な新婚生活みたいじゃねえか。
「あ、イルス、包丁気をつけてね」
「大丈夫だ。こう見えてもじゃが芋の皮をピーラー使わずに剥ける系男子だ」
「きゃはっ、何それ」
小さく笑うキエラ。ここに来てから、誰かが笑ったのなんて初めて見た。
こんな至近距離で見る推しの笑顔はたまらんよなあ。
「じゃあ、皮剥きは任せるわ」
「おう」
「えっとー、まずは納豆をピーマンに詰めて······」
「?! ストーップ!」
「わっ! どうしたの?」
「ピーマンはさ、じゃが芋と合わせてポトフにしないか?」
「そう? なら、そうしよっか」
「ほっ······」
「それじゃあ、こっちのイチゴジャムはレタスと混ぜよっか。甘くて美味しくなるわよきっと」
「い、いや、イチゴジャムはもっと違うのに使おうぜっ!」
「そう? ならトマトケチャップと混ぜてレベルアップしようかしら? 同じ甘いソースで同じ赤だから美味しさ2倍ね」
「い、いや、そうじゃなくてなっ?!」
片時も目を離せないクッキングタイムはなんとかまともなメニューになった。
ウィンナーとじゃが芋をふんだんに使ったポトフに、ジャムサンドと、レタスときゅうりを挟んだ簡単なサラダサンド。ポテトフライにケチャップを添えて。
在り合わせの物で作ったにしてはまあまあな出来だろう。
「もぐもぐ、うーん、少し油っぽさが足らないが旨いじゃんか」
「うーん。もっとこう、オリジナリティ溢れる味付けにしたかったけど美味しいわね」
まあ、ぼちぼちな朝飯にはなった。
飯も終わったので、キエラと食休みをしながらもっと色々な話を聞く事にした。
「なるほど。じゃあ、キエラはダスト達に食べ物とか運んでたんだな」
「うん。ほら、あいつらってどこ行っても上手くいかないでしょ。だから町とかにも行けないからさ。それに、今はイルスの仲間ってだけで周りからは嫌われて······あっ! ご、ごめん······」
「気にすんな。だが、そうか。ダスト達は今こうしてる間もどこかで腹空かせてるのか」
「うん············あの、イルス」
「ん?」
「ダスト達をさ、呼び戻していい?」
「? いいも何も呼び戻すつもりだが?」
「本当っ?!」
キエラが勢いよく立ち上がる。まるで子供みたいにキラキラした目を輝かせていた。
「じゃあ、またイルスファミリー復活?」
「おう、そうだな。やっぱこのアジトはごちゃごちゃして賑やかじゃねえとな」
「~~っ」
この世界に俺が居る理由は分からんが、何かをしなきゃいけない。そんな気がする。
「よし。キエラ! ダスト達の所へ案内してくれ。それで、道中にもっとここ最近の事を色々教えてくれ」
「おっけー! それじゃ、いこいこっ!」
「おっとっ」
キエラに手を引かれて出撃だ。
お疲れ様です。次話に続きます。




