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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第3節 選ばれし者達
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2. 故郷の言葉


 モノさんの合図で、ステージ裏から10名ちょっとの白いフードを被った人々が現れた。


「この会場では力を十分に認識できない方もいらっしゃることが予想されますので、これから10名程度のグループに分かれ別々の会場へ移動して頂きます」


 モノさんが話している間に現れた白いフードの人々は、整列している私達の方へ移動し等間隔で横に整列する。


「皆様が授かった力をご自身のものに出来るよう、我々使者がサポート致しますので今後は彼らの指示に従って下さい」


 カイヤ、ミナカと共に私が並んでいる列には少し見慣れたシルエットの女性が立っていた。


「君達の担当は私だよ」


 フードの間から片眼を覗かせるとニッコリと笑ったトワさん。その笑顔に多少の安心感を覚えた自分に驚きながらも、列車から担当している彼女に親近感が湧いていた。


「では、移動を開始して下さい」


 モノさんが話を締めると、使者達はそれぞれグループをまとめ始めた。


 一体、自分にどんな祝福が与えられるのか、そもそも自分自身の願いを持たない私に祝福は与えられるのか。そして、先程モノさんの祝福の影響を受けなかった理由は...?

 そんな風に積み重なる期待や不安について考えていると、トワさんから声がかかる。


「それじゃ、私達の班も集まろっか!」


 元気な声で呼びかけると私達を含めた8名を集めた。コペケ側から来た人、ワストテロス側から来た初対面の人が混ざり合ったグループだ。


「私がこれから君達の班を担当する、トワだよ!よろしくね〜」


 相変わらずの明るい笑顔で、胸を張り挨拶するトワさん。


「コペケ側から来た人は知ってると思うけど、ワストテロス側から来た人は初めましてだよね、仲良く頑張ろーね!」


 よろしくねと笑う彼女に対し、ワストテロス側から来たであろう人々は殆ど会釈のみの渇いた反応を示した。


「まぁ、仲良くなるのに焦りは禁物だもんね。とりあえず私達の会場に行こうか」


 微妙な雰囲気の中、建物の外に出るとトワさんの後ろをついて歩く。


「挨拶ぐらい笑顔で返したって罰当たらないのに、ちょっと感じ悪いわよね」


 隣を歩くミナカが小声で話しかける。

 ワストテロス側から来ているのは外見から察するに白銀の民2人、夢境の民1人、そして本来の住居はコペケ側であるはずの大地の民が1人、以上の4名だ。白銀と夢境の民はあまり感情を表に出さない種族として有名なため、あの反応もまぁ仕方ないとも言える。


「他種族が集まってるし仕方ねぇんじゃねぇか?それに、公用語が分からない可能性だって......って、あれ?」


 ミナカの意見から庇うように口を開いたカイヤだったが、話の途中で何かに気がついたかのように声を上げる。


「ミナカ、今オルドリーゼの言葉で喋ってなかったか?」


 唐突に何を言うかと思えば、私達の故郷であるオルドリーゼの言葉をミナカが話していたと言う。しかし、私の耳には公用語であるエスペラ語で話しているように聞こえていたし、言われた本人であるミナカも怪訝な表情を見せる。


「あたし、オルドリーゼの言葉は話せないわよ。エスペラ語だって得意じゃないのに」


 多ヶ国語操れるほど賢く無いわ、と否定するが、それでもカイヤは食い下がった。


「いや、間違いない。俺の耳には今も俺の知ってる言葉で返事してた」


 確信を持った表情で言われるが、私もミナカも理解できずに眉を顰めることしか出来ない。最初は自信満々だったものの、俺だけ耳壊れたのか?と段々勢いが落ちていくカイヤだったが、背後から明るい声が飛んできた。


「君、気がついたんだね!これすっごいでしょ!」


 振り返ると手をパタパタとしながら心底嬉しそうなトワさんが会話に混ざる。


「え、やっぱ俺の耳壊れてねぇよな!すげぇよ、トワさん!これもロードルの力なのか?」


 トワさんから声がかかったことで、良かったぁと安堵するカイヤだったが、私含めその場にいたカイヤ以外のメンバーは意味が理解できずにいた。そんな反応に気がついたトワさんは此方の方に向き直り説明を始める。


「神力で満たされてる神域内ではアインスが開発した力が作用してるから、自分が聞きたい言語で相手の言葉を聞く事ができるんだよ」


 自分が聞きたい言語で...?

 つまり、高性能な翻訳が特別な技能を必要とせずにできると言っているのか?


「え、でも、私には皆んなエスペラ語で話してるように聞こえるわ」


 ミナカがそんなトワさんの言葉に反論する。


「それはね、皆んながエスペラ語で会話してるって頭が勝手に認識してるからなんだ〜。切り替えたかったら頭の中で皆んなが自分と同じ言葉で話してるってイメージするの。そしたら、アインスの力が機能するよ」


 トワさんの説明通り、この場にいる人が故郷の言葉を話している所をイメージする。


「ヤヅキ、何か喋ってみて!」


 ミナカから結果を確かめたいと言わんばかりの目を向けられるが、彼女の言葉で私の方が一足早く体験してしまった。


「今の言葉、私にはオルドリーゼの言葉に聞こえました」


 そう言うとミナカは自分の故郷の言葉で聞く事が出来たようで目を輝かせる。


「聞こえたわ、コペケの言葉よ!これも祝福なの?」


 他のメンバーも今のやりとりで体験できたようで皆が自分の知らない技術に感動し、トワさんに説明を求めていた。


「えっとね、会場に着いたらロードル内で重要になる神物を配布するんだけど、それの機能の一つに翻訳機としての役割があるの」


 これくらいの大きさでね、詳しくは後で説明するんだけど、と人差し指と親指で丸を作りながら話を続ける。


「でも、それってロードル内でしか使えなくてね、ここみたいに神域内だけどロードル内では無い場所では翻訳できなかったの。それが不便だからってアインスが神物を研究して自分の祝福と合わせることでみんなが簡単に翻訳が使えるようになったんだ」


 自分の祝福と既存の機能を組み合わせて、新たな翻訳システムを開発......そんな凄い人だったのかとアインスさんのことを思い返す。

私の同期は凄い人なんだよ、と鼻高々に笑うトワさんにメンバーの1人から質問が飛んだ。


「なんでそんな便利な機能教えずにいたんだ?」


 ワストテロス側から来た銀色の髪の男性。雪のように白い肌と髪色から察するに恐らく白銀の民なのだろう。知的かつ冷酷な雰囲気を漂わせているが、心底不思議だというように問いかける姿には私達と同じ様に自分の知らない領域についての興味が漏れている。


「それはねぇ、私も皆んなに教えてあげたらって言ったんだけど...」


 トワさんは眉を下げ笑うと、腕を組みアインスさんの声色に寄せて口を開く。


「"私がエスペラ語嫌いだから開発しただけだし、気づいた人だけが好きに使えばいい"って言われちゃったんだよね」


 自分が使いたくて開発しただけ、そんな規模の話では無いだろう。才のあるものは変わった人が多いと感じる事が多々あるが、彼女もその部類か。


「それに、自分が居なくなったら使えなくなるシステムだし、依存すると良く無いってさ」


 アインスさん自身の祝福を既存の機能に合わせたシステムだから、アインスさんが祝福を使用できなくなれば使えない、それならばと今後のことを考えた上での選択。

なるほど、それなら彼女の意見も納得できる。


「それでも今は使えるんだから教えてくれたって良いと思うんスけどね」


 コペケ側から来たもう1人の青年、印を持たない少年について質問していた茶褐色の彼が口を開いた。


「だよね、だよねー。モノにも言ったんだけど開発者の意向が第一だって言いくるめられちゃった」


 残念だよねーと言いながら笑うトワさん。


「でもみんなは彼のお陰で知ることができたからいいじゃん!お手柄だねぇ」


 そう言ってカイヤの肩をぽんぽんと叩くと、先程より和やかになった雰囲気の中、会場への道を進んだ。


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