表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
第三章【情熱のベース】
48/48

第1話【ゲリラ参加】

キュラララ!キュララララッ!ドゥーン!

鳴り響くベースがリズムを刻む。

パン!パン!パン!

クラップから伝わるもっと見せてくれよと叫ぶ声が聞こえる。

「(どうして・・・どうしてこうなった!!)」

俺は満身創痍の中何も考えずただ二人の為にベースを奏でる。

そして踊り、見せる2人は何をしているかと言うと。

「ヘイ!アイドルだかAIだかなんだかしられねぇが、人間が信念のまま貫いた生き抜いた人生をなめんじゃねぇぞ人工AI」

「なめてはないよ、けなしてないよ、生きている様で生きてないよ、でも楽しいよ、感情も純情もラップもマップもわかんないけど頑張るよ!」

双方なんとなくそれっぽいような全然違うようなラップを繰り広げていた。

これはラップガチ勢が見たら怒る奴や・・・。

そしてオマージュ元もきっと怒る奴や・・・。

こんなふざけているとしか思えない即興ライブ・・・じゃなくて人気アイドルのバーチャルドームライブはゲリライベントもありながら大熱狂で幕を閉じる。

終わった後は控室に移動して三人で話すことになった。

「お疲れ様です、お二人さん♪」

ニコニコと余裕の笑みも見せるキャットちゃん。

「つ・・・疲れた・・・」

「俺も・・・」

俺とアープル様は完全に意気消沈だった。

まさか、2人で言い合っていたところをスポットライトが浴びて発見されそのままステージに連れていかれてラップをさせられるとは思わなかった。

俺は思わずため息をついて言う。

「ステージに連れていかれるなら今後はイベント行きたくないでゲス・・・」

と言うとキャットちゃんは笑いながら言った。

「ははは!参ったか!」

「この人工AI壊れてない!?」

あまりにも奇怪な返しにちょっとツッコみたくなってしまった。

大丈夫なのかこのAI・・・。

と、俺がツッコみを入れていた時にアープル様が口をはさむ。

「まあ、過去に例を見ない斬新なライブは正直私は良かったぞ・・・出演者が会場に来ている著名人まで巻き込んでいくのは新しいバーチャル的な発想だ・・・」

「アープル様、とりあえずバーチャルって言っとけばいいと思ってません?」

俺は思わずアープル様に率直な感想を述べた。

「ははは!まあ、そんな小さなことこの電脳世界に比べたらちっぽけな話だ」

なんとなく知っている言葉で誤魔化された気がしなくもないけど。

俺はそこまで気にすることもなく、とりあえず納得することにした。

「あ・・・そういえば」

と、その時、ふと思い出したことがあったのでアープル様に聞くことにした。

「アープル様、この前の勝負なんですけど・・・もしかしてああなることをわかっていてやったんですか?」

「ん?なんのことだ?」

「いや、1200人ぴったりの人数を集めて最後同点だなんて・・・アープル様が嘘をつく人だとは思えませから、あの数字を偽装したなんてことは絶対ないですし、元々わかっていたんじゃないかなって・・・」

その言葉に反応するかのようにアープル様はニヤッと笑い言う。

「ふふっ・・・知りたいか?」

俺はフッと笑い返す。

「いえ、心の中でとどめておきます、なんとなく・・・そう思っただけなんで」

「ははは、賢明だ」

アープル様はやはり、あの勝負引き分けになることが分かっていて蠱毒と称して戦いをさせたのだろうか、だが、俺がそこまで考えることでもないか。

「勝負と言えば!」

「どうした、急に」

キャットちゃんが突然手を合わせてニコニコと話しかけてきた。

「私、今度インペリアルレコード主催のVirtualChampionLivesの審査員させていただくことになったんですよ!」

「なん・・・だと!?」

多くの著名人が肩を並べてこのイベントの審査員をやると言っていたが、よもや完全人工AIに審査をゆだねる日が来ようとは・・・!」

「進化したな・・・世の中」

俺はしみじみ思うのだった・・・。

「ほう、キャット様が審査するだなんて・・・いい世の中になったものだ」

「人間の皆様のようなしっかりとした審査ができるかわかりませんが・・・私ガンバらさせていただきます!」

「チュウ・・・」

アープル様が突然変な鳴き声を言いだす。

眼を見開いて頬を染めている・・・これは惚れてますわ。

まあでも、人工AIがここまで健気だと確かに惚れてしまうよね。

仕方がないね。

「ジンさんは出場するんですか?それとも審査ですか?」

「えっ?」

と、突然またキャットちゃんが俺に会話をふってくる。

これはAI特有の悪気のないただ純粋な興味を抱いた言葉・・・。

だが、俺は思わず言葉が詰まってしまった・・・。

「えっと・・その・・・」

「?」

きょとんとしているキャットちゃんに俺はただただ焦る。

アープル様もじっと見守る中、俺は息をのみ答える。

「実は・・・俺はインペリアルレコードにやとわれていて・・・自分の事情によって参加することができないんです」

「えっ?」

思わず開いた口を手でふさぐキャットちゃん。

色々な事情が重なってしまい、俺はどうやっても参加することができなかった。

審査員としても、参加者としても。

今の俺は企業にとらわれている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ