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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第2節 新たな友情
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10. ライバル


 騒ぎが落ち着いて扉を閉めると列車の中に張り巡らされていた緊張感が解けていくのを感じた。


「怖かった。何とか落ち着いて良かったわ」

 ミナカは自分の席に戻ると背伸びをしながら言った。


「殴られてた奴、大丈夫かな」

 カイヤはまだ、扉越しに心配そうな視線を向けている。もう少し早く間に入るべきだっただろうか、と考えているのが手に取るようにわかる。

「対応に来た人、列車を管理している人みたいだし大丈夫だと思うよ」

 手慣れた様子で迅速に対応していた姿から、安心してと声をかける。


「そうだな。人のこと気にしてる場合でもねぇし」

 そう言うとカバンの中から昨日買った弁当を取り出した。


「騒ぎのおかげで目ぇ覚めたし、朝ごはん食おうぜ」

 差し出された包みを受け取るが、カイヤと違い朝が苦手な私はまだ眠い目を擦り小さな欠伸をする。

「ありがとう」

 昨日コペケで買ったフレンチトーストの甘い香りは、眠たい朝でも食欲をそそる。


「ミナカはご飯持って来てるか?」

 昨日走り回ったせいか、元々朝が苦手なのかは分からないが私よりも眠そうな顔をしているミナカ。

「持ってないわ。自分の身で精一杯だったから」

 背伸びをすると少し笑い、気にしないで食べてと気を配る。


「これ良かったら食えよ」

 カイヤはミナカの言葉を聞くとカバンを開いてもうひとつ包みを取り出す。昨日夜食にでも食べようと話し、購入したサンドイッチだ。

「なにこれ?」

 放り投げられた包みを受け取ると、カイヤと包みを交互に見つめる。


「少し余分に買っといたんだ。この先何があるか分かんねぇし、食べといて損は無いだろ?」

 にかっと笑って嫌じゃなければ食えよ、と声をかける。


「もう、2人には感謝しても仕切れないわ。恩返しだけで旅が終わっちゃいそうよ」

 眉を下げて笑うと嬉しそうに包みを開け、3人揃って昼食を楽しんだ。


 昨日は夜中だったため見えなかったが、日が登った今、窓から見える景色は青く輝く海が広がっている。

 水平線の先には何も見えない。海の真ん中を走っているという事実を理解して、嬉しくなった。


 印を持つ者にのみ許された海上列車の旅。船とは違った特別感に心躍る。


「そういえば、2人ってどういう関係なの?親しそうだけど」


 美味しそうに頬張っていたサンドイッチを飲み込むと、突然思い出したかのように質問を投げかけるミナカ。

 友達?兄弟?恋人?と矢継ぎ早に聞いてくる彼女を前に、カイヤと視線を交わす。


 種族それぞれの特徴は、2つの異なる種族の子が生まれた場合混ざることはなく、どちらか片方の特徴のみを強く有するという性質がある。


 私は親を知らないため、どの種族に属しているか分かっていない。

 "天空の民"のように翼を持っていたり、"結束の民"のように多眼であったり、"大地の民"のように獣の特徴が現れる種族であれば直ぐに種族が分かるのだが、特徴が表面に色濃く現れない種族であった場合には分かりづらい。


 カイヤは両親とも"狩猟の民"であり、体力や筋力などの面に特徴が現れる種族。身体特徴の情報が少ない私は、狩猟の民とも取れるし、身体的特徴の薄い他の種族とも取れる。


 つまり、血の繋がりが有るようにも、無いようにも見えるというわけだ。


「血は繋がってないけど、兄弟みてぇなもんだな。物心つく前から一緒にいるし、友達と言うよりは家族だ」

 カイヤはそう言うとこちらを見て、そうだろ?と同意を求めてくる。

 その言葉に口元を少し緩め頷くと、私達の反応を確認したミナカは恋バナ期待してたのに、と少し残念そうにする。


「でも、カップルだったら一緒にいるの申し訳ないなって思ってたから助かったわ」


 さすがに恋人の邪魔するのは気が引けるもの、と笑うミナカ。


「それじゃ、印は2人一緒に発現したの?」

 食べ終わったサンドイッチの包みを丸めて鞄にしまうと、ミナカは質問を重ねる。


「まぁ、だいたい同じくらいですね」

 そう答えると、ミナカはいいなぁーと声を漏らした。


 ロードルの旅のスタートは基本的に孤独なものが多い。家族や友人と共に印が発現する場合はそれほど多くはなく、旅の道中で仲間を得て進んでいく、といった物語をよく目にしてきた。最初から仲間がいる、そして何よりライバルに囲まれた環境下で確実に信頼できる存在がいるというだけでも、ロードルの中ではそれなりに優位な立場に立てる。


 仲間とはいってもロードルに挑む中で互いに利益があった場合に結ばれる友情。仲良く一緒に進んだとしても、違う願いを抱えた者たちは最終的にはライバルであり、自分の願いを手にできるのは1人だけだ。


 それらを踏まえてミナカは2人で挑む私達を羨ましいと感じているのだろう。


「1人で心配してたんだけど、ここで2人に会えて良かったわ。ロードルで最終的にライバルになるとしても、助けてもらった分の借りは必ず返すからね」


 そう言って笑うと、約束よ、と両手の小指を差し出すミナカ。カイヤと共に差し出された指切りに応えるとミナカはとても嬉しそうに絡めた指を振った。


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