12──増える謎
キエラの話はこうだ。
事の起こりは約1ヶ月前。
その日もイルスは食べ物を奪いに町へと出掛けた。パラファンではよくある日常の事だ。
しかし、それから少しして町上空に謎の隕石のような物体が出現し、その場に浮遊した。
町は大パニックにとなり、凄い騒ぎになった。
「最初はイルスが作ったんだと皆思ってた。あたしもそう思った」
だが、キエラが確認のため無線(魔法のクリスタル的な物。親指サイズ)で何度も呼んだが、イルスからの返事はなかった。
やがて、隕石を調査しにリゲル達主人公チームが出動した。
「それでしばらくしたら、隕石が爆発して······」
上空で隕石が爆散。破片が町に降り注ぎ、甚大な被害をもたらした。
「その後大怪我したあんたが帰ってきて······」
俺──つまり、イルスが戻った。しかし、ボロボロで血塗れの状態で、それまで見た事のない深刻な表情をしていたらしい。
「何を聞いても答えてくれなくて······」
部屋に籠ったまま出て来ないイルスを心配したキエラが原因を調べに町へと向かった。
その時にリゲルが死んだという話を聞いたそうだ。
「いつもと違った。町中が悲しみに暮れていて、カーリー達がずっとリゲルの名前を呼んでた」
後に知った話では、こういう事らしい。
隕石の上には正体不明のモンスター達が居た。そいつらはリゲルやカーリー達を見つけると途端に襲ってきて、戦闘になった。
その数は圧倒的で、リゲル達は一旦退却すべく後退しながら戦った。
ところが、あと少しという所でイルスが現れ、一行の前に立ち塞がった。
イルスの様子も変だったらしく、怪我をしている者にも容赦ない攻撃を加えようとしたそうだ。
リゲルは皆を先に行かせ、イルスと二人だけで戦っていた。
そして──隕石が爆発した。
結果、帰ってきたのはイルスだけ。
リゲルはいくら探しても見つからなかった。
「あたしが何度もしつこく聞いたの。イルス、あんたに······そしたら、ある日すごい怒って『リゲルは死んだんだ!!』って言ったの······」
「············」
「それで············こうも言ったわ······『俺が殺した』って······そう言ったわ······」
「俺が······?」
イルスがリゲルを?
「············」
「ねえ、イルス。本当に······あんたはリゲルを······殺したの?」
「······分からない」
思い出せない。いや、思い出す訳がないんだ。だって俺はイルスじゃないんだから。
だが······。
『あり得ない』と言う話でもない。
実際、イルスはリゲルには強い敵対心を持っていた。
ゲームの設定。なんて言えばそれまでだが、やはり気の合う合わないがあるのだろう。
何度もシャレにならない攻撃や罠を仕掛けてきたイルスの過去を知ってる俺からすれば──正直なところ『絶対にあり得ない』とは言えん。
「······それで、お前のその傷は?」
「······あたしが悪いの······あんたは辛そうだったのに、しつこく何度もリゲルの事を聞いたりしたから。だから······多分、イルスも限界だったんだと思う。もうその頃には酒ばっかり飲んで荒れてたし······」
「······それで殴ったのか」
「うん······殴ったり、蹴ったり······あたしだけじゃない。ダスト達にも······それで、みんなここに居たら殺されるって逃げちゃって······あたしも、5日前に逃げたの······その日は特にひどく殴られたから······」
ギュッと腕を押さえるキエラ。
俺は···············何も言えなかった。
「それじゃあ、イルス。お休み·········」
「ああ、ゆっくり休んでくれ。ごめんな。疲れてるのに色々問いただして」
「ううんっ······あんたも大変だもんね。記憶喪失だなんて······早く治ると············でも······」
「······とにかく。今は休んでおいで」
「······うん」
キエラは久しぶりの自分の部屋に戻って行った。数日とは言え、心身ともに疲れてるだろう。
まだ詳しく聞きたい事はあるが、今日の所は休ませた方がいいだろう。
俺はアジトの四階に上がった。
本来ならここにもダスト達がたむろしていて騒々しいのだが、やはり虚しくガランとしている。
そこからテラスに出る。外はすっかり夕方になっていて、オレンジ色の日が地平線の向こうでゆらゆらと揺らいでいた。
「············」
何かがおかしい。
この世界。パラファンの何かが狂っている。
だが、これでカーリー達ヒロインやモブの子供達の異常なまでの反応も納得がいった。
リゲルの死によって歯車が狂い始めたんだ。本来あるべき世界の姿がガラリと変わった。
それによってイルスが豹変して、キエラがあんな目に遇い、カーリー達ヒロインも憎悪の鬼と化してしまったんだ。
キエラの話が全部真実なら······
俺は主人公リゲルの仇であり、自分の仲間や手下にも見捨てられた男という事になるだろう。
キエラだけは帰ってきたが、ダストは相変わらず居ないまま。
町の奴らは全員俺の敵になってるだろう。もちろん、元々敵ではあったんだが、そういうのとは違う本物の敵だ。
「はぁ~······どうなってんだよ一体······」
判った事があっても、解らない事だらけだ。
今日は俺も休む事にしよう。
明日からさらに調べてみよう。
異世界初日の夜は、不安に包まれた物になった。
お疲れ様です。次話に続きます。




