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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第3節 選ばれし者達
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10. 派手な演出


「俺もミナカちゃんみたいに派手な演出欲しかったっス」


 クリーションを起動し終え、自らの左手を眺めながら不満を漏らすシヤール。カイヤの次に行ったミナカは、彼が言うように派手な演出だった。プラーティエフは兎のような形に変化し、その姿のまま彼女の周りを駆けると、最後には鼻に可愛らしいキスをしてクリーションの中へと消えていった。その一連の流れはまるで、一つのショーでも見ているようでとても美しい光景だった。


「シヤールのだって綺麗だったわ」


 私もミナカの意見に賛成だが、彼自身はあまり納得していない様子だ。彼のプラーティエフはまるで蒸発したかのように一瞬で姿を消した。その数秒後、彼の手の甲には魔法陣のようなものが浮かび上がり黄金色に輝くと消えていった。ミナカに比べれば確かにあっという間の事だったが、魔法陣が現れる際の光は、神を彷彿とさせるものだった。だが、宝玉の民であるシヤールは美しさに対して独自の厳しい価値観があるのだろう。


「演出も気になっちゃうけど、大事なのは祝福自体だからね」


 気にしない、気にしないと笑って声をかけるトワさん。


「それじゃ、最後にヤヅキちゃんおいで!」


 明るい声で待ちに待った自分の名が呼ばれた。指示に従い、トワさんが指差す位置まで前に出ると深く呼吸する。


「落ち着いてやってみよ〜」


 笑顔で頷くトワさんを見て、皆と同じように両手に握るクリーションとプラーティエフをそっと触れさせる。


 トワさんによれば、カイヤは吸収型、ミナカは変換型、シヤールは記録型だったらしい。帰属方法は全部で3種類。運良く全ての方法を実際に見ることができたのだ。どんな風にプラーティエフが帰属するのか、一瞬の間に3人の姿を思い返しながらどの帰属方法になるのかと期待を膨らませる。


「まって、伏せて!!!!!」


 その瞬間トワさんは何かを感じ取った様子で指示を出す。笑顔は消え、血相を変えて私に手を伸ばした。まるでスローモーションのように、彼女の動きはゆっくりと視界に収めることができていた。


 何か起きたのか。


 理解が追いつかないままに、私の手に握られたプラーティエフは一瞬で熱を帯び、トワさんの声と共に凄まじい勢いで爆ぜた。ガラスのような神力のかけらは、周りに立っていた4人を風圧で転倒させると共に、鋭い凶器となって降りかかる。それと同時に重たい風は私の周りで渦を巻き竜巻のように壁を作った。


 止まれ!!!


 右手に残ったクリーションを握りしめる。一体何が起こっているのか理解できないまま、異常事態を引き起こしているということだけが分かる。

 何か間違えたのか、指示通り接触させただけだったはずだが。他に何か指示はあったか。いや、間違いなく2つを触れさせるだけだった。当たり前に経験のない状況。解決策など知るはずもなく、段々と大きく響く鼓動がより不安を煽る。


 落ち着いて考えろ。

 どうにかして止めなければ。


 焦る気持ちを抑えながら出来ることは無いかと辺りを見渡す。壁の外に見えるトワさんに助けを求めようとするが、強風と破片から身を守るために低い姿勢で抵抗し、3人の前に立つ彼女には此方の声は届かないようだった。


 自力でどうにかするしかない。


 恐怖と不安で震える手を握りしめ、自分に出来ることを考える。

"クリーションの起動と祝福の解放"

 第2ステップの残された作業。今の私に出来るのはトワさんが最初に出した指示に従い行動することだけだ。


「起...動」


 風で呼吸もままならず、僅かに肺に残った空気でやっとのことクリーションへと指示を出す。か細い声だったにも関わらず、届いてくれという願いに応えるかのように右手に握るクリーションは黒く輝いた。


 起動はできた。


 未だ吹き続ける竜巻の中、僅かな期待を手にする。もう一度落ち着いて次の行動に備えよう。輝くと共に、私の手から僅かに浮いたクリーションは風などものともせず、次の指示を待っている。


「祝福解放」


 必死に立っている足に力を入れ、声を振り絞りクリーションに声を届ける。


『祝福解放準備完了』


 その瞬間に視界は一面白の世界に包まれた。


『印を持つ者【ヤヅキ】。願いは【繝??繧ソ蜿門セ嶺ク崎?】。また【自分の願いを守るためにその願いを叶えること】』


 白い世界の中で頭に響く声は、聞き覚えのある私自身の声で伝えられる。カイヤが言っていたのはこのことかと理解すると同時に、次に伝えられる祝福の名に意識が集中する。


『願いの神"アラクトウィンド"様により与えられし祝福【神力操作】を授ける』


 神力操作...? トワさんの説明なら祝福は全て神力を操作して行われるもののはず。だがそれ以上は考える余裕もなく、そんな思考は一瞬で消え去った。


『帰属作業終了』


 頭の中に声が響くと同時に、視界は元の世界に帰還した。今の世界は夢か幻か。朦朧とした意識の中、なんとか周りの状況を視界に入れた。相変わらず強く吹き荒れる竜巻の中、限界に近い身体を何とか支える。だが、先程と違い段々と勢いは落ち、厚い風の壁も段々と姿を消し始めていた。


 成功したのか。


 危機を脱した安心感から全身の力がそっと抜けていくのを感じる。カイヤ、ミナカ、シヤールの3人はトワさんの後ろで何か大きな生き物に守られていた。トワさんの祝福か何かだろうか。ぼんやりとした頭でそんなことを考える。


 その間にも風は段々と落ち着き、最後には微風のように私の周りを通って消えていった。その姿を見て事態が終息し始めたのを感じたトワさんが、急いで此方に近付いてくるのが見える。


 みんな無事でよかった。


 未知の力を何とか収め、生きて厚い壁を抜けられた事に強い安心感に包まれる。その記憶を最後に全身に入っていた力が完全に抜け落ち、目の前は暗闇に包まれた。

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