第4話【天へ行った君の思い】
「先輩、一つ聞いてもいいですか」
「なんだ、真白」
真白がこちらをみてなに聞きたそうに話しかける。
「先輩はどうして音楽に返って来たんですか、あの日」
「ああ、それか」
そういえば語っていなかったな、見ている人にも。
俺は静かに語り始めることにした。
「お前も知っている通り中学、高校時代に俺達はネット配信が黄金期に突入していた時代に立ち上げた伝説のバンド【ファイブライブズ】のことは覚えているよな」
「はい!私を含めて5人、【ギターのMIDORI】【キーボードのBlanc】【ベースのZIN】【ドラムのHYO】」
「表向きは4人だがそこに作曲・作詞の俺を含めたことで5人としている」
中学時代に築き上げたこの5人のメンバー、あの頃はいくら黄金期でもチャンネル登録者120万という規模は俺たちにとってとても巨大すぎた。
卒業後は一人が海外へ留学、世界への舞台を手に入れた。
彼女は離れ離れになることを嫌っていたが、俺が後押しする形でなんとか世界へ行かせたかった。
と、一人で考え事をしていると真白が口を開く。
「あるいは、【ボーカルのMOMO】を含めて5人という見方もしている人がいますよね」
「え?ああ、そういう・・・」
中学でMIDORIとは離れてしまい、高校になって変わるように入って来たのが当時歌姫の皇帝とされているほど天才的歌唱力だった。
ギターも演奏できたがどちらがメインかは一目瞭然だったな。
「みんないいやつだった、才能もあった、あいつらなら世界へ通じるとおもった」
冷たい息を吐くように語る俺につられて寂しそうに真白は言った。
「・・・そうですね、みんな結局離れ離れになっちゃっいましたもんね」
高校のあることをきっかけについにバンドは解散、ついでに俺の音楽人生で3人も死者が出てしまった、俺はこんな呪われた人生が嫌になり。
これは神からお前は音楽にかかわるなという忠告だと受け取った。
「俺自身、なんで音楽が好きなのかたまにわからないことがある、俺自身歌は上手くないし、音もそれほどいいものを作れるわけじゃない、ただ歌詞はみんな褒めてくれる」
「だから、俺の作った曲と歌詞で全員の望みを叶えてやれるなら、叶えてやりたかった」
他者の願いを叶えてやれるなら俺は喜んで力を貸す。
そう、アイツは子供のころの夢だと語っていた。
MIDORIは・・・翠歌は世界へ行きたいと言っていた。
生まれた時から家が隣、そして幼稚園もおなじ、幼馴染だった。
楽器の天使と言われている彼女に弾けない楽器は存在しなかった。
歌も上手く、小学校の頃は音楽室のピアノを聞かせてもらってた。
だからそこに俺は彼女に作った音楽を提供していた。
そして彼女は俺に「世界に自分の歌を通用できるかどうか確かめたいと」言った。
だから、俺は色んな方法で彼女を有名にする努力をした。
頑張った末に、ついに世界へあと一歩のところまで来た。
その送り出した先が地獄とも知らずにな。
そうやって何度も俺はこの音楽業界に首を突っ込んで来ては悲惨な呪いと戦い続けて来た。
一つは全員の望みを叶えてやりたかった。
「一度は逃げた、もう2度とこんな場所に来たくはないと、だが、時代は巡り人の声を再現させる機械が現れた時、俺は考えた」
「アイツの歌を世界に連れていくと!」
そう、誰かが発した声を機械がそれを基に作る。
そういう時代に生まれたことを奇跡と思ったよ。
「それで先輩はこんな大がかりなことを・・・」
「見た目をこうしたかったのは世界に渡った彼女の力を少し借りたかったのと、どうせなら先人に習って見た目もってな」
多少似てしまったことについては反省はする。
これから批判も相次ぐだろう。
だが、もはやそんなにおびえている暇なはい。
俺はどんなことが起きようとも前に進まなくてはならない。
「真白、俺は戻るぞ」
俺は一歩一歩、歩きふと止まって真白に言った。
「音楽の世界に!」
と、思いっきり振り向いたその時。
ガタッ!
「・・・ッ!」
親指をぶつけてしまった音がした・・・。
「ここが部屋だというのを忘れていた・・・!」
「先輩!大丈夫ですか!」
ゴーグルを外して近寄って俺の安全を確認する真白。
この先が不安で仕方がない。