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電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
第二章【狂奏のピアニスト】
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第18話【真白に勝ってほしい】

いよいよ大詰めを迎えた第三ラウンド。

この戦いで真白と翠歌の運命が決まる。

俺自身、正直真白に勝ってほしい気持ちはある。

だが、翠歌にも負けてほしくない気持ちもある。

片方しか選べないのなら、俺はどちらを選べばいい。

心の中で天秤が揺れ動く中、アープル様はまた大きな声で会場に宣言する。

「勝負は第三ラウンド・・・第三ラウンドは【三曲自由奏】だ!」

三曲自由奏・・・?

聞きなれない単語だ・・・造語だろうか。

続けてアープル様が解説を行う。

「これより二人には三分間によるシンキングタイムを行う、どんな曲をどのタイミングで変えてどんなふうに演奏するのか、すべて貴様らにゆだねる、メドレーの尺は各々自由にしろ」

つまり三曲を選んでそのままメドレーにしてしまうということか。

これは選んだ曲次第でどうなるか分からないな。

真白も翠歌もここまで見て来た戦いでどちらも選曲にも曲への表現力も互角。

それ以上を決めるのはセンスのみ。

「では、三分の後に試合を開始する、それまでしばしお待ちを」

会場はざわざわと話が聞こえている。

このクールタイム中で感想などを言っているようだ。

あるいはこれから始まる最後の戦いについて話しているのか。

最も俺はそれどころではないが。

「気になるなら話して来たらどうだ」

「ジンッ!?」

俺の背後から声をかけてきたジンが悩みを背負っていた背中を押すように言ってきた。

「お前が本当に必要としている方に言ってきたらどうだ、お前の気持ち、お前の求めるモノを・・・」

「・・・」

「言わなきゃ、何も伝わないぜ」

「そうだな・・・」

ジンの言葉に答える如く、俺は一歩一歩話すべき人物に近づいた。

俺はその者に声をかける。

「翠歌、今いいか」

「人助・・・?」

次の試合の為に曲のことで考えてそうだった翠歌に声をかけた。

彼女はこちらに気づいた時、少しだけ不思議そうに見ていた。

俺はそんな彼女に言葉をかける。

「俺は・・・真白に勝ってほしい」

「人助ッ!?」

その言葉に当然に驚く翠歌。

俺はそのまま会話をつづけた。

「この試合で気づいたことがある、それはまだ言えないけど、俺は真白のピアノが・・・キーボードじゃないとやっぱり嫌だ」

「・・・それだけ?」

俺は翠歌に真剣な眼差しを向けられ、鋭い言葉を突き刺された時。

俺はそれに答える様に言った。

「真白は・・・誰かの為にこんなに努力できる・・・アイツはずっと誰かの為に尽くしている・・・お嬢様なのに、そういうプライドがない・・・だから変わってるけど、そこがアイツの良いところなんだよッ!」

「・・・人助」

「だったら・・・俺が・・・俺達が尽くしてやろうぜッ!この戦いに全力で答える!アイツに勝ってほしい!勝って・・・真白の音は・・・必要なんだってッ・・・証明する!」

俺の気持ちを叫び、翠歌はクスッと笑った。

「じゃあ・・・私は負けてもいいんだね?」

「それは・・・」

少し動揺してしまった俺に翠歌はクスクスと笑い笑顔で答えた。

「なーんてね!」

「翠歌・・・」

「私もそう、真白ちゃんの音が好き、だから私が彼女の全力を引き出す、勝ってほしいから、手加減はしない、できることなら・・・全力でやって、全力で負けたい、ここで負けるくらいなら・・・真白ちゃんは君の傍にはいてほしくない」

本気の眼をしていた。

それは、怒りでもなんでもない、友を思う気持ちの熱い眼をしていた。

翠歌の言葉も気持ちも、全部熱い魂が込められていた。

俺はその言葉にこう言った。

「・・・勝つつもりで行けよ」

その言葉に翠歌はニコッと笑い言った。

「もちろん、全力さ」

互いに気持ちを確認しあって俺はその場から立ち去り。

元の場所へと離れていくのだった。

次が最後のお題、俺の気持ちは決まった。

真白に勝ってほしい!


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