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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第2節 新たな友情
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6. 車内


 時刻は午後11時30分。

 駅舎の中心に置かれた大きな時計は、この街を離れる時間を示していた。


「そろそろ乗ろうか」


 預けていた荷物を受け取ると、人だかりの出来ている入り口を横目に、手続きを済ませた人々が並んでいる乗車口を指す。


「いよいよだな」


 ここからは後戻りは出来ない。

 住み慣れた土地を離れ、いよいよ願いの神が待つ"ロードル"へと向かう。


 初めて乗る海上汽車に心躍らせながら、この先への不安や恐怖を紛らわせるかのように笑った。


「楽しみだね」

「だな」


 列に並ぶと、5分もたたずに中へと案内された。


 車内に一歩踏み入れると、豪華でありながらも派手過ぎない、細やかな美しさから感じ取れる上品な内装が出迎える。

 片側が1部屋4人程度の個室の席になっており、反対側の廊下には13族をモチーフにした飾りが並んでいる。


「すげぇな」

 見たことない美しい列車に2人して感嘆の声を漏らした。


「そういや、俺たちの席どこだ?」

 荷物を預けた時に受け取ったチケットには座席の指定番号などは書かれておらず、手続きをした際にも特に指示はなかった。


「自由席、なんじゃないかな」


 少し前を歩く人達が、"前の方に座ろうよ!" "一緒に座ろうぜ"などと会話している声が聞こえる。


「みたいだな」


 そう言うと周りを少しきょろきょろと見回し、一つの扉の前で立ち止まるカイヤ。

「じゃここにしようぜ」

彼が手をかけたのは、狩猟の民のモチーフが正面にある部屋だった。

「そうしようか」


 狩猟の民の国である、私たちの故郷オルドリーゼ。弓矢と剣、そして中央に獲物の角と的が付いた飾りだ。

 カイヤの選択に同意すると、目の前の扉をガラガラと引いた。


 扉の先には、外の美しい景色が楽しめる大きな窓と如何にも高級そうな赤い布があしらわれた椅子が、特別な旅路を見守るかのように待ち構えていた。


「流石だな。中まで完璧だ」


 扉を閉めると、街中を観光して疲れた脚を休める。柔らか過ぎず、硬過ぎない、絶妙な座り心地に感動しながら、乗車時に受け取った自分達の荷物の整理を始めた。


「まだ夢の中にいるような気分」


 出発時間が迫ることを伝える放送を聴きながら、ここまでの出来事に思いを馳せる。

思いもしなかった印の発現で始まった旅。大切な故郷オルドリーゼを離れて辿り着いた国コペケ。今日一日で初めて見る沢山のことを経験できた。


 しかし、ただの旅行気分もこの汽車を降りる頃には抜けなければならない。

 ここから先は、神の領域。

 自らの手で願いを手に入れるため人々が奮闘する地。生半可な気持ちでは自分の願いを知ることなど出来ない。誰よりも努力して自分の未来を掴まなければならない。


「夢だったとしても、それはそれで楽しめばいいじゃねぇか」

 ぼーっとしていた私の肩を叩くと、不安を拭い去るように派手に笑うカイヤ。

「そうだね」

 カイヤにつられて笑みが溢れる。


 そうだ。

 たとえ、どんなことがあったって全て私の物語の1ページに過ぎない。一瞬一瞬を楽しんで、最高の物語を編み上げるとリアムさんと約束したんだから。心配してる暇なんてない。


「楽しみだね」


 もう一度自分に言い聞かせるかのように、この先の旅路を考えながら口にした。


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