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RORDOL -願いの塔ロードル-  作者: 神山
第2節 新たな友情
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2. 門出


 ロードルが存在するのは海を越えた先、この世界の中心。

 沢山の不安はこの1週間で膨らんでいったが、それと同時に好奇心と期待も感じていた。



"何事も楽しんでいる方の勝ち"


 これはエリシアさんがよく言っていた考え方だ。身体が弱く、体調を崩すとなかなか外に出られなくなったエリシアさん。そんな彼女は体調を崩すと、ベットの上に沢山の本を並べて心底楽しそうに読んでいた。散歩の約束をしていた日に雨が降った時は家の中で豪勢なお茶会を開き、部屋の片付けをするときはゲームのように私とカイヤを楽しませた。

 嫌なこと、不安な事は楽しむことで良い方向に転換できる。エリシアさんの大切な教えだ。


「いよいよだな」

 準備を終えた私達を見つめ、リアムさんはぽつりと呟いた。爽やかな朝の風が部屋の中を通り過ぎ、リアムさんの瞳は小さく揺れる。

小さい頃あんなにも大きく見えていた背中は寂しげな影を落としていた。


「ヤヅキ、お前の運命を知っていながら何もしてやれなくてすまなかった」


 自分の不甲斐なさを噛み締めるかのように言う姿に、不安や恐怖よりも寂しさが溢れ胸が痛くなる。

 リアムさんは私に託された願いについて話す時、"自分のした選択が正しいと信じてきた"と言っていた。


 自分の選択を信じる、それは悩みを解決する方法として彼が挙げたうちのひとつだ。10年間、どうするのが私に取って最善の選択なのか悩み続け辿り着いた選択だろう。

 誰にも相談できず、託された願いが消えることを祈りながら過ごしてきた日々は苦しかったに違いない。


 そんな人を誰が責めると言うのか。確かに驚くことばかりで、逃げたいと言う気持ちも正直まだ残っている。信じられない気持ちでいっぱいだが、それは断じてリアムさんのせいなんかじゃない。


「リアムさん、私は大丈夫です」

そっとリアムさんの手に自分の手を重ねる。


「カイヤも側に居てくれるんですから心配無いですよ」


 一人で不安の中を行くのと、二人で手を取り合って進むのを比べたら後者の方が良いのは明らかだ。


「そうだ、俺がいるから気にすんな。むしろ、俺達が出てって親父が寂しくないか心配なくらいだ」


 2人でリアムさんの方に近づくと、片方ずつ肩をとんとんと叩く。



 ロードルに挑戦する者の中でも、帰るまでに1年かからない人もいれば5年以上かかる人もいる。それは、どれだけ上に行けたかという物差しにもなっている。

 使者の話通りならば、私は最後の一人まで残り、神の御前である頂上まで行かなければ第二のバッドエンドに道が切り替わることになる。


 つまり、5年以上は家を空けることが前提だ。その間、リアムさんは私達が無事に帰ってくるかどうか不安な毎日を過ごすことになるだろう。


 だから、心配しなくとも大丈夫だと今のうちに沢山伝えておきたい。私達が帰ってくるまで元気に待っていて欲しい。私が望むのは謝罪なんかじゃなく、リアムさんの笑顔だ。


「そうですよ。だから、しっかり毎日ご飯食べて、元気な姿で私達を迎えられるようにしていて下さい」

笑ってそう言うとリアムさんは今にも泣きそうな笑顔を浮かべる。


「お前達は本当に。優しく強い子に育ったな」


 まだ不安げではあるが多少安心した様子で、ゆっくりと私達を優しく抱きしめる。


「ありがとう。私は幸せ者だ」

暖かい抱擁に思わず視界が揺れる。溢れないように笑うと私もカイヤも必死に抱きしめ返した。


「私の自慢の子供達。お前達の未来が素晴らしいものであることを願っているよ」


 この先の道のり、何が起こるのかなんて分からない。だからこそ、今の幸せを忘れないように、包み込む腕を強く握る。


 逃げることのできない運命なら、物語の主人公にでもなった気分で楽しんでしまおう。

そんな気持ちで自分を奮い立たせ、精一杯の笑顔をリアムさんに見せた。


「私たちの物語を楽しんできますよ」

「帰ってきたらいっぱい聞かせてやるから楽しみにしてろよ、親父」


 リアムさんの暖かい笑顔は見送りの言葉と共に心のフィルムに残された。


「あぁ。いっておいで」


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