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電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
第二章【狂奏のピアニスト】
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第17話【真白vs翠歌その2】

演奏が終わりアンケート票を入れ、結果を待つ会場。

ただ、おおよその予測はわかっていた。

「337対863で翠歌の勝利ッッ!」

結果が出れば一目瞭然、完全に翠歌の才能にやられてしまった。

元々この手のクラシック曲は翠歌も得意分野に入る。

真白の実力が低かったんじゃない、高い実力をさらに上回ったんだ。

あまりにも高度すぎる戦いだ。

「・・・ッ!壁が・・・遠い・・・ッ!」

真白も、歯を食いしばり、両手を握りしめ、ただ負けたくやしさに打ちひしがれている。

翠歌の表情は変わらず、ただ真剣な目をしている。

まるで、命令を実行する機械の様な冷たさ。

今のアイツは全力で潰しにかかるマシーンだ。

「おっと、この勝負はまだ終わったわけじゃないぞ?」

アープル様がマイクを持って優雅にこちらへクルリと向いて言葉放つ。

「えっ?」

その言葉に俺や周りの連中が唖然としていた。

「これは一回戦、勝負は全三回だ、先に二回勝った方を勝者とする」

なるほど、つまり今のは三回目の一回目を落としたということか。

「なんとなくさっきそんな気もしたけど、最初に言ってほしかったのだ・・・」

気が抜けて思わずアラ〇さんみたいな口調で言ってしまう俺。

「ははは、すまんすまん」

にっこり笑いこの場を和ませるかのような笑いをするアープル様。

だが、真白の心は今はもうそんな余裕はないだろう。

落とせない勝負になってしまったからだ。

翠歌はもう次の一勝ですべてを決めてしまう。

次のお題次第ですべてが決まってしまうが果たして・・・。

「さて、次のお題だが・・・【アープルセレクト】だ!」

『アープルセレクトッ!?』

もう、なんかよめないお題だが・・・。

「要するに我が選ぶ曲を弾いてもらえればそれでよし、2人には違う曲を弾いてもらうが、どちらもネットではそれなりに名の知れた・・・いや、知っている人は知っている曲を弾いてもらうぞ」

アープル様が自ら選ぶ曲を2人に弾いてもらってそれを採点するのか。

これは選んだ曲次第でかなり評価が分かれるのでは・・・?

「ジン、これって不利有利ありそうじゃない?」

俺は率直な不安をジンに言ったがジンはフッと笑い返す。

「どんな名曲を選ばれようとも演奏者が良し悪しを決定づける、名曲を選曲されようとも、奏者が表現できなければ意味がないのさ」

「なるほど・・・」

ごもっともな意見だ。

確かに、さっきの月光で痛いほどわかった。

第一楽章がメジャーだとわかっていたが、その名以上に翠歌の表現力は強かった。

だとすると、今回も真白と翠歌の曲がバラバラでも。

2人の力量次第でどんな曲も勝機はある・・・。

「では、先ほどは先行真白だったので、今回は翠歌が先行だ、弾いてもらう曲は【千本桜】」

「・・・なるほど」

ボカ〇なんかが大流行した時に流行った超有名曲。

あれをピアノの音源だけで表現するのには中々技量が求められるが・・・。

「・・・いきます」

ダダッダ、ダダッダ、ダンダン・・・ッ。

響き渡る激しく鳴り渡る音色。

耳に入った瞬間見ていた世界がまた変わった。

音は強く、それでいて本家さながらの滑らかなスピード感。

桜だ、そこに桜が咲き誇り、大きな木の下で演奏している人が見えるよう。

暖かい、太陽の光に包み込まれ、舞う桜が聞いている者達を魅了する。

鍵盤は翠歌の奏でる世界にただついていく。

どれだけ激しく叩かれようと、追いつけないほどに指を走らせても。

彼女は今、完全に人の心にあの名曲を心に映している。

「・・・っ」

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

最後の音が鳴り終わると会場はさっきと同じく大きな拍手に包まれる。

俺は心の中に不安があった。

あれだけ真白のキーボードを必要としていた自分が。

この演奏によってどんどん心変わりしているのではないだろうか。

真白の演奏を不必要だとは思っていない。

だけど、これで証明できなかったら・・・真白は。

「大丈夫だ、人助」

その時、ジンの声が聞こえた。

俺の不安が分かっていたかのように、彼は安心させるかのようにニヤッと笑っていた。

「お前、どっちが好きなんだ」

「うぇッ!?」

「どっちが好きなんだ、お前のキーボードはよ」

「・・・それは、真白だ」

「それはなんでだ?」

ジンの質問に対して俺は少し間があったが真白と答えた理由。

それは・・・。

「アイツの演奏は・・・ピアノが一番喜んでいるんだ」

「・・・ピアノが?」

「キーボードもピアノもアイツが演奏している時が一番楽しそうにしている、俺はアイツらにつられて音楽に入ってきたからさ、なにも詳しいことはしらねぇけど、なんとなくそんな気がする、真白の奏でるピアノは・・・心から気持ちが良いんだ」

俺のその答えにジンはただ告げた。

「だったら信じろ、そのピアノを喜ばせる真白の演奏を、お前がアイツを必要とするなら、全部見てやるんだ、信じてやるんだ、お前には必要なんだろ?」

「・・・ああ」

そうだ、俺が自ら真白の力を必要としている。

ここで、俺が信じなくては、何も始まらない。

真白はこの勝負、勝てる、信じるんだ。

真白のきっと心臓はバクバク言っているんだろう。

緊張で手が震えているかもしれない、汗が止まらないかもしれない。

それでも、勝ってほしい、俺はお前のキーボードじゃなきゃダメなんだ。

「では、次は真白、お題は【ネイティブフェイス】」

「東方ッ!?」

その言葉に真白はびっくりしていた。

大分コンテンツの選曲に差があるが、難易度はおそらく高い、高すぎる。

「(あれの良さをピアノで伝えるには・・・知らない人にも知っている人にも全力で表現するしかない・・・ッ!)」

真白は内心驚きのあまりなにも言葉が思いつかないのか。

無言で両手を鍵盤に置き、静かに演奏を始めた。

タン・・・タタン・・・タタ・・・タタタタン・・・。

始まりは優しく、まるで夏の風が少しずつ背中に涼しさと暑さを伝えるかの様。

なんだろう、この弾きかた・・・とてもあの曲とは思えないほど優し気な・・・。

テン!テン!!テンン!!テン!!

だが、一瞬にしてそれは変わった。

一気に川を激流にへと走らせ、周りをざわめく森の葉の演奏。

足に伝わるは自然の冷たくどこまでも流していくかのような激しい流れ。

風は激しく、人に神の領域だと伝えるほど力強い音色。

神風、どこからともなく吹いて人に伝える神秘的で心に伝える神々しい力。

サビだ、どこをいつ聞いてもサビしかないいつまでも祭りをしているかのような音。

ピアノの音色と完全にユニゾンさせる真白の鍵盤使い。

幻想的だった、芸術だとか、美しいだけで片付けるにはあまりにも惜しい音色。

真白は完全に自分が想像する世界に入り込んでいた。

終わりに向かい、ゆっくりと風を止ませる姿は。

自然を操る、神のようだった。

真白はその場を立ち上がり、ゆっくりと会場のみんなへお辞儀をした。

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

その拍手の数はさっきの翠歌の時よりも強く、一瞬にして真白は取り返した。

「・・・真白、すげぇよ」

俺も思わずその場で一緒に拍手をしてしまうほどの完成度。

二曲とも間違いなく名曲だった、2人とも間違いなく強者だった。

「さあ、二人の演奏を聴いた諸君、投票タイームだ!」

アープル様が高らかにマイクを持ち会場の人達にパネルを表示させる。

投票は終わってみればこれもまた一目瞭然・・・ッ!

「963対237で真白の勝利ッ!」

これは誰の眼から見ても疑いようのない実力。

始まりから終わりまで忠実に再現した翠歌。

独自のアレンジをしつつ、原曲の良さをしっかり引き出した真白。

2人の戦いの中で確実に何かが起きようとしている・・・!


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