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104──明かされてく悪夢

 



『これが俺の力······スゲー! マジでスゲーや!』




 荒涼とした狂気じみた紫色の大地。いや、大地なんて優しい場所じゃない。地獄だ。




 そこに倒れる三つの白い人影。





『くっ、うっ······』


『カーリー! しっかりして下さい!』


『ううっ······レ、レンちゃんっ! う、動いちゃダメっ······血が······!』





 あの三人だ。

 カーリー、レン、メル。仲良しメインヒロイン三人。




『ひゃひゃひゃひゃっ!! どうした~?! ずいぶん良いザマじゃねえかあっ?! なあ、正義の味方ちゃん達よおーっ!」





 おかしい。



 傷ついたあの子らを見て笑う訳がない。




 現に、俺の胸の中に渦巻くこのドロドロした感情。




 嫌だ。



 こんな事、本当は望んでなんかいないんだ。



 なのに············。





『俺様に逆らう奴はみ~んなこうなるのよおっ! なあ? カーリーぃっ!!』



『っ?! はああああああああっ!!』


『無駄だ、無駄だ! んな火なんかで俺様の力を止められるか~? この「崩壊の力(アンニアル)」をよ~!』




 全身を支配するこの快感はなんだ?




 不安や、悩み。悲しみが存在しない、この全能感はなんだろう。




『っ!? あああっ!!』


『カーリーっ!!』


『ひゃーっひゃっひゃっ! よええっ! よええ! 弱すぎるぜおめえらっ! マジでザコだぜ~!』




 ボロボロになっていく三人。




 そんな彼女らを、俺は容赦なく(なぶ)っている。




 いや、違う。




 イルス。イルスだ。






 やめろ、イルス。やめるんだ。こんな事しちゃいけない。こんな事······。





『あ~、最高だぜ~。今まで俺様の事をバカにしてきたてめえらをボコせるんだからよ~。なあ、今どんな気持ちだよ? クククク』




 地面に膝をつきながらも、必死に立ち上がろうとするメルの、その細い首を掴んだ。



 苦しげに息を吐き出すメル。





『メル~、お前は可愛い奴だなぁ。どうだ? 俺の女にならねえか? そうすりゃ毎日美味いモンだって食わしてやるし、お前の好きな事なんでもやらせてやるぜ? なあ、俺の物になれよ』


『うぅ······やめて、イルス······』




 手を離せイルス。



 メルだって怪我してる。早く手当てしなきゃ······。





『なんだぁ? お前も俺の事を拒むのかよ。おい、クソガキ。なあ、おい。俺の物になりてえよな?』


『ガッ······ハッ······ぁ、あぐぅっ······』


『くっ!? 止めなさいっ······うっ······イルス!』


『うるせえよレン。お前も後で可愛いがってやるよ。そっちで這いつくばってるカーリーもろともな。安心しろ~? 殺しやしねえよ。ただ、俺の奴隷になってもらうだけだからよ~』




『止めなさいっ!イルス!!』






 この声は······。





 真っ赤な血のように避けた地割れから、一つの煌めく星が現れた。





『ちっ! もう戻ってきやがったか』


『イルス! こんな事は止めなさい!』





 それは、リゲルだった。














「ぅ··················う~ん······」



 全ての光景が消えて、目の前に枕が現れた。



「············」



 ゆっくり起き上がる。身体が重い。頭も。



「······ふぁ~あ············昨日は飲みすぎたか······」



 おかげで悪夢を見た。また、あの夢を。

 いや、あの記憶を。


 忌まわしい記憶を······。



「············起きるか」








 顔を洗い、歯を磨き終わった頃には幾分かサッパリして、気分も回復した。


 廊下を歩いていると、まだグースカ寝ているダスト達のだらしない寝姿がそこらに転がっていた。


「ほんとここって無法地帯だよな」



 食堂へと入る。


「ん?」


 食堂は昨晩のままで、まだあちこち散らかっていた。というか汚え。


「はぁ~。まずは片付けからだな······」


 キエラ達もフラフラした足取りで各々の部屋に戻っていったからな。誰も掃除をする余裕なんてなかった。未だに誰も居ないみたいだし。



「しゃあねえ。ここはちゃんと親分らしく俺が自分で片付けするか。おーい、そっちで残飯貪ってるダストどもー、手伝えー」


『ヒョヒョ~』


 何体かのダストと一緒に掃除していく。


「まったく。派手にやったな。メンバーが増える度にこれだ。最後の一人が加わったらこの食堂が爆発しちまうかもしんね······な?」


『グカ~ッ、スピーッ、カ~ッ······』


「············」


 やたらでかいゴミが床に転がっていた。


 と思ったら、酒ビンを抱き締めて涎をたらしてだらしなく幸せ寝顔をスヤスヤしているシュユだった。


「この酔っ払いめ······」


 たく、掃除の邪魔だ。こんな所で寝やがって。たたき起こして──


「············」

「スピ~、ヒュ~、クゥ~······」


 乱れて脱げかかった着物。白くて脂の乗った肩は丸出しになり、幸せ谷間は半分ほどまで露出している。裾から覗くムッチリとした太ももの餅のような質感。


「············」


 こんなに幸せそうに寝ているのに起こすなんて失礼極まりない。ここはちゃんと寝かせてやって見守ろうではないか。


 お、おお。あ、あとちょっとでもっとはだける。あとほんの少し寝返りすれば、ユートピア砂丘が全面公開だ! 寝返り打て、打て~!



「······あんた何やってんの?」

「ハッ······!」


 おっと。あまりにラッキーな展開に俺の理性は負けたのだろう。気がついたら指先がシュユの襟元を摘まんでいた。危ない危ない。


 ふー。流石に脱がしたりしたら犯罪者だからな。危なかった。ほっ。あ、そんな俺に理性を甦らせてくれたのはどこの誰かな──



「······イルス············あんたって男は······」

「キ、キエラさん。お早いお目覚めで······」

「何をしてんの?」

「あ、これには深い訳が······」

「······このっ──」


 歯を食いしばった。



「変態スケベ馬鹿エッチーー!!!」


 ──バッチイイィンッ──


「ふんごろげえぶえっ!!」



 おふ。


 朝から強烈だぜ······。


お疲れ様です。次話に続きます。

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