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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第2節 新たな友情
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5. 赤い竜巻


「美味かったなぁ!」


 新鮮な海産物で満腹になり満足げなカイヤ。

 駅舎に荷物を預け、海辺のレストランで昼食を食べ終えた。

 今は移動時間用の軽食の購入や、お土産の目星を付けるために出店の散策などファリスの街を観光をしようと店を出たところだ。


「オルドリーゼの肉には負けるけど、ここの魚もめっちゃ美味いな」


 オルドリーゼの中でも内陸の方に住んでいた私達は、加工が施されていない新鮮な海産物を口にする機会は多くはなかった。


「特産品の紅茶もいい香りだったし、果物のタルトも美味しかったね」


 薬学に精通している幻想の民が住む国コペケでは、薬草の知識を活かした紅茶の葉が特産品となっている。他にも用途に合わせた様々な調味料、香辛料が有名だ。


「だな。せっかく来たのに1日しか居れないのが残念だ」


 ロードルへ向かう汽車が発車するのは夜。日付が変わると同時にこの国を出ることになる。


 美味しいものも、まだ見たことのない新しいものも、沢山詰まったこの街にいられる時間も後わずかだ。


「明日出発してもいいけど、何かあったら大変だからね」


 ロードルの門が開く25回目の夜までの間、汽車は毎晩発車する。最後の発車まで今日を含めて残り9回。まだ余裕はあるがこの先何があるかわからない。行動は早いに越したことはないだろう。


「そうだな。またいつか来れるしな」


 カイヤの言葉に頷き、この後はどこに行こうかと話始める。


 現在の時刻は午後4時。


「あの店で軽食でも買っておこうか」

 指差したのは地元の人が利用しているような小さな店が立ち並ぶ小道の先だった。

「いいな。美味しそうな匂いするし行ってみるか」

 大通りから外れて少し入り組んだ道に入る。


「こうゆう雰囲気も悪くないな」


 大通り程ではないが、多くの店が並び食べ歩きしやすい軽食や小さな小物などが並んでいる。


 まばらに人が行き交う道を歩きながら観光していると、前を歩く人々を掻き分けこちらに向かって走ってくる人の姿が見えた。

 赤い髪の恐らく同年代くらいであろう女の子は何かから逃げるかのように風を切っている。


 段々と近づいてくる彼女の進行方向を察して邪魔にならないように道を空けて避けると、彼女もそれに気づいて横切ろうとした。


「うわぁ!」


 しかし、通り過ぎる直前で小さな段差に足をかけてしまい重心がずれる。

 転びかけた彼女へとっさに片腕を伸ばし身体を支えてあげると、腕にしがみ付きなんとか倒れずに持ち堪える。


「大丈夫ですか?」


 身体から手を離し距離を取ると最低限の声をかけた。


「nemog!...otagira」


 橙色に燃える瞳を此方に向け、申し訳なさそうに話すが、私達がコペケの言葉を理解できないことを察して言語を切り替える。


「助かったよ!ありがとう」


 少しカタコトではあるが共通言語であるエスペラ語で感謝を伝える彼女。

 だがそれどころではないようで、体勢を立て直して軽く服を叩くと後ろを警戒する様子を見せる。


「ごめん今は急いでるから、いつかお礼するわ!」


 真っ赤な髪の毛を翻し地面を蹴り上げると、呼び止める間もなく走り出した。

 あっという間に小さくなった彼女は角を曲がる前に、此方に向かって手を振り街の中へと消えていった。


「まるで竜巻だな」


 後ろ姿が見えなくなるとカイヤがぽつりと呟く。


 彼女が走って来た方向を見つめながら2人して何だったのだろうかと話すが、一つ目の竜巻が過ぎ去り時間が経たぬうちに二つ目の竜巻が訪れた。


 どうやら先程の赤髪の子が逃げている原因であろう人物は、リアムさんより少し若く見える茶髪の女性だった。



「...ahokona,ukattam」


 少し乱れた息を整えると、女性は私たちの方へ歩いてくる。


「さっきこの通りを赤髪の女の子が走っていかなかったかい?」


 流暢なエスペラ語で、先程の出来事を知ってか知らずか質問を投げかける。


 髪色や顔の特徴から見ても親子には見えないが、親しい間柄であると推測できる口調に、必死に逃げてきた彼女の姿。

 この場合、この場合どちらに非があって、どんな理由で追いかけているのか理由が分からないため、どちらの味方をしても面倒な事に巻き込まれる可能性がある。


「あちらの方向に走っていくのを見ましたよ。ただ、人通りもあったのでどっちの方向へ向かったかまでは......」


 赤髪の女の子が走って行った先の道は二手に分かれている。見たことは伝え、方向は知らないフリをする。これでどちらにも不利益がない状態を作り出そうと考えた。


「そうかい。引き止めちゃって悪いね。ありがとう」


 そう言うとそれ以上は追求しようとせず、女性は赤髪の子が向かった方の道へと消えて行く。タイト目なパンツスタイルでヒールをものともしない上品な走りに、思わず尊敬の目を向けた。


「なんで反対の道言ってやらなかったんだ?」

逃げるのを手伝ってやっても良かったのに、と言うカイヤに、無闇に人の問題には首を突っ込まない方が良いと諭す。

「理由が分からないのに、どちらの味方も出来ないでしょう」

と言うと「確かにな」と納得した様子を見せた。


「まぁ、逃げてた方は"願いの印"あったし、そのうち話聞けるかもな」


 あの一瞬で印を見たカイヤの観察眼に驚きながらも、何事も無かった無かったかのように歩き出した彼に並んでファリスの観光の続きを楽しんだ。


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