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101──シュユ、ゲット

本日3本投稿です。

 



「ぬわああーっ?!」



 リゲルの十八番が決まると、シュユは星と共にくるくると回り、少し離れた地点に砂煙を上げて落っこちた。


 それと同時に


 ──ピロロン、ピロピロピーロ──


 時間切れのオルゴールが鳴った。

 この瞬間、俺の正式な勝利が確定した。まあ、問題の対戦相手がぶっ飛ばされてしまったが。


「よしっ!」


 被っていた笠を脱ぎ捨て、つけ髭も外し、借りていたクワやカゴはそのまま茶屋の店先に置いてから、物陰に隠れているキエラの元へ滑り込んだ。


「やったぞ! 俺らの勝ちだ!」

「それどころじゃないわよ! シュユがぶっ飛ばされちゃったわよ!?」

「大丈夫だ。落下地点はすぐそこだ。回収しに行くぞ」

「そういう問題なの?」


 こうなるかもしれないと思ってUFOは近くの林に隠してある。キエラと急いで乗り込み、シュユが落ちたと思われる場所へと向かった。



「確かこの辺りに、お、いたいた」


 すすき揺れる原の真ん中で大の字になって倒れてるシュユ。


「きゅ~······」


 完全に目を回して気を失ってた。


「おお、見事にやられたな」

「早く助けてあげようよ」


「ああっ?! イルスとキエラ!?」


「げっ······」


 しまった。もう来やがったか。


 後ろから生まれた驚きの声に振り向くと、目をまん丸にして浮かぶリゲルが居た。


「な、なんで二人がここに?」

「ようリゲル。おつかれさん。おかげで助かったぜ」

「え? あ、うん。うん? 助かった?」


 頭に?を浮かべて首を傾げている。


「え? どういう事?」

「俺からの手紙見てくれたんだろ? ちゃーんと時間ピッタリに来てくれるなんて、お前はほんとに真面目で良い子だな」

「そ、そうかな? えへへ、ありがとね」


 はにかむリゲル。うーん。可愛い。







 そう、リゲルがここに来たのはもちろん偶然などではない。俺の策略によって現れたのだ。まあ、結果は少々違うものになってしまったが。



 俺はダストに手紙を持たせリゲルに届けるように命令した。手紙の内容は


『ハッピータウンの北西にある峠でシュユが悪戯ばかりして困ってます。団子屋のある場所で旅人から団子を盗んでいるのです。地図に印を付けておきました。ここに午後4時半ちょうどに来てください。早すぎても遅すぎても駄目です。あと、必ずリゲルさん一人で来てください。もしシュユを見つけたら懲らしめてやってください』


 といった、かなり強引な物だったんだが、やはりというか予想通りというか、リゲルはちゃんと約束通りに現れた。


 そして、シュユがそのリゲル本人を俺の変装と勘違いして間違える作戦だったのだ。そのために、わざと『キエラの能力を使う』『女にもなれる』とか言って、白い服まで落としたりしたのだ。俺がリゲルに化けていると刷り込ませるために。


 この作戦は見事に当たり、シュユは本物のリゲルを俺だと勘違いして宣言を外した。




 ············そこまでは良かったんだが、思ったよりシュユが熱くなってしまい、俺がネタばらしする前にリゲルとの戦闘になってしまったのだ。





「えへへへ······ん? え? あれってイルスからのお手紙だったの?」

「そうだ。ちゃーんと約束の時間に一人で来てくれるなんて偉いな」

「あ、ありがとう。でも、なんでイルスが?」

「まあ細かい事はいいんだよ。さて、俺らの用は済んだ。シュユは貰ってくぞ」


 のびているシュユをウルトラハンドで回収する。


「あっ、シュユをどうするつもり?」

「なーに、別に取って食ったりはしないさ。俺のアジトで介抱してやろうと思ってな」

「えっ? それは······あの、偉いし良い事だとは思うんだけど、イルスが変な事しないか心配かな······」


 まさかの聖人リゲルにまで信用のない俺。


「ま、そこは任せてよ。イルスなんか信用出来ないだろうけど、あたしが居るしさ」


 そしてキエラに裏切られる俺。


「うん。キエラ、お願いね」

「はいはい······って、なんであたしがあんたみたいな良い子ちゃんの言うこと聞かなくちゃなんないのよ! あっかんべー!」

「あっ、もう、キエラ!」

「ふんっだ! いこ、イルスっ」

「お、おう」


 そのまま上昇し、不思議そうにこちらを見上げているリゲルに手を振る。


「あばよー。カーリー達にもよろしくな~」


「わかったー······あっ!? こ、こらっ、イルス~! カーリー達に謝りにいきなさーい!」


 キエラと共にあっかんべーをくれてやりながら、俺らは離脱した。リゲルは何かプンプンと叫んでいたが、特に追いかけてくる気配はなかった。









「う、う~ん············はっ?!」



 ハッピータウンから抜け、ハッピー地方からも脱した辺りでようやくシュユが目を覚ました。


「なっ、こ、ここはどこじゃ? 妾は······」

「よ、目覚めたか?」


 ウルトラハンドに握られたまま、シュユがキョロキョロと頭を振る。


「ど、どこじゃここは?! リゲルは?!」

「リゲルならもう居ないぞ。ここは俺のアジトの近くだ。もうハッピータウンからは遠ざかったぞ」

「なんじゃと?!」


 すっとんきょうな声を上げて身をよじり、怒ったように俺を睨んできた。


「何を勝手に! これ! 戻らんか!」

「何でだ?」

「なぜって、なぜ妾がお前に連れてこられなくては······あっ!」


 そこで思い出したのか、シュユの耳がピコンっと跳ねた。


「そ、そうじゃ。そう言えばあの時妾はあやつをイルスが化けてると······」

「そういう事。化け比べ勝負は俺の勝ち。よって、約束通り俺の仲間になってもらうぞ」

「なあっ!?」


 そう言った途端、じたばたと暴れだした。


「何を言うか! あんなタイミング良くリゲルが来るはずなどないっ! あれはお主が化けていたのじゃ!」

「へえ。俺がスターシューティングを放ったと思うのか?」

「うっ······それは······」


 口をつぐむシュユ。冷静に振り返れば振り返るほど、あれが俺の化けてた姿ではなくリゲル本人だったという確信を得ていくだろう。


「くぅ······なぜじゃ、なぜこうもタイミングが······あやつさえ来なければ······」

「まあ、そこは運が悪かった。というよりは、俺を侮り過ぎていたな」

「なに?」

「俺だって手紙くらいは書けるんだぜ?シュユ」

「············あっ!? さ、さてはお主がっ······」


 驚愕の表情をみるみる内に怒りへと変えるシュユ。


「お、おのれ~っ!! お主、やること成す事みんなセコいぞ! 卑怯者め~っ!」

「だが、ルールは破ってないぞ? 俺はちゃんと近くに変装して居たんだ。誓ってもいい。それに、俺はただハッピータウンの現状を手紙にしたためてリゲルに送っただけだ。リゲルに足止めを要求したりなんかしてないぞ?リゲルに熱くなっちゃったのはシュユだろ?」

「くくぅ~! この小賢しい小童(こわっぱ)めー! ああ言えばこう言う! 勝つためには手段を選ばん! 名誉が地に落ちてるわ!」

「構わねえよ。そんなくらいでお前を仲間に出来るならな」

「なっ?!」

「お前の言う通り、小賢しくて汚い手さ。なんと言われようと仕方ない。だが、それでもシュユを俺らのファミリーに迎えられるなら安いもんだ」

「······」


 黙ってりゃ良かった事かもしんないが、これから長い付き合いになるんだ。ちゃんと後腐れないように正直に話しとかないとな。


「悪かったなシュユ。はっきり言って化け比べ自体はお前の勝ちさ。初めからな。だからこそ、俺なりのやり方で勝たせてもらった。お前にはファミリーに入ってもらうが、不便はさせない。約束する。それに、お揚げだって好きなだけ持ってきてやる。悪いようにはしないから。な?」

「············仕方ないのう······」


 しゅんと耳を垂れさせて観念したように項垂れるシュユ。


「どうも今のこやつには調子を崩されるわ······」

「ん? なんか言ったか?」

「なんでもない。それより! いつまでもこんな雑に扱うつもりじゃ?」

「おっと、こりゃ失敬!」


 ウルトラハンドで掴んだままのシュユを引き寄せてコックピットの中に入れる。


「ようこそシュユ。イルスファミリーへ」

「シュユ、これからよろ~」

「ふん。しょうのない童どもめ。少しだけ付き合ってやる」



 少しツンっとしているが、もう嫌がる素振りは見せない。



 シュユを勝ち取った。




「これっ! イルス、お主もっとそっち寄れ!」

「いや~、ここ狭いからよ。おお、やっぱボリュームが違う······」

「この痴れものーっ!!」


 ──スッパーンッ──


 脳天に響く衝撃と、扇子の打ちならした良い音が夕陽の中に木霊した。


「女の敵!」


 ──バキィッ──


 ついでにキエラの制裁パンチも夕暮れを赤く染めていた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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