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105──残るは一人

 


「かっかっかっかっ! それでそんな大きな紅葉を貰ったのか。ほんとしょうもない奴よのう」

「笑い事じゃないわよシュユ! あんたも、無防備に寝ないのっ! ただでさえ際どい格好してるんだから」

「お前さんも大概だと思うがのう」



 キエラにボコボコにされていたところでシュユも起き、起きたついでに彼女のために用意しておいた部屋へと案内する事となった。



「一応、共有スペースも案内しときたいんだが······」

「風呂と便所なら知っておる。昨日ペールに教えて貰ったでのう」

「そうか。ちなみに、風呂入る時は必ず俺に言ってから入るんだぞ」

「どうせ覗く気じゃろう? やなこった」


 流石ににできる奴。


 ペールやカミラにやったように次々に共有スペースを案内していき、最後にシュユの部屋を案内する事にした。



「正直言うとお前の趣味趣向が一番分からなかったから、部屋の好みが合ってるか心配なんだが、まあ見てみてくれ」


 俺らは最上階、四階へと上った。最上階は造りかけのようになっていて、きちんとした部屋は二つくらいしかない。

 その片方をシュユの部屋として改造したのだ。


 吹きさらしになっている廊下を見ながら、扉の前に立つ。


「ここだ。俺監修、キエラ作。コンセプトは······古き良き信仰心」

「なに?」


 扉を開ける。


「──ほう」


 シュユが感嘆の声を小さく漏らす。



 コンセプトだとか言ったが、なんの事はない。ただ単に和風に仕立てただけだ。


 畳は流石になかったのでフローリングではあるが、テーブルや椅子といった洋風な家具は全て卓とか座布団とかに入れ替えてある。


 窓にはカーテンの代わりに障子がはめられており、風鈴をこしらえた。


 部屋の真ん中には囲炉裏があるが、これはほぼダミー。まあ、魔法の石とか置けば使えなくはないが、飾り的なやつだ。


 そして、シュユのおわす寝床は鳥居を潜って入るようになっており、オブジェの丸太にはしめ縄をしてある。



「······」

「あー。どうだ? やっぱちょっと変か?」

「いや、悪くない。うむ。これはお主が考えた設計か?」

「ああ、そうだが」

「そうか、そうか」


 シュユはすすっと中へと入っていき、木の床をさすったり、座布団をポンポン叩いたりしながら、障子を開いて窓を開けたりした。


「おお、良い眺めじゃ」


 そうやって窓から身を乗り出すシュユの尻尾がフサフサと揺れていた。


 キエラと囁く。


「気に入ったみたいね」

「だな。キエラ、ナイス」

「あんたもね」


「これ、何をしておる。お主らも入れ。せっかくだから茶でも淹れてくれよう」

「おっと、そう言って酒じゃないだろうな?」

「安心せい。本物じゃ。さっき台所を見て回った時にくすねたのよ」

「こいつ、いつの間に」

「ささ、座れ座れ。遠慮は要らんぞ」



 そうして、シュユは妖術を駆使してあれよあれよと茶を淹れてしまった。


 しばらく、三人でお茶を楽しんだが、シュユは始終ニコニコと笑っていた。









 朝飯になり、カミラ以外の全員が揃った。

 味噌汁と漬物を白米と咀嚼する、俺好みの朝食を摂りながら少し議題を出す。



「さて。これで俺のオールスター計画はほぼ完了した事になる。ペール、カミラ、シュユの三人をファミリーに入れた事によって、もはや敵無しと言っていい」

「のう、なぜあのお子ちゃまは居らんのじゃ?」

「ほら、あいつ夜行性だから」

「ああ。忘れておったわ」


 シュユが首を傾げる。


「ん? ほぼ完了と申したな? という事はその強い奴を集める計画とやらはまだ他にも誰か拐ってくる予定なのか?」

「拐うではなく、快諾してくれると言いなさい」

「嘘っス! ウチなんか完全誘拐だったっス!」

「まあまあ、過去は振り返っても仕方ないだろ?」


 納得いかないように味噌汁をがぶ飲みするペールはさておいて、話を進める。


「この計画を思い付いた時、俺の中では四人の人物をファミリーに迎え入れるつもりだった。ペール、カミラ、シュユ。そして、ローナだ」

「ローナ?」


 軽く驚くシュユ。


「あの精霊の小娘のローナかえ?」

「そうだ」

「なるほど。そうか。確かにあやつなら······」


 やはりシュユもローナの噂を知っているのだろう。納得したようにうんうんと頷いている。


「妾もちいとしか話した事ないが、なかなかの使い手だというのは感じたわ。そうか、ローナもか。ふむ。イルスや、お主いつからそんなに賢しくなった? 妾はもちろんだが、ペールやローナを選ぶ辺り、お主の人選はまこと正しいようじゃ」


 カミラはダメみたいだ。可哀想に。


「まあ、色々あってな。ともかくその四人を仲間に加えるのが今の俺の計画さ」

「残るは後一人ね」


 思いつきのような計画ではあったが、勢いだけでここまで来た。達成率75%。



 だが、最後の一人が問題だ。

 最初はカミラやシュユが一番苦労するかと思ったんだが、二人はなんだかんだ言って『No』という返事はしなかった。

 しかし、ローナはハッキリと断った。謀略を張り巡らしたりしないし、表裏の無い素直な奴だから純粋に拒絶したとみていい。



「問題はローナだな。あいつは純心ゆえに簡単には心変わりとかしないだろう。断られたとなるとかなり厳しいかもしれん」

「なんで断ったのかしら?」

「分からんが、ともかく一度会っておいた方が良いな。本人から直接話を聞くべきだろう」

「大変っスね」

「ああ。くそ~。ローナが一番簡単に上手くいくと思ってたんだがな」

「ちなみに、ウチの事はどう思ってたんスか?」

「同じくらいチョロいと思ってた」

「心外っス!」



 と、方針を固めていた所へ


『ヒョヒョヒョー!』


 廊下からダスト達が雪崩れ込んで来た。


「ん? どうしたお前ら」

「ブタイ、サイゴノブタイ、テイサツ!」

「カエッタ、カエッタ!」

「おお、そうか」


 ローナ捜索班の帰還。これで偵察に出したダストチームは全て帰ってきた。


「よし。最後の奴らも労ってやらないとな。お、そうだ。これでダストもみんな戻ってきたんだ。俺からの慰安も込めて少しお菓子を放出サービスするか」


『ヒャッホーウ!!』


「よし、最後の英雄達をここに連れてきてくれ」

『ヒャーッ!!』


 ドコドコと出ていったダスト達。1分待たずして、数を増やして戻ってきた。


 俺は一旦、茶碗などを置いて食糧庫に保管してあるお菓子を大量に抱えて戻った。


「ほーれ、お前ら。仲間が全員無事に帰ってきたお祝いだ。食えー」


 バケツをひっくり返すように菓子の袋を全部空けて床に菓子山を作り上げる。


『ヒャッハーッ!!』


 ダストの大群が怒涛のように押し寄せて、みるみる床を汚していく。



「あーあ、まーた掃除しなきゃ」


 席に戻るとキエラが呆れたようにダスト達を眺めて言った。


「で、イルス。この後はどうするの?」

「うん。昼飯を食ったらカミラとシュユを連れてローナの所へ行く」

「なに? 妾もか?」

「ああ」

「なぜじゃ?」

「あー、まあ。あれだ。色々考えてだな」


 今、俺の中にはある考えがあるのだが、その作戦には念のためシュユとカミラを連れて行った方が良いからな。


「また何か企んどるのだろう?」


 俺の心を見透かすようにシュユが言う。


「お主の事だ。どうせまた姑息な手を考えておるのだろう」

「まあな」


 実を言うと、残念ながら良い案ではない。どれかと言うと荒療治だ。



 少々乱暴なやり方だが······ローナの力は是非とも手に入れておきたい。



「よし。カミラが起きたら早速行こう。シュユ、それまで英気を養ってくれ。キエラとペールは留守を頼む」

「オッケー。なにする気かは知んないけど、頑張ってきなさいよ」

「朗報をお待ちしてるっス」



 午後は忙しくなるぞ。



お疲れ様です。次話に続きます。

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