第9話【新たな道へ】
「話せば長くなるが、俺は見たくないモノをたくさん見すぎた」
俺はここまでのことを翠歌に全部話した。
お前がいなくなっても続けて来た、音楽の道。
そこまでの残酷な呪われた人生。
「・・・そっか、ごめんね、辛いこと聞いて」
そんな悲しい顔で見ないでくれ。
君がそんなに傷つく必要もない、胸をギュッと握りしめるほど。
心を痛めないでほしい。
「俺も、続けていたかった、でも、知れば知るほどこの世界は辛くて、なんか、俺が思っていた、俺が好きだった世界はどんどん汚されて行って、それ以外でも、現実では音にかかわっていった人が残酷な運命を辿った、俺は夢を追いかけるのがつらくなった」
いつもよりもさらに暗く、元気のない声で語る俺に対して。
緑歌は優しい声で俺に言った。
「お前になにがわかるんだって、思うかもしれないけど、私にもわかる、きっと君と同じ立場だっただったら、私もやめてたから」
こんなにも優しいやつだったんだ。
いや、知ってたけど、こいつが改めて、すげぇ救われる存在だったんだって。
なんか、しばらく泣いてもいなかったし、笑ってもいなかったけど。
今なら少し、微笑めるかもしれない。
「ありがとう、翠歌」
するとも翠歌もにっこりと微笑み返した。
「どういたしまして、人助!」
俺たちはできるかぎりの今と過去を話し合った。
また、こいつと話せると思っていなかったから。
俺は嬉しくて、たくさんの思い出に浸っていた。
「・・・じゃあ、今はみんなどこにいるかわかんないだね」
「ああ、とりあえず、俺はもう一度音楽に返ってくると決めて、真白とは、自暴自棄になった時からの付き合いで一緒にいるが、HYOやZINまでのことは・・・」
「また、みんなと一緒に歌、作れるといいな」
少し寂しそうにしているのにどこか微笑みにも見える。
不思議な奴だ、お前は。
「・・・作れるよ、お前が返ってこれたなら、きっとみんなもここに戻ってくるよ」
そんな彼女に俺は少し、明かるげに答えた。
すると彼女は嬉しそうに言う。
「うん!だから、私もまた始めるよ!」
「翠歌・・・」
「もう一度、今度は君とまた楽しい歌を!」
ノリも良い、そしてどんな状況においても挑戦することをやめない。
その割り切る心と、決断力、精神力の強さ、参るよ本当に。
一度は死んじまって、本当ならこんなことすぐには理解できないはずなのに。
それでも、また音楽の世界に返りたいか。
お前は凄いよ、翠歌。
「ありがとう、翠歌、俺もお前を・・・みんなを世界に連れていく」
今度は、もう夢を諦めたりしない。
俺がここに返ってきたのは、お前の歌を世界に響かせるためだからだ。
お前が返ってきたのなら、なおさら、絶対にやめたりしない。
ここから、始まるんだ、新しい挑戦の道が・・・!