8. プラーティエフ
「接続が完了してない人は3人とのことでしたが、あと1人は」
私と入れ替わりで席を離れた白銀の民の女性リスティーンと共に輪に加わるとトワさんに話を振るモノさん。
「あぁ、シヤールくんはさっき自力で接続できたよ。途中参加のガオラくんも問題なし!」
トワさんがさっき打たれた右後頭部を摩りながら報告すると、モノさんはシヤールとガオラのクリーションの確認を済ませトワさんへの連絡を続ける。
「途中参加に関する件ですが。先程アインスから連絡があり持たぬ者の発現が確認されたそうです。明日の使用練習から参加するとのことなので準備しておくように」
どうやらガオラの他にも途中参加者が増えるらしい。モノさんが発した"持たぬ者"という言葉に印を持たぬ彼のことが頭をよぎった。
「え、良かったね!アインスああいう子嫌いじゃ無いもんねぇ」
そんな嬉しそうな声を上げるトワさんとは裏腹に若干の不安を感じる。私の予想通りであるなら、アインスさんが連れて行った彼のことと見て間違いないだろう。先程のガオラの反応を見るに、良好な関係を築くのは難しいかもしれない。
「使者が私情で動くと捉えられるような発言は控えて下さい」
そんな彼女を諌めると、ごめんなさーいという反省の色は伺えない声色で謝罪が返ってくる。いつものことなのか流れを止めることなく次の指示を出すモノさん。共にロードルに挑戦した仲間だと聞いてからは、仲が良い故の扱いなのだと実感した。
「途中参加者についてはアインスが担当するので、こちらは気にせず次の段階に移行して下さい」
彼女の指示に頷くと、連絡ばっかでごめんねーと此方に声を掛けて話し始めるトワさん。
「それじゃあ、祝福を使えるようになるための第2ステップに入りまーす!第1ステップではクリーションを使ったけど、第2ステップではこちらを使います!!」
先程クリーションを取り出したものとは別のスーツケースを手に取り、じゃーんというトワさんのセルフ効果音と共に蓋が開かれる。そうして視界に入ったスーツケースの中には、透明な5cm程度の立方体が綺麗に並んでいた。
「これはね、えっと。プラート...プレ...プラークト...」
「プラーティエフ」
名前を思い出せずにいるトワさんの様子を見て溜息混じりに正しい名前を伝えるモノさん。
「そ、そう!!これはプラーティエフっていうの。綺麗でしょ〜」
笑って誤魔化すと、綺麗に並んだ中から一つ取り出すと光に翳して見せた。無色透明だが受けた光は七色に反射して光り輝いている。
「それも神物っスか?」
美しい輝きに目を奪われていると、シヤールが質問を投げかける。クリーションとは違い装飾は一切なくシンプルながらも、水晶等の鉱石とは全く違った印象を受ける品。先程のクリーションと対照的な見た目に疑問が浮かぶ。
「えっと、これはねぇ神物って言うよりはね。んー、分かりやすく言うと神力をぎゅってしたものだね」
そんな質問に簡単な説明を返すトワさん。この空間に漂う神力を圧縮したもの、ということか。なんとなく理解できないこともないが、視認出来ない空気のような存在が固体となる様はなかなか想像がつかない。
「本当は無くても祝福使えるんだけど、初めはコツが必要だし見えた方がやりやすいんだよね」
いまいち理解できていない様子を見て少し考えると、例を挙げ話をする。
「例えるなら、祝福っていう花を咲かせるための種ってところ? んー、伝わりづらいかな。でも、クリーションと違って意識して持ち歩く物じゃ無いから難しく考えなくて大丈夫だよ、私名前もちゃんと覚えてなかったけど困ってないし」
眼鏡のようにプラーティエフ越しにこちらを見て笑うトワさん。
「第1ステップより全然楽だから気楽にね。これからやるのは使者の用語で言えば"帰属作業"だよ。クリーションに願いを込める工程は"接続による変換"だったんだけど、第2ステップではクリーションによってプラーティエフを自分に"帰属"させるよ」
話長いけど頑張って聴いてね、と一言声をかけると説明を始める。
「接続は既に済んでるから、君達のクリーションには願いに沿った祝福が与えられてる。プラーティエフはその祝福を具現化させる為に使う最初の神力って所だね」
それぞれが自分で込めた願いを思い返しながらトワさんの話を聞く。
「帰属方法は大きく分けて、吸収型、変換型、記録型の3種類。これは祝福によって決まるよー。吸収型はプラーティエフを自分の中に取り込んで、祝福を使うときに外に出すの。所謂、超能力みたいなやつはこの形が多いね。変換型は言葉通りプラーティエフ自身の形を変えて祝福を使う。武器を扱う人とか魔獣使いとかはこの型が多いかな。記録型は魔法陣とか呪文とか術式みたいな形で頭に入ってくるの、それを何かに結びつけることで祝福が使えるよ」
一気に説明したけど分かるかな、と若干不安そうにしたが、やってみればわかるよね!と一瞬で切り替えたトワさん。
「帰属方法は超簡単!クリーションにプラーティエフをくっつけるだけ。プラーティエフがクリーションに与えられた祝福を把握したら、その祝福の持ち主に勝手に帰属してくれるようになってるよ」
そう言うと願いが込められていない無色のクリーションとプラーティエフをくっつけて見せる。
「それじゃ、やっていこうか!」




