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電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
プロトストーリー
7/48

第7話【ただいま】

すぐさま作業に取り掛かるためにいつもの様にログインしてマイルームに到着した。

部屋には俺が作ったAIが椅子に座っていた。

「おはよう、翠歌」

こちらが入って来たのが分かったのか、顔が振り向いた。

「・・・?」

「(あ、思わずあいつの名前で呼んでしまった)」

夢で見た彼女のことを忘れられず思わず彼女の名前でAIを呼んでしまった。

きょとんとしたAIの座っていたソファーを横切って音楽を作るセッティングを始める。

「今日も頑張って音楽作って、早くお前に歌ってもらわなきゃ・・・」

少し俺は考えた。

なにかおかしいことに気づいた。

そう、なぜ彼女はこちらの声に反応して振り向いたのか。

そんな機能も学習させた覚えもない。

まだできることは音に合わせて声を出すことぐらいだ。

それになにか変だ、表情が人間の不思議そうにしている顔そのものだった。

そんな表情豊かに作った覚えもない。

俺は、このAIがどこか人間のような感じを持っていたことに疑問に思った。

振り向いて彼女を確認するために座っていたソファーに近づく。

AIは少し恥ずかしそうに眼をぱちぱちと動かした。

まじまじと見る俺に対して顔を少し背けるそぶり。

これは人だ、人が動かしている動き・・・!

となれば誰かがコントロールしているのか?

真白か?

だが、それはない、アカウント一つにつきアバターの身なりも一つ。

となればサブアカウントの説か・・・いや、それもない。

本人確認が必要なこのサイバー・ファンタジアでサブアカウントを作るのは困難・・・。

俺はAIを誰が動かしているのか確認するためにステータスを開いた。

「・・・不明?AIならAIと表示されるはずだが!?」

驚きのあまり、声を強くしてしまう。

そして、俺はまさかと思った考えがよぎった。

少しゴーグルを外して、パソコンを確認した。

そう、繋がられていたスマホがあいつの壊れたスマホだった。

昨日寝ぼけてアイツのスマホをさしてしまったんだ・・・。

ゴーグルを再びかぶって俺は、このAIに呼びかけた。

「翠歌、お前なのか?」

震える声で、何も根拠もなくそのAIにアイツの名前で呼んだ。

すると、彼女は微笑み嬉しそうににっこりと答えた。

「うん、そうだよ・・・人助!」

声はそのままだった。

昔、最後に聞いたあの声のままだった。

俺は涙が止まらなかった。

泣いても、泣いても、抑えきれなかった。

「翠歌・・・ッッ!」

ガッッ!

「人助!どうしたの?」

感動のあまりそのまま走って抱きつこうとしてしまった。

机に腹ぶつけて倒れてしまう・・・。

「うっ・・・ここがバーチャル空間なの忘れてた・・・」

「・・・フフッ、相変わらずだね人助は」

「・・・まったくだ」

けど、痛みなんかすぐに忘れてしまうくらいどうでもよかった。

俺はすぐに立ち上がり、彼女に、翠歌に告げた。

「おかえり、翠歌」

すると、翠歌も泣き微笑み言った。

「ただいま!人助!」

後ろに手を組んで明るい声で答えてくれた時、確信した。

アイツの魂が、ここに来たんだと。


止まっていた運命の歯車が動いた気がした。

錆がはがれる様に、また時間が進んだ気がしたんだ。


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