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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第3節 選ばれし者達
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1. 祝福


「選ばれし者、願いを抱く方々」


 アナウンスに従い会場中央に集まると、正面にあるステージ上に墨で染めたような黒髪の女性が立っていた。


「迅速な行動、ご協力ありがとうございます。ここまで長旅でお疲れでしょうが、私からロードルについて案内をさせて頂きますので、少々お付き合い下さい」


 女性が口を開きマイク越しに声が届いた瞬間、ザワザワとしていた会場は木の葉が落ちる音ですら聞こえるほど静まり返った。


「私はこの願いの塔の使者を務めている、先導者のモノと申します」


 モノと名乗った彼女は、威圧感などという言葉では言い表せない異様な空気を放っており、その声を聞いた者は自らの意思で彼女の言葉に耳を傾け、指示に従おうと思わせていた。


「皆様もご存知の通り、この場はエスペラに住む者ならば誰であれ、一度は夢に見る"願いの塔ロードル"です」


 彼女はそう話しながら、確かに会場に集まっている私たちのことを見ていたが、紫色の瞳の奥には何か別のものが映っているようにも見えた。


「それぞれが己の願いを持ち、この場にいることと思います。ですが、この塔で願いを手にできる者はたった1人。それは皆様ご存知でしょう。だからこそ、ここにいるすべての人間が自らのライバルであり、敵なのだと心のどこかで認識している」


 一旦言葉を区切ると皆の表情を確認した。


「他の先導者、他の使者が何と言うかは分かりませんが、私からは"必ず友を見つけておくべき"だと伝えておきます」


 列車の中でミナカと話したことを思い出す。仲間は1人でも多い方が良い、心から信頼できる友がいるだけで有利。言葉にするのと違い、難しい事だが彼女の言う通りだ。


「この先、塔の試練の中で争いや裏切りに苦しむことになるでしょうが、その中で1人でも信頼できる友を作っておくこと、簡単ではありませんがそれが願いを手に入れるために1番近い方法です」


 頭では分かっていたとしても赤の他人を信用するのは容易では無い。だからこそ、全員が集まったこの場で、少しでも認識を改められるように言葉にしたのだろう。


「まぁ、友達ごっこをするつもりは無いと言うのも結構ですが、頭の片隅にでも覚えておいて頂けると幸いです」


 トワさんが言っていた"使者はより多くの人がロードルに挑戦して願いを叶えられるように導くお仕事"という意味が何となく理解できた。


「では、先輩からの助言はこの辺りで、本題である祝福について話を始めたいと思います」


 少し声色が明るくなり、次の話題へと移る。"先輩"という言葉を使うと言うことは、彼女もロードルに挑んだことがある、ということだろうか。使者は願いを持つ者を導く、ロードルについて知識を持つ人材として挑戦した経験がある者は使者として理に適っているのかもしれない。

 そして、それよりも"祝福"という単語が気になった。神力や使者など知らないことが沢山詰まったこの場所について、もっと知りたいという好奇心が溢れる。


「早速ですが"祝福"とは、言わば神に選ばれた皆様にのみ許される特殊能力です。神力については神域を越える際に経験なさったと思うので省略しますが、祝福はその神力を利用し、具現化することで使用できます」


 祝福は印を持つ者にのみ許された特殊な力、そしてその力は神力によって扱える。

 何となく理解できるつもりではいるが、自分が特殊能力を扱えるなんて想像がつかない。そもそも、どんな力のことを言うのだろうか、そんな疑問が頭を巡る。


「言葉で説明するとこのような感じですが、正直分かりづらいかと思います」


 会場内の意思を呼んだようにそう言うと、マイクから一歩後ろに下がった。何が始まるのかと皆の期待が高まる中、モノさんは小さく咳払いした。


『自ら願いを持ち、今この場に立つ者どもよ。我らの唯一神であり、ロードルを創造した願いの神"アラクトウィンド"様へ敬意を示せ!』


 先程までの丁寧な口調から一転、高圧的でまるで軍人を連想させるような声色。声を聞いた者は、誰もが彼女を上の立場であると認識し、その指示に従った。彼女の一言で100名以上が一斉に腰を折り、深々と頭を下げる姿は圧巻だろう。


 しかし、全員が示し合わせていたかのように完璧な行動をする中、私は彼らについて行けずにいた。


 ......一体何が起こっているのか。


 私だけ、何も知らされていなかったかのように取り残されている。皆が一寸の狂いもなく同じ動作をする中、思わぬ状況に動揺しつつも何とか周りの人に倣い頭を下げた。


 私にだけ、彼女の祝福が作用していないと言うことか。


 そんな風に地面に向かって考えていると、張り詰めた空気が和らいだ。


「これが私が授かった祝福です」


 マイク越しに聞こえる先程と同じモノさんの声は丁寧な口調に戻っており、その声が聞こえたと同時に段々と皆、頭を上げていく。


 それぞれが「まるで洗脳されたみたい」「思考が乗っ取られたかと思った」「今のは何だったんだ」と口にする中、同じタイミングで顔を上げるとステージ上から感じる鋭い視線と対峙してしまった。

 紫の瞳は獲物を捕らえるようにこちらを見ており、表情の変化は無いものの本能的に恐怖を感じ身体が硬直する。まるで時間が止まってしまったかのように感じる3秒間は、彼女が口を開いたことで終了した。


「突然で驚いたことでしょう。しかし、体験していただいた方が理解しやすいため使用させていただきました。殆どの方は祝福の強力さを感じられたことでしょう」


 まるで、"殆ど"に含まれていないのはお前だと言われた気分だったが、気づかないふりをして次の言葉を待った。


「正確には、我々使者に与えられるものは少々祝福と異なるのですが仕組みは変わりません。」


 慣れれば簡単に扱うことができる、新たな特技とでも考えてと言葉を続ける。


「一人一人願いによって、このような力が与えられます。それが、印を受けたものにのみ許される"祝福"です」


 説明は以上だと言うように言葉を切った彼女は、口角を上げる。


「では、皆様がどんな祝福を受けるのか、始めていきましょう」


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