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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第3節 選ばれし者達
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7. 自己紹介


「成功したか?」


 皆が集まる場所に戻るとカイヤから声が掛かった。橙色に輝くクリーションを握る彼に自らのクリーションを見せると、成功した旨を伝える。


「黒になったよ。モノさんのおかげで接続できた」


 トワさんを囲んで座るメンバーに倣って、隙間を空けてくれたカイヤとミナカの間に腰を下ろした。


「黒かぁ! 凄い珍しい色だね。10年近くロードルにいるけど初めて見たよー」

「黒なのに光ってるなんて不思議ね」


 興味津々で覗き込むトワさんとミナカを横目に、自身のクリーションをポケットにしまうとモノさんから言われたことをトワさんに伝える。


「次の人を呼んでくるように言われたんですが、どなたでしょうか」


 すると、忘れてたというように急いで手元の手帳に目を向け、私の対面に座っていた銀髪の女性に声をかけたトワさん。


「リスティーン・ロス=、、、シュフェルトちゃん! モノの所に行って接続しておいで〜」


 何処かで耳にしたような、やけに長く如何にも高貴な名前を読みにくそうに言うと指示を伝え、呼ばれた彼女は何も言わずこの場を後にした。


「凄いお名前だよね。思わず"ちゃん付け"で呼んでいいか悩んじゃったよ」

 そう言いながら笑うが、ここでは生まれは関係ないから平等に呼んじゃうんだけどね〜と付け足す。


「そういえば、私がモノさんの所にいる間何をしていたんですか」

 少し会話が落ち着いたのを見計らって声をかけるとミナカが答えを返す。


「軽く自己紹介してたのよ。銀髪の彼と、目隠しの彼女は教えてくれなかったけどね」


 そう言った彼女の視線を辿ると、翻訳システムについての話で質問していた男性と、終始無言を貫いている目隠しをした女性がいた。


「美しい黒髪のお嬢さん! 俺はシヤール・シャシャール、宝玉の民の生まれっス。これからよろしく」


 ミナカとの会話を聞いて、カイヤの隣から握手を求めてきた茶褐色の肌を持つ彼は、シヤールと名乗った。


「狩猟の民の生まれのヤヅキです。こちらこそよろしくお願いします。」


 席を立っていた私のためにもう一度挨拶してくれた彼の手を握り返すと、自己紹介を返す。


「狩猟の民なんスね。ってことはめっちゃ身体能力高い....「俺はガオラ・ラジャードだ!!!」


 会話を続けるシヤールの言葉を掻き消して入ってきたのは、2回目の自己紹介を行ったガオラと名乗る獣人の男性。

 最初に会場に入ってきたときに盛大に名を叫んでいたため覚えてはいたが、改めて名乗ってくれた事に感謝しながら挨拶を返した。


「お前らも挨拶しようぜ!」

 ガオラの隣に座る獣の耳を持つ少女は、ガオラに強く肩を掴まれ少し嫌そうな顔をしたが短く挨拶してくれた。


「僕はルイーナ、一応大地の民の生まれだよ」

 そう言うと先程席を立った女性の紹介もしてくれる。

「さっき席立ったリズは、白銀の民で僕の主人。変なことしたら僕が黙ってないよ」


 特徴的な八の字眉と鋭い八重歯は何処か危険な香りを漂わせていた。肝に銘じておくと返すと穏やかな雰囲気のまま自己紹介を終えた。

 カイヤとミナカを省くと、残すは2人だがミナカが言うように自分の名を明かすつもりは無いようだ。ここでは名前も重要な情報のひとつであると言うことだろうか。


「お2人もよろしくお願いします」


 残る2人にも軽く挨拶すると男性は会釈を返し、女性は特に反応を示さなかった。人との付き合い方も戦略の内だ。特に突っかかることもなく話は次に移った。


「とらお君に遮られたけど、ヤヅキさんは狩猟の民ってことは身体能力凄いんスよね?」


 ガオラの見た目からついたであろう"虎男"とのあだ名で呼んだシヤールの質問に応える。


「私は故郷の中でも運動は苦手な方だったので、カイヤと比べれば全然です」


 狩猟の民と名乗りはしたが、実際自分が狩猟の民の血を持っているかは分からない。自分の親の種族を知らないため自身がどの種族なのかも知らない。ただ、身体能力だけに絞れば、狩猟の民の基準値より低い方だ。


 狩猟の民が住む、故郷オルドリーゼには独自の文化があり、18歳の成人までに角を持つ獣を3匹狩らなければならない。自分で狩った獣の角を加工して成人の儀式を執り行うためだ。

 獲物を捕らえ、角や毛皮は加工し大切に使い、肉は自身で調理して生命に感謝し食す。骨や歯も最後まで様々な形で利用し、一片たりとも無駄にはしない。狩猟の民として生きる上での掟を学ぶ重要な文化だ。


 表面上では18歳までにとは言うものの、基本的には10歳から始め、13歳頃までに小型の獣を狙い済ませてしまうのが一般的だ。その頃には狩りは身近な存在となっているため、狩猟の民であれば容易く行えるラインになっている。

 実際、レイラは13歳で終え、カイヤに至っては10歳で狩り終えていた。彼の初めての獲物は7歳で獲った素早い角兎、10歳に狩猟大会で狩った3匹目の獣は美しい鹿だった。しかし、そんな幼馴染とは裏腹に私はなかなか上手くいかず、15歳を迎えた月にやっとのことで終えたばかりだ。大きく出遅れた訳ではないが平均以下であることには変わりない。


「カイヤって、お前だったよな。今度勝負しようぜ、誰が1番か力比べだ!!」


 先程のように会話に割って入るとカイヤの肩を掴み話しかけてくるガオラ。虎の種族であればカイヤに負けず劣らず身体能力は高いだろう。


「おう!絶対負けねぇぜ!!」


 知らぬ間に打ち解けていたようで、腕を組み笑い合う姿から意気投合した様子が伺える。


「そういえば、ガオラってなんで列車で暴れてたの? こんなにフレンドリーで良い人そうなのに」


 ミナカがガオラに向けて言うと、彼はカイヤから腕を離し少し眉に皺を寄せる。


「その話はしたくねぇ。アイツが許せねぇこと言ったんだ」


"俺達がどんな覚悟でここに立ってると思ってんだ"

 彼が列車で叫んでいた言葉だが、相当不愉快な言葉を吐かれたのだろう。何があったのか気になる所ではあるが、言いたくないのであればこれ以上追求することも出来ない。

 質問したミナカも申し訳なさそうに口を噤むと、急に沈んだガオラと共に場の空気も若干気まずくなった。


「そ、そういえば、モノってね本来の口調は結構荒っぽいんだよ」


 しんとした場を取り繕おうと、トワさんが何とか話題を絞り出し口を開く。


「え、あんな仕事人間みたいな口調で、想像つかないっスね」


 話題を変えようと、シヤールも察して話に乗り話題の中心はモノさんへと移る。


「私とアインスとモノは、若い時ロードルを一緒に挑戦した仲間なんだあ。その頃は今とまるっきり別人でね」


 同僚にしてはとても親しそうだと感じていたが、まさかそんな関係だとは考えておらず皆気まずい空気も忘れトワさんの話に耳を傾ける。


「初めてモノに会った時、少し年上の人に絡まれてたの。人生の先輩である年上は敬うべきだろって突っかかっててね、でもモノって叡智の民だから見た目はああだけど年齢は全然上なの」


 真っ黒な髪色だったため想定していなかったがモノさんは叡智の民の生まれなのか。あの種族は皆透き通るような白髪であると聞いていたが染めているのかもしれない。


「それも知らずに延々と説教を始めた挙句モノの周りにいた人達にまで、よく分からない武勇伝語り始めちゃっててね。最初は黙って聞いてたんだけど、最近の若いもんは〜みたいな話を始めたとき流石に耐えられなかったみたいで "青二歳が人生を語るな、戯け" って一括しててね。それがすっごくカッコよかったから声かけて仲良くなったの!」


 叡智の民は見た目だけでは分かりづらいため年齢をよむのは難しい。説教を垂れていた方の勘違いも分からなくは無いが自業自得だろう。年齢を重ねているとはいえ堂々とした姿で少女が言い返す姿は実際にその場にいたら感動するだろう。


「印象ないっスけど、なんか想像出来る気がするっス」


 丁寧な口調ではあるがはっきりとものを言うスタンスは変わっていないため、堂々とした立ち振る舞いから何となく想像は出来る。


「じゃあなんで今はあんな感じなんだ?」


 カイヤがトワさんに問うと周りを見渡し近くに集まるよう合図する。


「モノの能力って自分の言葉に神力を込めて使うんだけど、偶に無意識のうちに使用してしまうこともあるの」


 皆でトワさんの近くにより耳をそば立てると少し声を抑えて話し始めた。


「使者が相手なら神力の扱いに慣れてるから平気なんだけど、君たちみたいな初めて神力に触れる子達が相手だと無意識に力を使って被害が出ちゃうと困るでしょ。だから気をつけて話すために意識して敬語で話すようにしてるんだよ」


 優しいでしょと笑うトワさんだったが、皆はそれどころではなく彼女の背後に立つ黒い影に視線を奪われていた。


「許可なく人のことを話しすぎではありませんか」


 その声に自分の状況を理解したトワさんは恐る恐る振り返ったが時すでに遅し。


「ご、ごめんなさ...」


 その言葉を言い終える前にトワさんが一発殴られたのは言うまでもない。


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