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107──生きて再び

 



「まあ、ローナちゃんのお知り合い?」

「はい。知り合い、と言ってもまともに話した事あるのは俺だけなんですが」



 ダルマストーブ的な暖房器具を囲んで、ココアの甘ったるい味をすすりながら、俺らはローナを探している旨を女性に話した。



「ここら辺に立ち寄っていると噂を聞いて訪ねてみたんですが、今は滞在していますか?」

「いえ。今はもう居ないわ。他の村に行ってるんじゃないかしら?」

「そうですか」


 どうやらここはハズレのようだ。



 その後、駄々をこねるカミラと図々しくくつろぐシュユの二人を引きずっておいとまする事にした。



「失礼しました。ココアごちそうさまっす」

「いえいえ。気をつけてね」

「どうも」


 別のマークの場所に行くか。

 地図を広げる。


「······あの」


 次の目的地をどこにしようかと考えていたところで、ふいに女性が声をかけてきた。


「なんですか?」

「ローナちゃんの居場所なんだけど、少し心当たりがあるわ」

「え?」


 女性はこっちに寄ると、俺の手からペンを取って地図にマークを施した。


「この辺りに“心の泉”と呼ばれる遺跡があるの。ローナちゃんは多分そこに居るわ」

「心の泉?」

「ええ」


 女性は少しだけ悲しそうに微笑んだ。


「あの子は真面目で心優しいから。自分の悩みを解決したいんでしょうね」

「······そうですか。ありがとうございます」


 なんとなく、その言葉の意味が分かった。



 礼と別れの言葉を述べてから、俺らはそこを立ち去りUFOへ戻った。


「う~、寒い。イルス、ローナ居なかったじゃんかー。この役立たず~」

「しゃあねえだろ。あいつはテリトリーが広いんだ。だが、有力な情報を得られたな」

「泉とか言ってたのう。そこに居るのか?」

「わからん。が、行ってみる価値はありそうだ」



 あの女性の物憂げな表情と物言い。

 やはりというか、ローナが俺からの誘いを断った理由は予想通りのようだ。確信に近い物を得た。


 当初の予定通り、荒療治になりそうだ。



 操縦桿を引いて上昇する。



「早速、泉とやらに向かうぞ」

「なんでも良いから早く~。寒い~」

「やれやれ、だらしないのう」

「そうだ。二人とも。良いタイミングだから、なんでお前らを連れて来たか話しておくぞ」

「え?」

「ほう?」



 二人には前もってこれからの事を話しておく事にした。


 話を伝え終わると二人は怪訝な顔をした。


「ふーん。別に良いっちゃいいが······」

「随分と手荒じゃのう。お主、そういう手は使わないんじゃなかったのかえ?」

「まあ、不審に思うのも無理はない。だが、最後まで見ててくれ。で、今話したようにマジでヤバくなった時は助けてくれ」


 二人はあまり気乗りしないようだったが、了承したように頷いた。



 これから仲間になってもらう奴には、なるべく不満や不便をかけさせたくない。


 ローナにも、不安を抱えたまま無理言って俺らの元に来させたくはない。


 ローナが俺からの誘いを断った理由。そして、その問題の解決策。それらはゲームプレイ時のルートイベントが参考になる。




 UFOを目的地に飛ばすこと数十分。


 遺跡の中にポッカリと空いたように水を張った泉が見えてきた。



「あそこだな。二人とも、手筈通りな。名演技を期待してるぞ」

「えっ、ちょっ、私も何かやらなきゃいけないの?! 聞いてないっ!!」

「ホッホッホッ、まあ騙すのは得意じゃ」

「よーし、準備OKだな」

「おいっ! 私はまだっ······!」


 準備万端の二人の返事を聞いて、いざ降下。


 泉が近づいてくる。



「······ビンゴ。あっさりだったな」


 泉のあちこちから突出している遺跡の柱や、屋根の角。


 その一つの上に静かに立っている人物。


 その背には六枚羽がうっすらと輝いており、神秘的な力を眠らせていた。



「······」



 すぐ近くにUFOを空中停止させる。

 その人物はゆっくりとこちらを振り返った。


「誰?」

「······よ。久しぶりだな。ローナ」

「イルス?」


 不思議そうにこちらを見上げる妖精の少女。ローナがそこには居た。




 あの時。


 最悪な未來の最後。死の直前。


 俺は確かにこの目で見た。

 妹のメルを庇って、シリウスの放った凶刃に倒れていった彼女を。


 光の塵となって生命を失った彼女を。





 今は、まだ儚いけれど、ちゃんと生きて目の前に居る。



「······ローナ。お前も無事で良かった」

「? 何が?」


 キョトンと首を傾げるローナ。そりゃ分かんないよな。


 ペールの時も。カミラの時も。シュユの時も。そして、今も。


 俺がどれだけ心の中で嬉しく思ってるか。

 こうして生きて再び会えるなんていう奇跡を俺だけが知ってるなんて、分からないよな。



「······ローナ、少し話があって来た。今いいか?」

「うん」


 ローナはふわっと浮いて俺らの方に近づいた。


「? 貴女達は確か······」


 ローナがカミラとシュユに気づく。


「カミラ······シュユ?」

「よっ」

「久しいのう」


 ローナが目をパチパチとする。


「どうして二人がイルスと?」

「詳しく話そう。場所を変えないか?」


 俺の提案にローナはコクリと頷いて、後をついてきた。




 しばらく飛行し、遺跡郡の途絶えた広い荒野に出た。ここには歴史的な建造物跡も無ければ、現在使われている民家などもない。



 俺はUFOを着陸させた。


「カミラ、シュユ。降りてくれ」


 二人は黙って降りた。


 ローナが俺の横に降り立つ。


「イルス。話って?」

「俺からの手紙は読んでくれたか?」

「うん。返事もダストに渡した」

「受け取ってる。答えはNoだったな?」

「うん」


 カミラとシュユは既に一定の距離を離れて待機していた。


「手紙には書いてなかったが、俺が仲間として集めていたのはお前だけじゃなくてな。あそこに居るカミラとシュユにも出してあったんだ。あいつらは直接交渉の末に了承した。今ここには居ないがペールの奴も俺の仲間になってる」

「あの三人が?」


 それには流石のローナも驚いたらしく、珍しく顔一面に驚きの色を滲ませていた。


「それは······凄いね」

「ああ。だが、まだ足りなくてな。ローナ。お前を入れた四人を俺のファミリーに加えれば完璧となる。どうだ? 今からでも返事を変えないか?」

「············」


 ローナは静かに、真っ直ぐ俺の目を見ていたが、やがて力なく首を横に振った。


「私はいい。一緒には行けない」

「······理由は?」

「私の中には悪い力がある。それはたまにどうしようもない衝動になって出てくる。だから······私は一人で生きていかないと」

「······なるほどな」


 思った通り、ローナは自分の中の力を恐れて、俺らの所へも来ないつもりのようだ。


 少しの間くらいなら、俺と居ても平気だろうが、一緒に暮らすとなるとまた別だ。いづれは力がコントロールできなくなるかもしれない。



 そう考えた上での判断だろう。




 ならば──



「よく分かったローナ」

「ごめんね。イルスからのお誘いはすごく嬉しかった。だから──」

「俺の仲間にならねえってんなら仕方ねえ。ここらでやっつけてやる」

「え?」


 コントロールパネルを起動、全武装をアンロック。ウルトラハンドオン。


「食らいやがれ!」


 拳に握り締めたウルトラハンドをローナに振り下ろす······。


お疲れ様です。次話に続きます。

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