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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第2節 新たな友情
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3. 旅の始まり


 ロードルへ続く道は2つ。

 白銀の民の国 " ワストテロス " と幻想の民の国 " コペケ " から伸びる、海上を走る汽車だ。私達が生まれ育った狩猟の民の国 " オルドリーゼ " のある大陸から1番近いのはコペケの駅。

 今は駅に向かうために馬車で移動している最中だ。



「すっげーな!」

外の見慣れない景色を眺めながら、カイヤがはしゃぐ声が聞こえる。


 コペケの駅までは大分距離があるため少し値が張るが、移動速度の速い"ハグル馬の馬車"で移動している。

 機械仕掛けの馬が目的地まで馬車を引いてくれるため御者が居らず、夜でも止まらずに移動できる。そのため、普通の馬車なら丸々1ヶ月かかる経路を1週間程度で移動することが出来る。

 その代わり値段も3倍以上と高価な移動手段だが、ロードルに着く前に疲れてしまってはいけないとリアムさんが用意してくれていた。目的地に到着したら、ハグル馬が自分で帰宅するため、その点も安心だ。


「こんな速ぇとは思わなかった」


 窓から身を乗り出し目を輝かせる姿は、まるで大型犬のようだ。

 かくいう私も、ハグル馬については資料で事前に見ていたが、思っていた以上のスピードに興奮している。スピードの割には大きく揺れることもなく技術の高さに驚き、その快適さにも感動する。


 私もカイヤもオルドリーゼを離れるのは今回が初めてだ。何もかもに興味が湧く、旅の楽しさとはこういうことなのだろう。


「来週のの正午過ぎにはコペケに着く予定だって」


 緑に包まれた窓の外の景色から鳥の囀りが微かに聞こえる。

 家で作ってきたサンドイッチをカイヤに手渡すと、満足そうに食べ始めた。外の風を感じながらの食事は、まるで移動式のピクニックでもしているかのような気分だ。


「国ひとつ跨ぐのに、そんだけしか時間かかんねぇんだな」


 カイヤは、感心しながらもう一口パンの端を齧り、「これ美味いな」と笑う。

 そんなカイヤを見て、私もピーナッツバターと苺ジャムがたっぷり詰まったサンドイッチを頬張り、カイヤとは逆の窓から外を見渡す。


 青い空と輝く緑の中、小さな鳥達が馬車に負けじと羽ばたいている姿が目に映った。


「ねぇ、カイヤ」


 外の景色から視線を戻さずカイヤに話しかける。


「本当によかったの?」


 それはカイヤが一緒に行くと言ってくれた時からずっと心の奥で抱えていた事。


「カイヤにとっての家族は、私だけではないでしょ」


 そっぽ向いたままの私に、どう言う意味だ?と首を傾げるカイヤ。


「リアムさんを一人にして私と一緒に行くこと、それはカイヤの願いに反しないのかなって」


 短く息を吸い込むと、やっとの思いで覚悟を決め、分かりやすく言葉を繋ぎかえた。

 カイヤの願いは、"大切な家族の側にいること。悲しいこと、苦しいこと、全部支え合えるように、どんな時でも側にいること"。私と共にロードルへ行くならば、大切な家族であるリアムさんと離れることになる。

 それは彼の願いに反してしまわないのだろうか。


 本当はずっと前から感じていたこと。

 でも、もしも彼の意志が変わってしまったらと考えると、一度持った希望を捨てるには勇気が足りなかった。

 臆病な私は、もう戻ることのできない今になって言葉にするような狡い事しか出来なかった。


 ゆっくりカイヤの方へ目を向けると、真剣な表情で言葉を探しているカイヤと目が合う。


「そりゃ、親父残して行くのは心配だけど」


 質問の意図を汲み取り、少し考え込むようにして返答を続ける。


「俺が一緒に行くのは親父の願いでもあったと思うから」


 そう言うと爽やかな風にあたりながら、少しずつ言葉にした。


「昔から言われてたんだよ。ヤヅキがどっか遠くに行くときは必ず付いてやってくれ、自分は一人でも大丈夫だから大切な兄弟を守ってやれって」


 ひとつひとつ思い出すかのように言葉を並べていく。そんなカイヤを通して、私の道を最善のものにしようと考えてくれたリアムさんの想いが伝わってきた。


「あの頃は何のことか分からなかったし、比喩みたいなもんだと思ってたけどよ。あの時、使者の話聞いて親父が言ってたのはこのことだったんだなって分かった」

 風で乱れた髪をかきあげると私に視線を合わす。

「だから迷いもしなかったし、願いの印も発現したんだって、俺は思ってる」


 カイヤの真っ直ぐな瞳は私の不安を拭うように照らしてくれた。


「......そっか」

 なかなか聞き出せなかった自分の情けなさを恥ずかしく思うと同時に、なんて良い家族を持ったのだろうかという誇らしさが溢れてくる。


「だから心配すんな。俺はお前のために俺の意志で動いてる。俺は俺の決断を後悔なんてしてないから」


 そんな暖かい言葉が、新しい旅路へ挑む私の背中を押すかのように響いた。


「ありがとう」


 心からの感謝は暖かい太陽の光と共に溶けていった。


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