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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第2節 新たな友情
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9. 衝突


 ごちゃごちゃとした感情を抱えて迎えた夜は浅い眠りに包まれ、気がつけばロードルへ向かう列車の中で私達は新しい朝を迎えた。


「てめぇ、舐めてんじゃねぇぞ!」


 見知らぬ人の怒号と共に。


「何だ!?」

 部屋の外から聞こえる男性の怒鳴り声に驚き、皆眠りから覚めた。


「......外で揉め事みたいだね」


 まだ覚醒しきっていない頭に声が響く。顔を顰めながらカイヤにそう言うと、何かが壁にぶつかる音も同時に聞こえてくる。喧嘩でもしているのだろうか。


「神の領域に向かう列車だってのに、物騒ね。こんな朝から」

 まだ眠そうな目を擦り、ミナカが欠伸混じりに呟く。

 外を見ると水平線から少しだけ頭を覗かせた日の光が辺りを照らしている。時刻は6時前、と言ったところだろうか。


「俺達がどんな覚悟でここに立ってると思ってんだあ"ぁ?」


 カイヤが扉を少し開き顔を覗かせると、先程よりもハッキリとした声が室内に響く。

 そっと扉の隙間から目を凝らすと、2部屋隣の全開になった扉の前に仁王立ちしている獣の耳を持つ男性と、その前に投げ飛ばされて頭を抱えて蹲っている少年の姿が見えた。


「それくらいにしとけって......」

 同室だったであろう人達が止めようと肩を掴むが、その腕を振り払い脇腹に蹴りが入れる。


「言って良いことと悪いことがあんだろうがぁ"」

 少年が呼吸する間も無く、次々に繰り出される拳。段々と息も上がっていき、少年には傷が増えていく。

 一息つくと男は叫びながらぐったりとした少年の襟首を掴み掲げ上げる。


「さっき言ってたこと、もういっぺん言ってみろよ」


 獣のように低く唸ると歯を強く噛み締めながら少年に向かって言葉を吐く。

 しかし、少年は限界が近いようで言葉にならない音を口から漏らしていた。


「流石にやばいんじゃない?」

「誰か駅員を......」

 なんて声がざわざわと広がり始めた。

 いつの間にか廊下を傍観している人は増え、騒ぎも大きくなっていく。


「......止めてくる」

 扉を今にも割れそうな程強く握っていたカイヤが部屋から飛び出そうと一歩踏み出す。


「カイヤ、待って」


 カイヤは普段 "揉め事は出来る限り当事者同士で解決するべきだ"という思考であり、今回も堪えていたが少年の状態から、流石に止めるべきだと判断したようだ。

 しかし、今行っては火に油を注いでしまう。それに......


「神聖な場で、君は一体何してるの?」


......適任者が到着したようだ。


 焼きたてのパンのように柔らかな色合いの、ふんわりとした髪の女性。年齢は20代前半と言った所だろうか。この列車に乗る際に手続きを行った人と、少しデザインは違うが同じ制服を着ている。どうやら列車を管理している団体の人間のようだ。


「そこら辺にして、手離しな?」


 一瞬前を横切っただけだが、ゆったりした口調と優しげな笑顔とは裏腹に、想像できない程の威圧感を感じる。


「あ"ぁ?んだ、てめぇ。邪魔すんな、俺はコイツと話があんだ」


 一歩一歩、茶髪の女性はゆっくりと近づいて行くが、興奮状態の彼は一切聞く耳を持とうとしない。


「優しく言ってるうちに聞いた方がいいよ?」


 男の目の前まで近づくが対応は相変わらずだ。あの少年に相当執着している様子で女性の声は届いていない。


「それじゃ、しょうがないね」

 そう言うと制服のジャケット裏から何かを取り出す。


「ちょっと寝てていいよ」


 その一瞬で男はやっと女性の違和感に感づいたが、男が対応する前に一気に間合いを詰めると、彼女は手に収まる大きさの何かを男の腕あたりに突き刺した。


「何だ?!」

 突然の出来事に声を上げる男。だが、どうやら痛みと言うよりは驚きによる声のようだ。

 原因である女性を振り払おうと少年から手を離して暴れるが、彼女は払い除けられる前に素早く距離をとって笑いかける。


「ごめんね、痛かったかな」

 そう言う彼女が手に持っている物のは、注射器のような形をしている小型の武器のようだ。しかし、注射器であれば液体が入っているべき場所は空。あの一瞬で男に注入を済ませたのか。

「何しやがった!」

 鍛え上げられた肉体には、あまり痛みは感じていないようだが、注射器のような物から注入された液体の効果に動揺する。


「"トワ"、終わった?」


 男が針を刺された腕に目を向け声を上げると同時に、列車の奥から、もう一人制服を着た女性が現れる。白髪に眼鏡をかけたその女性は、注射針を持った茶髪の女性に声をかけた。


「あ、"アインス"!」

 もう一度繰り出された男の腕を容易く避けたあと、白髪の女性の呼びかけに振り返る茶髪の女性。

 嬉しそうに駆け寄っていく様子から制服を着た2人は親しい関係であることが感じられる。仲のいい同僚といったような関係なのだろうか。


「てめぇ、何しやがったか聞いんてんだろうが!」

 何を注入されたのかと狼狽え、少々思考が停止していた様子だったが、やっとのこと状況を理解した男。勢いを取り戻すと、現れた白髪の女性には目もくれず、注射した茶髪の女性に殴り掛かろうと勢いよく拳を振り上げた。


 しかし、振り下ろす途中で突然糸が切れたように白目を剥き頭から前方に倒れ込む。


「今終わったよ!」


 茶髪の女性は男を一瞥すると白髪の女性に向き直り、嬉しそうに報告する。


「効き目早すぎでしょ、量間違えてない?」

 白髪の女性はジャケットから片手サイズの端末を取り出すと、何かを入力しながら声をかける。

「んー。多かった、かも?」

 えへへと笑いながら、怒られるかな?と言う女性からは先程の威圧感は消えている。

「とりあえず"モノ"に報告してきて。こっち片付けるから」


 茶髪の女性がその言葉に返答し車内の奥に消えると、白髪の女性は端末をしまい、廊下を見物していた私達を含めた多くの人に目を向ける。


「とりあえず、騒ぎは落ち着いたので、それぞれ自分の車室にお戻り下さい。到着は12時だから、それまで休んでおいた方がいいよ。」


 連絡と共にアドバイスのような言葉をかけると、"お騒がせして申し訳ありません"という声かけをして、倒れた男と少年の対応へと向かった。

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