5. 発現
「............っ!」
暗い夢から目が覚め、窓の外から溢れる太陽の光を浴びる。
寝衣は冷や汗でぐっしょりと濡れており、夢であると認識するまでの間呼吸は乱れ、息切れていた。
なんだ、今の夢は。誰の声だ。
夢であると認識してもなお、謎の不快感は消えない。ドロドロとした感情。あの人は何を望んでいたのか。この不安はなんだろうか。
何かに駆り立てられているような、迫り来るものから逃げなくてはいけないと感じるような....。
何か思い出せそうで思い出せない。
「朝だぞー」
思考回路にかかった白い靄を晴らすように、扉の向こうからカイヤの声が聞こえる。
「そろそろ起きねぇと約束の時間に遅れちまうって......」
朝が弱い私を起こそうと、いつものように元気よく扉が開いた。
「......どうした?」
明らかに様子が違う私を見て言葉を止める。慌ててベットに近づくと、顔を覗くようにして屈むカイヤ。
「大丈夫か?」
肩に乗せられた手の暖かさから心配してくれているのが伝わってくる。その優しさから少し落ち着きを取り戻した。
まだ少し震えている手に気づかれないよう、ぎゅっと強く握る。
ただの夢だ。問題ない。
「大丈夫、少し悪い夢を見ただけ」
顔を上げると口角を上げ返事をした。
乱れていた呼吸も整え、何の心配もいらないと誤魔化す。
大丈夫。
まだ少し不安そうだが、カイヤは納得したようで手を離して立ち上がった。
「そっか。ならいいけど......」
カイヤと話したことで安心したのか、さっきまで感じていた不快感は薄れていた。
「ごめん、急いで準備するよ」
今日はカイヤの鍛錬の日。彼の師であるサノスさんの所で手伝いをする約束をしていた。急いで準備しなくては遅れてしまう。
腰まで伸びた黒い髪をひとつにまとめてベットを出ようとすると、立ち上がろうとしたカイヤが突然大きな声を出した。
「ヤヅキ。それ......」
先程とは少し違う様子で私に近づく。カイヤの視線は首もとに向いており、驚きのあまり言葉を失っているようだった。
「......どうしたの」
いつもと違う様子の彼に体が強張る。さっきまでの不安がまた戻って来たようだ。やっとのこと絞り出した声でカイヤの返答を待つ。
「......首のそれ」
震える声で言葉が紡がれた。
「ロードルの"印"だろ。」




